政治家は自宅住所を公開すべきか?(中)

政治家は自宅住所を公開すべきか?
旧姓使用に「広く知れ渡っていること」の証明は必要か

台東区議会議員
WOMAN SHIFT 代表
本目 さよ

2020/9/14 政治家は自宅住所を公開すべきか?(上)
2020/9/16 政治家は自宅住所を公開すべきか?(中)
2020/9/18 政治家は自宅住所を公開すべきか?(下)


全国市議会議長会からのお知らせとは?

図表中③の議員としての旧姓使用に関して、全国市議会議長会から2020年3月にお知らせ(注)が出ています。各自治体においてはぜひこちらを参照の上、旧姓を簡単に使用できるようにしていただきたいです。内容は次の通りです。

「議員の通称使用については、地方議会への女性の参画が進む中、婚姻等により旧姓で議員活動を行うことを希望する事例が増えるものと予想されます。また、日頃通称で活躍して当選した議員が、その通称のままで議員活動を行うことを希望する場合も想定されるところです。

ついては、議員の通称使用に関する国会における先例や総務大臣答弁など関連の資料を掲載いたしますので、各市議会におかれましては、その趣旨をご理解いただき、議員の通称使用について必要な措置など、格別のご配慮を賜りますようお願い申し上げます」

(注)=2020年3月13日付 全議M1第7号「議員の通称使用について」。同日付で全国都道府県議会議長会、同月10日付で全国町村議会議長会も同様の通知を発出しています(全議第288号「議員の通称使用の取扱いについて」、全町村議第62号「議員の通称使用の取り扱いについて」)。

要請から3日後に総務省から出た通知

今回要望した事項に関して、各都道府県選管委員長宛てに、7月17日付で総行管第205号「候補者の立候補届出があった旨の告示事項等について」の通知が出ました。市区町村選管に対しては、都道府県選管から同じ内容を周知することとされています。通知本文については、総務省の公式HPには掲載されていませんが、WOMAN SHIFTのnote(https://note.com/womanshift/n/n811c649bcd4e)で紹介していますので、ご参照ください。立候補時、プライバシーの観点もあり、国政選挙においても以下の見直しをしたので、地方選挙でもこれに準ずる形にしてください、という大臣からの各都道府県選管に対する通知です。

告示の内容の変更

(旧)届出受理番号、届出年月日、名簿届出政党等、氏名(通称認定された場合は通称のみ)、性別、本籍の都道府県、住所、生年月日、職業(以下略)

(新)届出受理番号、届出年月日、名簿届出政党等、氏名(通称認定された場合は通称のみ)、本籍の都道府県、住所の市区町村まで(※指定都市は行政区まで)年齢、職業(以下略)

ウェブサイト掲載内容の変更(原則)

(旧)氏名(通称認定された場合は通称のみ)、性別、年齢、候補者届出政党(党派)、一のウェブサイトアドレス

(新)氏名(通称認定された場合は通称のみ)、候補者届出政党(党派)、一のウェブサイトアドレス

 

つまり、性別や生年月日の公開が不要になったり、住所の掲載が市区町村までになったりと、下記のように変わる画期的な通知です。

〇告示:性別→公開不要
住所→住所の市区町村まで
生年月日→年齢
〇ネット公表:性別→公開不要
年齢→公開不要
住所→公開不要

旧姓使用については?

さらに、旧姓の通称申請があった場合には、戸籍の謄本または抄本を確認すれば、本名に代わるものとして広く通用しているという証明書類を求めることなく通称認定してよいということと、戸籍謄本が1枚あればその他の書類を求める必要はないということになりました。今まで、WOMAN SHIFTに連絡をもらった中で、多くの女性議員が仕事で旧姓使用はしてきたが、それが広く通用していることを証明できる資料がなかったり、議員としてすでに旧姓で活動してきたのにもかかわらず、議会が出している広報物(もちろん旧姓を記載)でも証明書類にならないといわれたりと、旧姓で選挙に出ることについて、非常に高いハードルがあったそうなのです。芸名などと異なり、旧姓は今まで自分の名前として使用してきていて、戸籍を見ればそれが自明であるため、今回の通知は非常にありがたいと思います。地元育ちの友人には周囲が旧姓しか知らない中、新姓で立候補せざるを得ない方も複数人存在しました。あくまで私たちがヒアリングできたのは立候補して当選している女性議員に対してだったので、1票を争う地方議員選挙で、旧姓使用ができなかったために落選した方もいるはずです。

各自治体で取り組むべきこと

今回の総務省の通知には、各自治体に対する強制力はありません。しかし、GGI(Gender Gap Index:ジェンダーギャップ指数)のランキングで、日本は153カ国中121位と毎年順位が下がってきています。GGIで政治参加度は非常に重要です。政治参画の指数で日本は現在、下から10カ国に入ります。地方議会においても、女性議員ゼロの議会が昨年春の統一地方選後の6月1日現在で14・0%あります。安倍政権は女性活躍推進を掲げ、2018年に「政治分野の男女共同参画推進法」が成立したにもかかわらず、このような状態というのは由々しきことです。今までこのようにやってきたから、これからも同じでよい、というのではなく、「今この通知が出たこと」の意味をよく考え、女性議員が少しでも立候補しやすい環境を各自治体で整えていただきたいと思います。

「下」へつづく


プロフィール  
本目 さよ(ほんめ・さよ)

東京都台東区議会議員
1982年生まれ。私立成蹊高校、白百合女子大卒、お茶の水女子大大学院修了。(株)NTTデータイントラマート人事職を経て2011年より東京都台東区議会議員。台東区では唯一の30代女性議員。キャッチフレーズは「子育て、本命。─やさしい政策─」「政策を実現できる女性議員を増やし、地方議員を女性のキャリアの一つにする」ことをmissionとする超党派の若手女性議員ネットワークWOMAN SHIFT 代表。1児の母。

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