地方の生き残りを懸けた観光戦略とブランド戦略の在り方(3)

鹿児島県議会議員
米丸まき子

2020/5/29 地方の生き残りを懸けた観光戦略とブランド戦略の在り方(1)
2020/6/1 地方の生き残りを懸けた観光戦略とブランド戦略の在り方(2)
2020/6/3 地方の生き残りを懸けた観光戦略とブランド戦略の在り方(3)

 (本稿は新型コロナウイルス感染症が社会問題に発展する前に執筆したものです)

〜鹿児島県のブランド戦略を通して〜

国に帰った交換留学生が日本の地方都市の魅力を語ってくれる

 その土地ごとに、常日頃から旅行者を歓待し、県内を舞台に積極的な異文化交流が行われる、正しく世界へ開かれた県。そこでは、次から次へ新たなサービスの形成や革新が起こり、地域の産業・経済の地盤が強まるといったポジティブサイクルがつくり上げられます。

 地方創生で掲げられている、地方における人口増加には2種類あります。それは、定住人口と交流人口です。定住人口は言葉の通り、都会から地方へ移住する人口。一方、交流人口とは、観光客(国内・海外)の一時的な人口。この二つの人口が増加すれば、地域経済が潤います。経済効果の大きい順は、移住→海外からの観光客→国内観光客と考えています。

 交換留学も、地方の活性化に一役買うことが考えられます。数年後には留学生(大学・大学院生、専門学校生・日本語学校生)が30万人に増える見込みです。そして、海外に在住経験のある、いわゆる「帰国子女」も年々増えています。海外と繋がるための強力なパートナーは既に目の前にいるのです。私が、ロータリークラブにおいて委員を務めている青少年交換留学は、世界約8000人の子どもが同時期に交換留学を行うプログラムです。これまでに、ポーランド、フィンランド、フランス、イタリア、台湾、メキシコ、カナダ、米国、スウェーデン等と交換留学をしてきました。多文化共生社会実現の世界では、英語だけ喋れればいいというわけではありません。現在、鹿児島に来ている技能実習生の中には日本語も英語もままならない方がいます。もし、旅行先で、英語はもちろんのこと、そこで話されている英語以外の言葉に子どもたちが興味を持ち、将来、技能実習生や英語を得意としない、他の地域からの観光客と話すことができるようになれば、その方々との架け橋になってくれるかもしれません。

 しかしながら、地方ではまだまだ外国人を受け入れる体制が整備されていません。今後は「留学生」という取り組みやすい見地からコツコツと遂行していけば、地元の人々にとっても、外国人を受け入れる訓練になります。最終的に、留学生が自国に帰ったとき、地域の人々と強い結び付きを持っていることで、ダイレクトにビジネスもできますし、技術交換・情報交換などもできます。過去を思い返せば江戸時代、江戸はすでに世界最大の大都市でしたが、根本的には各藩による地方分権体制が展開され、薩摩77万石も国内トップクラスのローカルハブでした。明治時代になり、中央集権体制が固まって以降、東京一極集中の動きは長きにわたって続いています。

戦略で生まれ変わる地方都市

 地方創生に要求されているゴールとは、生産物やショッピングエリア・観光地を主軸に「購入したい」「行ってみたい」という地域ブランドから「再び行ってみたい」「会いたい」という「親交を結ぶ」地域ブランドへ、さらに「住み続けたい」「引き返したい」「暮らしてみたい」という「生活」を軸にした地域ブランドへのリレー活動ではないかと考えています。

 現在、地方の財政は中央への依存度が高く、いかに中央から補助金を引き出すかが、地方政治や行政の手腕のようになっています。しかし、今の東京は単身世帯の比率が非常に高く、出生率が低いため、これからも経済の牽引車であり続けるとは限りません。今後、日本の発展は、「地方の活性化」に懸かっているのではないでしょうか。

おわり


プロフィール
米丸まき子(よねまる・まきこ)
鹿児島県議会議員
1975年生まれ。鹿児島県姶良市出身。亜細亜大経営学部、英国ブライトン・ビジネス・スクール(MBA経営学修士)卒業。ブランドコンサルティング会社を経て、2007年鹿児島にUターン。家業である葬儀社と旅行会社で、経営に従事。12歳の時マーガレット・サッチャーの「争いもなく幸せに生きていけるようにするのが政治です」という言葉に触れ、政治家への志が芽生える。2019年4月鹿児島県議会議員に初当選。

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