自らが先頭に立つ「率先垂範」のまちづくり~畠山稔・埼玉県上尾市長インタビュー(4)~

埼玉県上尾市長・畠山稔
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事・小田理恵子

 

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市のキャラクターを通じて市民と交流

小田 市長の率先垂範の姿勢は、市民との交流の場面でも見られるそうですね。

畠山市長 上尾市の公式キャラクター「アッピー」の被り物を着用して、市のイベントに参加することもあります。アッピーは市のシンボル的な存在で、イベントに登場すると子どもから大人まで、自然と笑顔が生まれるのです。

私自身がアッピーの被り物を着けることで、市民の皆さんとの距離がぐっと縮まり、より多くの声を聴くことができています。

アッピーに扮してイベントに参加する畠山市長(出典:上尾市)

 

小田 市長自らが被り物をして現れるとなると、市民の皆さんの上尾市への愛着形成につながるでしょうね。

畠山市長 アッピーには家族がいる、という設定も市民の皆さんの親しみやすさにつながっていると思います。

実は11年3月の東日本大震災の際、上尾市から福島県本宮市に緊急消防援助隊を派遣したことをきっかけに、同年11月には災害時相互応援協定を締結し、13年7月には本宮市と友好都市協定を結ぶまでになりました。翌年11月のあげお産業祭では、アッピーと本宮市のキャラクター「まゆみちゃん」が結婚式を挙げました。

自治体キャラクター同士の結婚は全国初の試みでした。さらに翌年には子ども「あゆみ」も誕生しています。この10年間、市民駅伝や物産販売、スポーツ交流など、さまざまな形で交流を続け、24年11月には結婚10周年を迎えました。

このような取り組みが、市民の皆さんの上尾市への愛着を深めるきっかけにもなっています。

 

小田 アッピーのストーリーには畠山市長の優しさが滲み出ていますね。

畠山市長 私自身、アッピーの被り物を着ける際は、市民の喜びを第一に考えています。市のイベントで、子どもたちとアッピー音頭を一緒に踊り、その姿を見て喜んでくださる市民の方々の笑顔を見ていると、私の政治理念である「天無私」の重要性を実感します。

このように市民の皆さんと直接触れ合い、生の声を聴く機会を大切にしながら、笑顔があふれるまちづくりを進めていきたいと考えています。

 

上尾市の強みを生かして

小田 最後に、上尾市の魅力についてお話しください。

畠山市長 上尾市は、「住みやすさ」を追求したまちづくりを進めています。魅力は安全・安心な住環境です。大宮台地に位置し地盤が強く、災害に強いという特長があります。

さらに、さいたま市に隣接し、東京駅や新宿駅へ電車1本約40分でアクセスできる利便性を備えながら、首都圏の中では地価が比較的手頃であることから、ゆとりある居住空間で質の高い暮らしを実現できるまちとして注目されています。

 

小田 地盤の強さ、都心へのアクセスの良さ、比較的安価な地価は大きな魅力です。

畠山市長 日常生活の利便性も本市の大きな強みです。上尾駅周辺には百貨店や大型スーパーが立ち並び、市内の東西には大型商業施設も充実しています。買い物や娯楽施設へのアクセスも容易で、都心に行かなくても充実した生活を送れる環境が整っています。

 

小田 それは子育て世代にとって非常に暮らしやすい環境です。子育て支援施策と相まって支持を得るでしょうね。

畠山市長 おっしゃる通り、「安全・安心」「利便性」「経済性」という三つの要素が調和したまちの環境は、特に子育て世代から高い評価を頂いています。

であれば、子育て家庭の生活をサポートする新しい取り組みを積極的に展開することは理にかなっています。

先ほどご紹介した保育所でのおむつサブスクリプションサービスや英語教育の導入などに加え、市内各所に公園や子育て支援施設を整備し、ハード面の拡充にも力を入れています。そうした施策の積み重ねが、若い世代の皆さんに選んでいただける理由につながっていると思います。今後もこうした支援策をさらに充実させ、子育てしやすい環境づくりを推進していこうと考えています。

 

小田 市長のお言葉から、上尾市がどんどん暮らしやすいまちになる様子が目に浮かびます。市民の皆さんには、どんな思いで生活していただきたいですか?

畠山市長 市民の皆さんが「上尾に住んでよかった」と心から実感できる、そして市外の方々からも「上尾に住みたい」と思っていただける、そんな魅力的なまちを目指していきたいと思っています。上尾市の強みは、都心への近接性と快適な住環境が両立していることです。この強みに磨きを掛けるような施策を展開していきます。

 

【編集後記】

畠山市長の市政運営において印象的だったのは、「天無私」と「率先垂範」という二つの理念を具体的な行動で示す姿勢です。市長室から飛び出し、のぼりを担いで通勤し、被り物を着けてイベントに参加するなど、市民との距離を縮める工夫を重ねています。

また、組織づくりのアプローチも柔軟です。前例主義からの脱却を掲げ、職員の自発的な取り組みを促す仕組みを整えています。地方自治体を取り巻く環境が厳しさを増す中、この「現場重視の姿勢」と「それを支える組織づくり」の両輪で進める畠山市長の市政運営は、これからの自治体経営の在り方を示しているのではないでしょうか。

 

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2024年3月3日号

 


【プロフィール】

畠山 稔(はたけやま・みのる)

1949年岩手県陸前高田市生まれ。千葉工業大金属工学科卒業後、73年から東洋伸銅所(当時)に入社。
その後、上尾市議会議員(3期11年)、埼玉県議会議員(3期11年)を務め、2017年12月に上尾市長に初当選。現在は2期目。

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