ごみ問題、ITと科学技術で解決を!(4)〜「流出ごみの地産地消モデル」で地域産業の振興目指す〜

株式会社ピリカ代表取締役/一般社団法人ピリカ代表理事・小嶌不二夫
(聞き手)Public dots & Company 代表取締役/官民共創未来コンソーシアム代表理事 小田理恵子

 

2022/06/23 ごみ問題、ITと科学技術で解決を!(1)〜マイクロプラ対策の旗手に聞く「データを活用した環境保全」〜
2022/06/27 ごみ問題、ITと科学技術で解決を!(2)〜マイクロプラ対策の旗手に聞く「データを活用した環境保全」〜
2022/06/30 ごみ問題、ITと科学技術で解決を!(3)〜「流出ごみの地産地消モデル」で地域産業の振興目指す〜
2022/07/04 ごみ問題、ITと科学技術で解決を!(4)〜「流出ごみの地産地消モデル」で地域産業の振興目指す〜

ごみの再資源化に着手

小田 とはいえ、ピリカ社の活動は着実に社会に影響を与えています。「アルバトロス」で得たデータの公表は、プラスチック被膜肥料の分野にも動きをもたらしましたよね。

小嶌氏 これには私自身も驚きましたし、感動しました。日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として取り組んだ調査で、プラスチックでコーティングされた肥料が水田から流出していることを突き止め、データを公表したのですが、その3年後に全国農業協同組合連合会(JA全農)などが「2030年にはプラスチックを使用した被膜肥料に頼らない農業を目指す」と宣言しました。

直接の接点はないので、もちろん私たちの活動だけによるものではないと思いますが、少しずつ、そうした社会変革の一助になっていると思うと、うれしいです。

 

小田 今までの活動から発展的に見つかった課題や、今後取り組みたいことはありますか?

小嶌氏 今後は、回収したごみの再資源化にも注力していきたいと思っています。現在の日本の法律では、ごみは投棄した人を特定できない限り、回収した人か、ごみが捨てられていた土地の管理者が、責任を持って処理しなければならないとされています。これはとても大きな問題です。

例えば、海岸をきれいにするためにごみ拾い活動をしているNPOが、処理に困りそうなごみの回収に二の足を踏むといった事例が全国各地で起こっています。回収しても処理まで責任が持てないからです。

先ほど紹介した人工芝の問題で言えば、流出を防ぐフィルターにたまった人工芝の破片は施設の管理者に処理の責任があります。そうすると、これまで雨風で自然に流れていた物の処理コストがかさむわけですから、いくら環境に良いと言っても上司や施設管理の委託元を説得できない場面が出てくると思います。

このような構造的課題を何とかしたいと思い、ごみの再資源化を思い付きました。ごみが有価物として買い取られ、いろいろな製品に使われるようになる仕組みです。

 

写真:流出懸念プラスチックの再資源化に成功

 

小田 ごみの再資源化についても、具体的な取り組みは進んでいるのですか?

小嶌氏 日本財団、日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)、株式会社リバネスが共同実施する「プロジェクト・イッカク」(注2)に参画しており、人工芝などのプラごみを原料ペレットにし、製品に戻す取り組みをしています。これまでに買い物かごやカラーコーンができました。

製品には「この製品は人工芝ごみでできている」旨が記載されているので、それらの利用を通じてプラごみ問題の周知や啓発につながります。

他にも「海ごみを心に残る製品へ生まれ変わらせるアップサイクルシステム」をテーマにした製品開発も進めており、水族館の土産品として売られているような縫いぐるみに再生することを検討しています。

縫いぐるみは中にプラスチックビーズが詰められていることが多いので、それをプラごみの再生品にしようという計画です。水族館に遊びに行き、そこにある縫いぐるみの売り場に「この商品の購入で地域の海がきれいになります」と掲示されていたら、購入したくなる人が増えるのではないかと思うのです。

このような消費者を巻き込んだ事業モデルを、いろいろな自治体や企業と一緒につくっていきたいと考えています。

 

注2=ベンチャー企業を中心とした異分野チームで組成された、海洋ごみ削減とビジネス創出を同時に実現する事業モデル構築を目指す取り組み。

 

写真:使うだけで海を守れる製品へ(付加価値向上)

 

問題ではなく、機会と捉える

小田 既に本格的な取り組みを始めているのですね。やってみて「気付き」はありましたか?

小嶌氏 プラごみの回収から再資源化、製品化、販売までを地産地消にするのが理想ですね。この取り組みを始めて知ったのが、プラ製品を作る工程です

。今や国内でプラ製品の製造はほとんど行われておらず、中国やベトナムが担っています。ところがプラごみは日本各地で見つかります。ですから国内で回収し、原料にして製品化し、地元で販売するような流れができると環境的に効率が良いですし、地域産業の活性化にもなると思っています。そういう「流出ごみの地産地消モデル」を、いろいろな自治体と連携して増やしていけるといいなと思っています。

 

小田 ぜひ、そのエコシステムをつくり上げていただきたいです。

小嶌氏 環境問題はコストと捉えられがちですが、見方を変えると新たな産業振興につながる側面もあるので、読者の皆さんは既成概念を持ち過ぎないでほしいと思います。問題ではなく、機会として捉えていただきたいというのが私からのメッセージです。

 

【編集後記】

ピリカ社の設立は2011年。小嶌氏らのチームは、EBPM(証拠に基づく政策立案=Evidence-based Policy Making)や「持続可能な開発目標(SDGs)」、デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる何年も前から、人間にとって最も脅威となる環境問題の解決にITや科学技術を駆使して取り組んできました。

「問題ではなく、機会として捉えていただきたい」というメッセージが象徴するように、避けては通れない問題をいかに効率よく解決に導くか。さらには、付加価値を与えられる仕組みに転化できないか。これからの環境対策は、官民の垣根を越えたアイディエーション(アイデア出し)が求められています。取り組みの成果が着実に各界に広がるピリカ社の今後の活動に注目しています。

 

(おわり)


【プロフィール】

小嶌 不二夫(こじま・ふじお)
株式会社ピリカ代表取締役一般社団法人ピリカ代表理事

大阪府立大卒。京大大学院を半年で休学し、世界を放浪。各国で大きな課題となりつつあった「ごみの自然界流出問題」の解決を目指し、2011年に株式会社ピリカを創業。ピリカはアイヌ語で「美しい」の意。21年に環境省「環境スタートアップ大臣賞」受賞。同年に「MIT Technology Review Innovators Under 35 Japan」選出。

スポンサーエリア
おすすめの記事