本格化する官民人材の流動化(1)<br>多様化する公共の担い手

私は2017年夏に横浜市長選に落選したことがキッカケで、再び民間に戻りました。あれから約2年が経ち、確信していることがあります。それは「公共セクターの経験はこれからのビジネスに大いに役立つ」ということです。逆もまたしかりで、「公共セクターは企業がどうやって事業計画を作っているかを学べば、官民連携事業をアップデートできる」。

なぜ、そう感じるかといえば、今、多くの公共分野は官と民の垣根がなくなり始めているからです。観光、決済、交通・移動、教育、公園、まちづくりなど、AIやIoT、ブロックチェーンなどテクノロジーの著しい進化と相まって、社会のあらゆる分野でビジネスが公共を担う場面が急速に増えています。政府や地方自治体と企業のコラボレーションによって社会に新しい価値を生み出していく時代が訪れています。

 

パブリックの意味を問い始めた企業

このときに問題となるのが、「公共を担う」ことを肌感覚として有しているか否か、です。私自身、次のような経験があります。国内の大手広告代理店に呼ばれて講演をしたときのこと。30代後半ないし40代前半のクリエイターの人たちから、こんなことを言われました。「今、社内ではパブリックってなんだろう?という問いをみんなで考えている」。

 

これだけではありません。私が民間に戻ってからの2年間、世界銀行や大手鉄道事業者など、数々の公的機関、企業で講演をさせてもらいましたが、テーマこそ違え、そこで高い関心を呼んでいたのは「これからの公共のあり方」でした。企業サイドの意識は明らかに変わり始めています。

 

従来の行政だけのロジックでは行き詰まっていることは現場の地方自治体もだいぶ気づいているでしょう。一方で、公共を担う感覚を有してない、あるいはその感覚の薄い企業に任せることも不安、というのが今の地方自治体を取り巻く状況です。だからこそ、ビジネスと公共の両方を理解できる人材が社会的には求められているのです。そして、この社会のニーズにピタッとはまるのがビジネスパーソン出身の地方議員や官民連携事業に精通している公務員です。

 

とはいえ、企業の立場になれば、どこに「いい地方議員」「いい地方公務員」がいるのか、分かりません。仮に分かったとして、企業が議員と業務委託なり契約を結んで仕事をすることは実質的に不可能です。それはなぜかというと、議員が相手となると政治色がついてしまうから、です。

 

官民人材のリボルビングドアとして活用

そこで私は元川崎市議会議員の小田理恵子氏、現職の神奈川県議会議員の菅原直敏氏らと、地方議員・公務員と企業をプロジェクトベースでマッチングするサービスを提供する「株式会社Public dots & Company(本社:東京都渋谷区)」を立ち上げました。吉本興業がお笑い芸人を、ホリプロがアイドルを、ジャーニズ・エンターテイメントが男性アイドルをプロデュースしているように、Public dots & Companyは地方議員、公務員をプロデュースする会社です。プロデュースする先は企業。今、Public dots & Companyでは、こうしたパブリック人材とのマッチングを目的にしたデジタルプラットフォームの整備に着手しています。

 

冒頭申し上げたように、これから企業が公共サービスを担う時代に本格的に突入してきます。その際に、公共を担うことの意味をちゃんと理解した上で、企画や開発ができる、水先案内人が絶対に必要です。それを担うのが地方議員や地方公務員経験者です。将来的に企業での就労も解禁になれば、現職の公務員もその対象になります。

 

5月15日法人登記を済ませ、リリースを発信したところ、非常に大きな反響がありました。地方議員からの問い合わせはもちろん、ビジネスベースでの問い合わせも広告代理店や人材開発系の企業などから舞い込んでいます。そして驚いたのは、中央省庁からの反応です。公務員のパラレルワークに関心を持ってくれたようです。

 

Public dots & Companyが提供するサービスは、地方議員や公務員がその職を離れることなく、プロジェクトベースで民間企業とタイアップできる仕組みになっています。公共セクターで働く皆さんの立場になれば、いきなり転職することなく、自分の実績を積み重ねることができるのが魅力になるはずです。実績を積み重ねた結果、転職するという未来もあるかもしれません。

 

他にもあります。自治体の職員同士の、プロジェクトベースでの兼業です。規模の小さな自治体になれば、専門家が少なく、施策を立案するにも困っているという話をよく聞きます。東京都や横浜市、大阪市など大都市には専門性を有した公務員の方がいます。弊社サービスを通じて、専門性を有した公務員をプロジェクトベースで他の自治体にマッチングするということも可能です。つまり私たちは、官から民へ、民から官へ、官から官へと人材のマッチングしていくことで、自治体の政策立案力と政策のアウトカムを高めていく会社です。

 

公務員の副業・パラレルワークもどんどん幅が広がっていくのは時代の要請ですから、今後、企業での兼業、他自治体での兼業も当たり前の時代がやってきます。ぜひ、多くの方にうちの会社のマッチングサービスを利用して頂ければと思います。

 

(株式会社Public dots & Company伊藤大貴)

 

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