「迷ったらフルスイング」で行動~草村大成・熊本県高森町長インタビュー(3)~

熊本県高森町長 草村大成
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2023/01/30 「実行」と「実現」はセット、決めた以上はやり切る~草村大成・熊本県高森町長インタビュー(1)~
2023/02/02 「実行」と「実現」はセット、決めた以上はやり切る~草村大成・熊本県高森町長インタビュー(2)~
2023/02/06 「迷ったらフルスイング」で行動~草村大成・熊本県高森町長インタビュー(3)~
2023/02/10 「迷ったらフルスイング」で行動~草村大成・熊本県高森町長インタビュー(4)~

 


 

第1回第2回に引き続き、熊本県高森町の草村大成町長のインタビューをお届けします。

「決めた以上はやり切る」という明快かつ力強い行動指針の下、町政改革を推し進める草村町長。今回も「実行」と「実現」に対するコミットメント(責任)を感じることができます。有言実行のリーダーシップを見ていきましょう。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)

 

震災時の情報提供

小田 前回、町のケーブルテレビチャンネル「TPC(たかもりポイントチャンネル)」が2016年の熊本地震の際、情報伝達手段として役立ったとおっしゃいましたが、そのときのエピソードをお聞かせください。

草村町長 熊本地震のときはTPCに24時間、私が出演し、住民に絶えず情報提供を行いました。停電や断水が起きている地域の復旧状況をリアルタイムで伝えたり、「もうしばらく辛抱してほしい」と呼び掛けたりしました。生放送で何回も同じことを伝えました。

 

小田 そうして情報発信を行う傍ら、災害対策本部も指揮されたのですね?

草村町長 もちろんです。災害対策本部からも中継しました。高森町のある阿蘇郡は県内で最も震度が大きく、被害も広範囲に及びました。電気が復旧するまで、真っ暗な所で指揮を執るのは大変でした。自宅には11日間、帰りませんでした。

 

小田 本震のときは、やはり今までとは違う脅威を感じましたか?

草村町長 最初に揺れを感じた時点で、これは普通ではないと思いました。相当の被害が出るだろうと、すぐに分かりました。

 

小田 すぐに役場へ向かったのですか?

草村町長 はい。道すがら、道路や建物の様子を確認すればよかったのですが、そんな余裕はありませんでした。職員も被災する中で登庁しようとしましたが、どうしても来られない者もいました。ですから、集まった人数で何とかするしかありませんでした。

災害時には防災計画の通りに事が運ばないことも多々あると実感しました。被害の大きな地域では携帯電話のアンテナが被災しており、現場と連絡が取れないこともありました。その場その場での判断がすべてでした。

 

被災から得た気付き

イメージ

 

小田 有事の際に即断できるトップがいるかどうかで、復旧や復興のスピードに差が出るのではないでしょうか?

草村町長 それは重要な要素の一つとしてあると思います。私は現在3期目ですが、その間に大きな災害を熊本地震も含め、3回経験しています。後の二つは、12年の九州北部豪雨災害と16年の阿蘇山噴火です。

これらの経験から思うのは、首長の個人的な人脈が速やかな復旧や復興につながるということです。人や車両などが必要となった場合、国や県を通していると時間がかかります。交流のある他自治体の首長に直接連絡し、協力を要請するのが最も速く対応できます。

 

小田 被災していない地域の首長に連絡するのですね?

草村町長 そうです。高森町は福島県相馬市と災害時相互応援協定を結び、災害時にはお互いに物資や応援職員の派遣などを行うことにしています。相馬市の立谷秀清市長には昔からお世話になっており、熊本地震の際にも直接連絡しました。そうしたところ、素早くキッチンカーなどの車両を手配してくださり、とても助かりました。

災害時に住民は行政を信じ、恐怖と闘いながら避難所に向かいます。それに対し、できることは最大限に行うのが行政の役割です。通常の手続きで時間がかかるのであれば、他の方法で復旧や復興を目指すまでです。

 

小田 熊本地震が発生した当時、私は川崎市議を務めていました。全国20の政令市と東京都は「21大都市災害時相互応援に関する協定」を締結しています。熊本地震の際はこれがすぐに機能し、川崎市からも物資などを熊本に送りました。

草村町長 熊本市を通じ、高森町も川崎市から支援を頂きました。21大都市災害時相互応援協定は仕組みがしっかりと機能しているので、支援の届くスピードがとても速いです。災害はないに越したことはないですが、経験したことによって、法改正や新たな仕組みづくりにつながるのは良いことだと思います。

当時を振り返ると、やはり情報発信に力を入れていたと思います。「物資や支援が必要だ」と声を上げなければ、なかなか届きません。ですから、ケーブルテレビで24時間の生放送を続けましたし、インターネット交流サイト(SNS)などでも発信しました。

 

小田 これまでの経験を踏まえ、災害時にはどのような仕組みがあると良いと思いますか?

草村町長 政令市を中心に、各都道府県の中で細かい協定を結ぶべきだと思います。熊本の場合は「熊本連携中枢都市圏の形成に係る連携協約」を、小さな市町村も含めて結んでいます。中枢都市である熊本市と近隣の市町村が連携し、まちづくりをしていこうとするもので、これにより災害支援のスピードも速まりました。

こういう仕組みはどの地域でも必要だと思います。

 

第4回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2022年12月26日号

 


【プロフィール】

熊本県高森町長・草村 大成(くさむら だいせい)

1967年生まれ。日大文理卒。2011年熊本県高森町長選で初当選。当時作成したマニフェストで、第9回マニフェスト大賞の首長部門で優秀賞を受賞。現在3期目。信念は「仕事は『まっすぐ・ぶれず』にやりぬく!」

スポンサーエリア
おすすめの記事