全国初「移動式脳ドックサービス」の実証実験 ~水谷俊郎・三重県東員町長インタビュー(1)~

三重県東員町長 水谷俊郎
(聞き手)Public dots & Company 代表取締役 小田理恵子

 

2022/1/31 全国初「移動式脳ドックサービス」の実証実験 ~水谷俊郎・三重県東員町長インタビュー(1)~
2022/2/3 全国初「移動式脳ドックサービス」の実証実験 ~水谷俊郎・三重県東員町長インタビュー(2)~
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2022/2/10 50年後を見据え、挑戦繰り返す〜水谷俊郎・三重県東員町長インタビュー(4)〜

 


 

三重県の北部に位置する人口約2万6000人の東員町。鈴鹿山脈を望む自然豊かな土地でありながら、名古屋市から30km圏内にあり、利便性にも恵まれています。

同町は現在「おみごと!があふれる町へ」をスローガンに、「健康」「家族」「つながり」「学ぶ」「働く」「暮らしやすさ」という六つの側面から、住民の暮らしの質を高めるさまざまな取り組みを進めています。

このうち「健康」に関する取り組みの一環として、今年6〜7月にある実証実験が行われました。磁気共鳴画像装置(MRI)を搭載した車両を用いた、出張型の脳ドックを提供するサービスです。

この実証実験は全国初の試みで、民間企業2社と連携して実現したものでした。インターネット上で利用予約を受け付けるなど、昨今の自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れも包含した取り組みでしたが、官民連携における庁内調整は驚くほどスムーズだったと聞きます。

 

そこで今回は東員町の水谷俊郎町長に、「MRI搭載車両を使用した移動式脳ドックサービス」(以下、スマート脳ドック)の実証実験を行うに至った背景や、庁内での事前準備の様子を詳しく伺いました。

民間企業との速やかな連携を実現するための意思決定プロセスは、他自治体の参考となるでしょう。(聞き手=Public dots & Company 代表取締役/一般社団法人官民共創未来コンソーシアム 代表理事・小田理恵子)

 

町長、職員とも柔軟に対応

小田 東員町は今夏、民間企業2社(出光興産株式会社、スマートスキャン株式会社)と協働で、スマート脳ドックの実証実験を行いました。比較的新しい民間企業のサービスを受け入れ、実証実験にまで至ったのは、町にとって何らかのメリットをお感じになったからだと思います。その辺りのお考えを伺えますか?

水谷町長 東員町は今年4月に「第6次東員町総合計画」を策定し、町内すべての取り組みの最上位計画と位置付けました。
その重点施策の一つに「健康で暮らせるまち」があります。町内の誰もが健康に暮らせるように、予防医療の観点も含めて健康づくりを推進しています。

今回のスマート脳ドックのお話を頂いたときは、町の大方針に沿ったものだと思いました。ですから、お引き受けしたという経緯があります。

 

小田 スマート脳ドックの車両を私も目にしたのですが、かなり大きな車だったと記憶しています(写真1)

 

写真1 東員町総合文化センターの駐車場に置かれ
たスマート脳ドックの車両(出典:東員町Webサイト)

 

会場には受け付け用のテントや待合室も設置され、大掛かりな取り組みでしたね。新型コロナウイルス禍の中で、この実証実験に取り組むのは大胆なチャレンジだったと思うのですが、職員の皆さんは最初にこの話を耳にした際、どんな反応をされたのでしょうか?

水谷町長 私が単独で引き受けたような話でしたので、反対意見が上がるかと思いきや、意外にも職員の中に抵抗感はありませんでした。「大丈夫です、やりましょう」と、すぐに受け入れてもらえました。

 

小田 水谷町長が「職員に反対されるかもしれない」と懸念したのは、どのような点だったのですか?

水谷町長 主にルールの面ですね。今回の実証実験は「東員町総合文化センター」の駐車場で行いました。つまり町が管理する施設です。町が管理する施設は利用について制約があるケースもありますから、職員から「ルール上できない」と言われるかもしれないとは思っていました。しかし、特に制約はなかったようです。

 

小田 今のお話からは、水谷町長も職員の方も、民間企業との連携に慣れていらっしゃるように感じます。

官民連携で地域課題を解決したいという自治体はここ1〜2年でとても増えてきましたが、東員町のようにテンポよく話が進むのはまれです。水谷町長は、どのくらい前から民間企業と協働する構想をお持ちだったのでしょうか?

水谷町長 町長に就任した約10年前から、官民連携のイメージは持っていました。私は民間企業に在籍していたことがありますから、民間のスピード感や実行力は理解しています。ですから、それを行政にも取り入れることができたらと常々思っていました。

あくまで私の感覚ですが、10年前と今を比べると、職員の考え方はかなり柔軟になってきています。東員町はこれまで他の民間企業との連携も経験がありますから、職員はその分、対応に慣れているのだと思います。

 

小田 水谷町長のお考えが、職員の方にもきちんと共有されているということですね。

水谷町長 もしかしたら私に振り回されないように先手を打っているのかもしれませんが、そのように捉えておきましょう。

行政と企業は「パートナー」

小田 スマート脳ドックの実証実験を行うに当たり、事前の準備や調整で大変だったことはありますか?

水谷町長 特に大変なことはありませんでした。

出光興産からは、保健所と病院に協力を依頼してほしいというリクエストを受けましたから、それぞれの所長や理事長に私から説明したくらいです。実証実験を行う場所は職員が指定してくれましたし、準備自体も特に苦労していなかったように思います。

 

小田 今のお話には、驚かれる読者の方も多いと思います。官民連携で企業側からよく聞かれるのが、「自治体側に各種調整を行う担当者がいない」「許認可を取るのに時間がかかる」といった悩みです。

東員町は町長ご自身がさらりと調整を行い、職員の方もスピーディーに動かれています。恐らく同じ実証実験を行うにしても、自治体側が持つ熱意によって、かなり結果に差が出てくるのでしょうね。

水谷町長 今、民間企業の多くは「社会貢献」を一つの大きな軸にしながら、事業に取り組まれています。
われわれ行政は企業が利益を生めるよう、下支えする必要があると思っています。

それと同時に、やはり地域も良くなっていくことが大事です。ですから企業と行政は全く異なる者同士ではなく、これからは共に地域づくりに取り組んでいくパートナーです。そう考えると、行政は企業との協業体制を整えていく必要がありますね。

 

第2回に続く

 


【プロフィール】

水谷 俊郎(みずたに・としお)
三重県東員町長

1951年生まれ。東京工業大工学部を卒業後、三重県庁、大成建設株式会社での勤務を経て、91年4月に三重県議会議員に初当選。3期の間に県監査委員、県議会行政改革調査特別委員長、同PFI研究会座長などを歴任。2011年4月に東員町長に就任し、現在に至る。

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