えっ?行政が子供たちだけのために計画の説明会を開いんたんですか?

 

そうそう。その点は、相模原市は偉かったと思います。小学生向けの資料もちゃんと作ってくれましたし。40人くらいかな、集まって。

 

その説明会を私は動画配信で見ていましたが、とても印象的で、子どもたちから相模原市がダメ出しされちゃうんですよ。説明資料の事例に横浜の山下公園が使われていてその資料を見て、子どたちが「鹿沼公園とは違うじゃん。こんな風になるわけないじゃーん」って言って、職員が困っちゃう、みたいな。この時は、職員の率直で素直な反応が何度か垣間みえて微笑ましくもありました。

 

意地悪な言い方をすれば、子供でも分かるような、ちょっとおかしな計画だったということなんだと思います。行政にとっても、子供だけを対象に説明会を開くってすごくいい経験になったんじゃないでしょうか。

 

こうした市民向けの説明会を開催したのが20181月。確か201712月に渋谷からコミュニケーション・デザインの専門家を呼んで、ワークショップを開催していましたよね?

 

はい、渋谷から野村恭彦さん(当時:フューチャーセッションズ代表取締役社長)をお呼びして、鹿沼公園を考えるワークショップを開催しました。

 

なんていうんでしょう、通常、こういうフェーズでワークショップなり、市民を集めるとどうしても反対運動の機運が強くなっちゃうというか、予期せぬ方向に行っちゃうこともあると思うのですが、五十嵐さんはどんな風に、この時のワークショップを設計したのですか?

 

先ほど少し触れた、もう1つのチームが活きています。建築家やランドスケープの専門家、環境NPOの方、コミュニケーションデザインを研究している大学の先生などのチーム、ここは反対運動にしないための、もう一つの顔として。プロボノとして参加してくれている人たちです。そこで色々と相談しながら、ワークショップを設計しました。

 

ワークショップは私一人で考えても仕方ないし、いいものになるかは分からないし、かといって野村さんに丸投げするのも違うと思ったから、自分で考えたものをこの専門家チームに見てもらって揉んでもらいました。

なるほど。外部の専門家に力を借りながら、デザインする。それでもワークショップに参加する市民にはそういう裏の仕組みは見えないでしょうから、やっぱり、声の大きい人の意見だけが目立ってしまうワークショップになってしまう可能性はあったと思うんですけど。

 

ワークショップを実施するときに、いくつか気をつけたことがありました。一つはまず、大きな前提として「そのワークショップで何かを解決しよう」とは全く考えていませんでした。

 

なぜかというと、鹿沼公園の件は、市民に説明がないことに怒っている人もいれば、児童公園が潰れることに反対の人、公有地がマンションになることを危惧している人もいたり、人によっては「そんなに悪くないんじゃない?」という人もいて、賛成と反対の間のグラデーションが存在したからです。あの時点でまずは大事なことは、「関心を持ってもらうこと」、「この問題にコミットしようとする人を増やすこと」「いろんな考えがあることを理解しあうこと」だと考えました。それと市民といっても、近くに住んでいる人と、そうじゃない人もいましたし。だから、ワークショップを始めるにあたって、この点は参加者には説明しました。

 

インタビューの後編は、12月13日(金)に公開いたします。

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