政治家は自宅住所を公開すべきか?(下)

政治家は自宅住所を公開すべきか?
旧姓使用に「広く知れ渡っていること」の証明は必要か

台東区議会議員
WOMAN SHIFT 代表
本目 さよ

2020/9/14 政治家は自宅住所を公開すべきか?(上)
2020/9/16 政治家は自宅住所を公開すべきか?(中)
2020/9/18 政治家は自宅住所を公開すべきか?(下)


実は女性に限ったことではない

今回、超党派の若手女性議員のネットワークから声を上げましたが、実はこの問題は女性に限定したものではありません。例えば中学生の娘さんがいる男性議員の方も、立候補するに当たって家族が心配だと言います。訪問販売が家に来たときに、政治家の家族は断りづらいという話もよく聞きます。さらに、本人と偽って宅配ピザを注文するなどの嫌がらせもあります。特にインターネットが発達した現在、「晒される」という言葉もあるように、住所をインターネット上で拡散されたり、嫌がらせも発生したりしています。

公人なのに住所を隠すのか?

選挙に立候補する人の住所の公表についてお話しすると、「公職に就こうとする者が住所も公開できないなんて」「相談や陳情がしにくくなる」「そんなにプライバシーが大事ならば、他の人に相談する」などと言う方もいます。しかし一切の連絡方法を伏せている議員というのは、あまりいないのではないかと思います。住所を公開していないならば電話やメール、SNSなど、連絡が取れる方法はいくらでもあります。その中で自治体として強制的に自宅の住所を公開すべきか? ということは、考える必要があるでしょう。住所を公開していつでも相談に来てもらえるようにするのも政治家として一つの在り方ですし、連絡は電話やSNSで、実際にお会いするときには喫茶店や事務所、現職の議員なら役所で会うのも一つの在り方でしょう。多様な議員を増やすため、強制力を持った公表は最低限でよいのではないか? と思います。

現職の議員の旧姓使用と住所公開について

図表の③と④についても、課題があると全国のWOMAN SHIFTの参加者から聞いているところです。都市部の自治体では③について、役所の職員も旧姓を使用しており、大きなハードルもない印象ですが、そうでない自治体もあるようです。例えば、結婚して姓が変わったがそのまま旧姓を使用し続けたいという場合に、職員でも前例がないため駄目だと言われたという事例を聞きました。また、旧姓使用は問題なくても、通称使用のルールにのっとり、理事者全員に新姓と旧姓が通知されたことで、姓が変わった女性議員のみ結婚の事実が庁内全部に知れ渡ったという事例もありました。特に近年は、婚姻の際に妻の姓を選択し旧姓使用している男性も増えてきました。男女にかかわらず、通称とは違い、旧姓を継続して使用する場合の手続きの簡素化を望みます。

住所公開についても同様です。HP等に載せる住所を町名までとしていたり、非公表を認めたりするなど、議員のプライバシーに配慮した議会も増えてきました。特に地方議員の場合、議員活動の事務所を持たないことも多く、住所を公開するとなると自宅住所を全世界に発信しなければなりません。今後、今まで以上に多様な価値観を持つ市民が増えるとともに、多様な価値観を持つ議員も増えるはずです。その中で議員だから住所を必ず公開しなければならない、ということはその多様性を排除することにほかなりません。併せて、議員の旧姓使用と住所公開についても議論が進むことを望みます。

(おわり)


プロフィール  
本目 さよ(ほんめ・さよ)

東京都台東区議会議員
1982年生まれ。私立成蹊高校、白百合女子大卒、お茶の水女子大大学院修了。(株)NTTデータイントラマート人事職を経て2011年より東京都台東区議会議員。台東区では唯一の30代女性議員。キャッチフレーズは「子育て、本命。─やさしい政策─」「政策を実現できる女性議員を増やし、地方議員を女性のキャリアの一つにする」ことをmissionとする超党派の若手女性議員ネットワークWOMAN SHIFT 代表。1児の母。

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