若者と政治をつなぎたい(前編)

若者と政治をつなぎたい
全世代の声が届く、まっとうな政治を目指して

西東京市議会議員
田村 ひろゆき

2020/11/17 若者と政治をつなぎたい(前編)
2020/11/19 若者と政治をつなぎたい(後編)


若者の政治離れや低い投票率。これは若者自身の意識が足りないのでしょうか。それとも、単純に若者が政治に目を向けるきっかけがなかっただけなのでしょうか──。若者と政治の距離を縮めようと、20年以上活動を続けている地方議員がいます。東京都西東京市の田村ひろゆき議員(42)。議員インターンシップ(政治家体験プログラム)を提供するNPO法人I-CAS(アイカス)の創始者です。1999年の立ち上げ以来、「若者と政治をつなぐ」活動を20年以上続けてきました。

今回はインタビュー形式にて、コロナ禍を経て若者の政治に対する意識は変わったのか、若者と政治の距離を縮めるために具体的に何をするべきかなど、「若者と政治」をテーマに、田村議員にお話を伺いたいと思います。

議員インターンシップに携わった20年

I-CAS立ち上げの経緯についてお聞かせください。

中高時代から政治に興味があり、大学入学後、選挙支援の団体に参加しました。若い世代が良い候補者を選び、選挙を支援することで、良い議員を生み出そうという団体でした。そこで議員の元にスタッフを送り込む、インターンシップ事業を任されたんです。私自身、高校時代に市議会議員の元で1カ月お手伝いした経験もあり、議員インターンシップの面白さや意義をよく分かっていましたので、議員と学生の仲介役は、とてもやりがいがありました。ただその後、団体の方針転換で、インターンシップ事業の休止が決まり、私は「こんなにニーズと意義がある活動を休止するのはもったいない」と感じて、団体から分派するような形でI-CASを立ち上げました。「自分がやるしかない」という使命感みたいなものがありましたね。

当時の議員インターンシップ事業というのはどういう活動だったのですか。

議員の仕事や政治の世界と、私たちの生活とが密接に関わっていることを学生に伝えたかったため、国会議員ではなく、より身近な地方議員の元に、大学生を送り出す活動でした。期間は春と夏の長期休みの2カ月くらい。インターンシップの中身はそれぞれですが、議会や委員会の傍聴、学生の希望や能力によっては政策作り、質問や提言をまとめることもありました。事務的な入力作業や、市政報告会の受け付けなども含めて、幅広い内容の仕事をしてもらいました。

I-CAS設立20周年記念パーティーにて

I-CAS設立20周年記念パーティーにて(左下が田村議員)

 

I-CAS設立から20年以上経ちましたが、その間、活動内容に変化はあったのでしょうか。

大きな変化があったのは2015年。公職選挙法が改正され、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられました。高校生が投票できるようになったことで、高校生に向けた政治や選挙に関する教育についても、かなりクローズアップされました。

この頃からI-CASでも、高校生のための3日間プログラムをスタート。3日は短いですが、何かのきっかけづくりになればと。3日間を経て、もっと活動を続けたいと思った高校生は、その後も事務所の仕事を手伝ったり、議員主催のイベントに参加したりしているようです。3日間の経験は、高校生にとってはとても大きいことで、将来の方向性に影響する場合もあるので、責任は大きいと感じています。

今では、I-CASが仲介しているインターンシップの参加者は、そのほとんどが高校生です。実は調査をすると、10代の投票率は、20代よりも高いのです。18歳になったら投票できるというインパクトも強く、選挙というものが高校生にとって目新しい存在なのだと思います。

20年以上にわたり、数多くの高校生や大学生と接してこられて、若者の政治への意識や政治との距離については、変化を感じられましたか。

今の高校生と話すと、自分の意見や考えをしっかり持っている生徒が増えているように感じます。インターネットで日本全国、そして全世界の情報が取れる時代になり、自分で行動する、団体をつくるといった活動を、高校時代から自然に始めていますね。学校を飛び越え、都道府県を超えて全国的につながることが簡単にできる時代になり、社会的な活動に目を向ける高校生が増えてきている感覚はあります。

分かりにくい情報を分かりやすく伝えたい

若者と政治をつなぐだけではなく、ご自身が議員になろうと思われたきっかけは何ですか。

私自身が議員になることは、被選挙権を得た25歳になったときにも、あまり考えておらず、若者と政治を「つなぐ」ことに役割を感じていました。ただ、I-CASの活動でたくさんの議員さんと話すうちに、政治家として中に入って、政治の中から発信するのもよいかもしれない。中に入ると見えてくる「つなぎ方」もあるかもしれないと、徐々に思うようになりました。36歳で初めて立候補し、40歳のときに初当選を果たしました。

実際に政治の中に入って、いかがでしたか。

行政からの情報がきちんと市民に届いていないということと、行政の情報には間違ったことや嘘はないけれど、良いところだけを伝える側面があるということが分かりました。例えば、西東京市の場合には、庁舎統合が大きな課題です。田無市と保谷市が合併してから20年が経ちますが、庁舎がいまだに二つあります。統合費用の詳細を調べましたが、行政の文書を読むだけでは分からないことがたくさんありました。議員の立場でしっかり文書をチェックして、市民にオープンにしていく。議員がその姿勢を示すことで、行政にプレッシャーをかけることも必要だと考えています。

市民に市政情報をきちんと届けることに重点を置いて、活動されているのですね。

「市政報告かわら版」という、議会ごとに年間4回のリポートを発行していますが、できるだけ分かりやすく情報を伝えたいと考えています。議員のリポートというのは、政治や行政の専門用語が使われ、難しい内容になりがちです。これを、政治や行政に関心のない人、予備知識のない人が読んでも分かるよう、簡単な言葉を使って伝える必要があります。SNS(インターネット交流サイト)での発信も同様です。なるべく身近な存在、身近な世界として、議員や市政の世界を知ってもらえたら、と思っています。

7月のリポートでは新しい学校生活の形について、10月のリポートでは1人1台のタブレットを配付するGIGAスクール構想について取り上げたのですが、子どもたちにも読んでもらえるよう、漢字に振り仮名を付けたり、難しい言葉には解説を付けたりしました。学校のことは、大人が決めて動かしていますが、当事者はやっぱり子どもじゃないですか。このリポートを駅頭で配っているのですが、たまに中学生・高校生が受け取ってくれると嬉しくなります。

こどもかわらばん

2020年10月号「市政報告かわら版」の子ども向け記事

 

その他、若い世代に伝えるために、SNS(ツイッター・インスタグラム・フェイスブック)でも発信していますが、なかなか議会の情報は読んでもらえません。それよりむしろ「新しいラーメン屋さんができて、美味しかったです!」みたいな親しみやすい情報の方が、反応が多いです(笑)。身近な話題をきっかけに、議員や政治との接点を感じてもらえたらと思っています。

「後編」へつづく


【プロフィール】
田村議員プロフィール写真田村 ひろゆき
西東京市議会議員

1978年西東京市生まれ。中央大学法学部政治学科卒。大学在学中に議員インターンシップを運営するI-CAS設立。元衆議院議員秘書、武蔵野大学職員、旅行会社社員。2018年12月の西東京市議会議員選挙で初当選。無所属1期目。
政治をわかりやすく!徹底した情報公開をモットーにレポート発行、SNSでの発信などを行う。
47都道府県を制覇した乗り鉄派。海外は20か国以上。コロナ禍の下では遠出を自粛し、地元食べ歩き情報を発信。

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