福島の復興には世界の英知を結集せよ(下)

本田 朋(元福島県議会議員、GR Japan株式会社・公共政策マネージャー)

世界に「フクシマ」をアピールせよ

官僚、科学者や原子力行政に精通した関係者からすれば、科学的検証結果に基づいた緻密な数的データを冷静に主張していけば必ず国際社会もいつの日か分かってくれると信じているのかもしれません。しかし、いつの日か理解してもらうのではなく、さらに能動的に情報発信戦略を策定する必要が今の福島県にはあると筆者は考えます。例えば、空間放射線量についても情報の受け取り方に配慮した方法があり、福島県の放射線量を国際社会に丁寧に伝える取り組みを続けている、米国セーフキャスト社などと対話を重ねていく必要性があります。

国際舞台にはこういったリスクコミュニケーション戦略策定のプロを抱えるコンサルタンシー・ファーム(コンサルタント会社)が多数存在し、米国であればワシントンDCやニューヨークベースのブランズウィック、オグリビー、フライシュマン・ヒラードやウェーバー・シャンドウィック等の政府渉外や国際PRファーム、EU(欧州連合)であればロンドンやブリュッセルの政策シンクタンク、例えばフィプラやイントレルなどが戦略アドバイザリー業務を行っています。公共だけでは解決できない課題を民間企業のノウハウと見識を活用し、官民の連携と協力を深めながら対処する手法をもっと日本の行政も活用していくべきです。筆者は仕事で欧州をたびたび訪問しますが、現地で福島出身だと知った相手が、突然温かい対応になることがあります。裏を返せば「フクシマ」の名前は、悲惨な原子力事故と連想され世界中に広まっているということであり、その認識を改めて関係者は持つべきです。そういった意味で、福島県がこういったコミュニケーション戦略ファームやシンクタンクと独自に国際連携を深めていくことは、十分に選択肢として検討されていくべきではないでしょうか。

地球温暖化対策や原子力政策についてメッセージを発信せよ

筆者は201910月、米国でクリントン政権時に副大統領を務め、現在は地球温暖化について世界中で警鐘を鳴らしているアル・ゴア氏の主宰する環境団体クライメート・リアリティ・プロジェクトのトレーニングに東京で参加しました(写真)。ゴア氏は講演の中で福島県について、福島県再生可能エネルギー推進ビジョンにおいて県内需要100%相当量を再生可能エネルギーで生み出すことを目指していることを讃え、会場にいた聴衆に大きな感銘を与えました。私は講演後のレセプションにおいて、ゴア氏と個人的に、元福島県議会議員として福島県の実情を講演で取り上げていただいたことにお礼を申し上げる機会に恵まれました。世界の環境問題をリードするゴア氏からも、福島県は注目されています。

10月には再生可能エネルギー関連産業が集積するドイツのハンブルク州の首相府において、ハンブルク州と福島県が再生可能エネルギー推進連携での覚書を締結しました。願わくばこの覚書を契機として、ハンブルク州が設立したエネルギー産業クラスター「Renewable Energy Hamburg」や、北欧の風力発電プラットフォームなどと積極的に連携を深めていただきたい。福島県のイノベーションコースト構想で世界のクリーンエネルギー、医療機器産業、ロボティクス市場を国際的にリードする決意は評価しますが、効果的に情報発信を推進するためにも、スウェーデンの学生環境活動家グレタ・トゥンベリさんのように地球温暖化への明確なメッセージを福島県知事からも期待したいものです。

まだまだ、福島県復興に対する懐疑論が国際社会には根強く残っています。筆者は縦割り行政の利点も欠点も熟知しているつもりですが、福島県が目指す復興を加速化、なおかつ効率的に行うにはさらなる官民連携が必要です。福島県でも副知事、あるいは危機管理部長に外国語に堪能で国際コミュニケーション戦略を専門とする民間人を活用するなどの積極的な人事があってもよいでしょう。

残念なことに日本ではしばしば沈黙が美徳とされ、強く主張をすることがはしたないと見なされる文化がありますが、戦略的なコミュニケーションと情報発信を続けていくという努力が必要ではないでしょうか。そこに外部の国際的見識や民間知見を活用することは、世界が目を見張る復興を成し遂げようとしている、福島県の未来を大きく変える可能性があると筆者は考えます。関係者にはぜひご一考をお願いします。  

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