いまなぜ、自治体にカスタマーエクスペリエンス(CX)が大事なのか(3)

株式会社Public dots & Company代表取締役・伊藤大貴

米国では政府方針の主要テーマ

「今こそ自治体はCXを学ぶことで、行政サービスの質を向上できる」
冒頭から聞き慣れない言葉を出してしまいましたが、心配する必要はありません。CX(カスタマーエクスペリエンス・顧客体験)とは何か。近年、マーケティングの世界では商品やサービスを消費者に購入してもらうに当たって、CXの設計の重要性が叫ばれています。今、自治体が直面する市民コミュニケーションの課題を明らかにしつつ、CXが自治体にとってどんな可能性をもたらすのか、これから解説しようと思います。(第1回第2回はこちら)

自治体にこそ必要なCXとカスタマージャーニー

どうでしょう。流山市を持ち出すまでもなく、ペルソナを設定するだけで、新しく住民を呼び込んだ自治体が存在することを考えると、今ある行政サービスの質を上げるために、カスタマージャーニーマップを作成するノウハウは自治体にこそ重要と言えそうです。

言うまでもなく、すでに日本は人口縮退期に突入しています。そういう中で、ひそかに始まっているのは自治体間の人の奪い合いです。日本には約1700の自治体が存在し、そのほとんどは住民税、固定資産税に依存しています。潤沢な法人税、事業所税を得ている自治体は数えるほどしかありません。人口が減っていく中で、いかに担税力の高い市民に住んでもらうかに、自治体の生命線が懸かっているといってもいいでしょう。

そのための方策は二つです。一つは魅力的な政策を打ち出すこと。もう一つは今ある行政サービスの質を向上させること、です。賢明な読者はお気付きと思います。前者の手法はコストが掛かり、自治体としては勇気が要るため、なかなか取れない選択肢です。ところが後者の行政サービスの質向上は、本稿で縷々述べてきたCXの設計およびカスタマージャーニーマップの作成によって実現できます。もちろん、何でもタダでは無理ですが、自治体職員がカスタマージャーニーマップの作り方を身に付けることができるとすれば、その効果は計り知れません。自治体職員は大なり小なり、自分たちが提供している行政サービスに対して「もっと多くの市民に知ってほしい」「なぜ、利用者満足度が上がらないのだろう?」と悩みを抱えているでしょう。

そうした悩みが生じるのは、ある意味当然で、ペルソナも設定されていなければ、必要なCXもデザインされず、カスタマージャーニーマップも整えていないからです。まだ、どの自治体も着手していない、今こそ周囲と差異化を図るチャンスです。誰も始めていないからこそ、すぐに効果に表れるでしょう。問題はCXの設計やカスタマージャーニーマップの作成をどこに頼んだからいいか、です。BtoB(企業間取引)やBtoC(企業と顧客の取引)では確立されているCXやカスタマージャーニーも、GtoC(住民に対する行政サービス)で提供できる企業はほとんど見当たりません。なぜなら、自治体が担う公共性を企業が理解していないからです。

生産性高く行政サービスを向上させるCX

では、誰に頼んだらいいでしょうか。手前味噌になりますが、筆者が2019年5月に何人かの地方議員経験者と立ち上げた、株式会社Public dots & Companyはその候補の一つと言っていいでしょう。この会社は、議員経験者や公務員経験者などパブリック人材を官民連携事業にプロデュースするサービスを展開中で、創業者たちが自治体のことを知り尽くしています。対企業のCX、カスタマージャーニーマップ作成の支援も行い、経験を積んできました。

行政サービスにおけるCXの導入、カスタマージャーニーマップの整備は、直面する自治体間競争時代に、極めて有効な打ち手となることは間違いありません。いち早く気付いた自治体から導入が始まるだろうと思います。

(終わり)

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