SDGsにおける 都道府県の役割(2)

SDGsにおける都道府県の役割
「SDGs中間支援組織(仮称)」の必要性と「若者の参加」  

三重県議会議員
稲垣昭義

SDGsの認知度はかなり広がり、都道府県や基礎自治体においても意識は高まってきています。特に都道府県では、ほぼすべての自治体で政策全般にSDGsの考え方が取り入れられ、総合計画や実施計画に反映されてきています。都道府県が自ら行うさまざまな政策には、SDGsの視点は強く意識されてきていますが、一方で市町村とのパートナーシップ、企業とのパートナーシップに関してはその必要性は認識するものの、具体的取り組みにはなかなか至っていない現状のようです。

少子高齢化や過疎化が進み、地方は疲弊し、小さな市町村は非常に厳しい状況にある中で、持続可能な地域であるためには広域自治体である都道府県の役割があるとの筆者の考えに対して、今後の可能性を3点にまとめて提言します。

一つ目は、都道府県が主導し、市町村や企業など多様なステークホルダー(利害関係者)を巻き込んだ広域連携を可能にするプラットフォームを構築することです。横浜市が設置した「ヨコハマSDGsデザインセンター」や滋賀県が設置した「滋賀SDGs×イノベーションハブ」のような組織も生まれてきていますが、小さな市町村が参加できて、その地域課題が共有され、課題解決のため行動を起こすことができる「SDGs中間支援組織(仮称)」をつくれば、非常に効果的に活動することが可能になると考えます。滋賀県などのように都道府県の主導により新しい組織として「SDGs中間支援組織(仮称)」を立ち上げる手法もありますが、三重県が検討しているように、これまで県の各部が企業や団体とそれぞれ結んでいる包括連携協定の窓口を一本化し、「SDGsパートナーシップ窓口(仮称)」を設け、市町村が活用しやすいものに発展させていくといった手法もあると考えます。

新しい組織を立ち上げるパターン、既存の仕組みを活用するパターンのいずれにしろ、都道府県が主導し、企業と市町村の強固なパートナーシップを構築し、その仕組みを小さな市町村にも分かりやすく活用しやすいものにしていく必要があると考えます。

二つ目は、このような「SDGs中間支援組織(仮称)」自体が持続可能でなければならず、そのためには新しい金融スキームの構築が求められます。事例調査で述べたように、「ヨコハマSDGsデザインセンター」や「滋賀SDGs×イノベーションハブ」のような中間支援的な組織は、SDGsの取り組み先進都市に設置されていますが、地方創生交付金が活用されていて、3年経過し交付金がなくなってからの運営が注目されています。企業と地域を結んで課題解決を図るには、お金が流れる仕組みをいかにつくるかが重要です。内閣府では2019年1月に「地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会」を設置して、地域課題の解決に向けたSDGs・(環境、社会、ガバナンスを重視する)ESG金融の在り方について調査、検討を行い、報告書を取りまとめています。具体的には、地方創生SDGsに関する登録制度や地域金融機関の表彰制度、金融商品・サービス、社会的インパクト評価手法等の検討を打ち出しています。さらに、地域事業社、地方自治体、地域金融機関、機関投資家、大手銀行、証券会社等が連携する「地方創生SDGs金融フレームワーク」の構築を目指しています(「SDGs白書2019」、p.63)。このような新しい金融スキームを構築するためには、社会的価値をいかに可視化し、関係者で共有し、評価できるかがポイントになると考えます。

三つ目は「若者の参加」です。筆者は各自治体のSDGs担当者にインタビューしましたが、行政が10年以上先の2030年の姿を描き計画を立てることはなかなか困難とのことでした。選挙で選ばれる首長の任期が4年であることから、4年間の実施計画を策定することが多く、4年を超える総合計画は自治体職員の立場からは作りづらいのが現状です。長期間の総合計画を策定する場合は、理念的なものになりがちであるため、国が定めた「地方創生SDGsローカル指標」についても、2030年までの指標はなかなか使いにくいとの声が多くありました。SDGsの特徴の一つは、2030年の未来の姿を描いて、その望ましい未来像から逆算し現在を考えるバックキャスティング思考ですが、どちらかというと現状の課題解決から積み上げる思考パターンが多い行政にとっては、最も苦手とする思考であると言えます。

滋賀県が高校生ら若者や現場に近い人たちをメンバーに、2030年を目標年度とした基本構想を策定していますが、SDGsの取り組みにおける「若者の参加」は重要なポイントであると考えます。SDGsの取り組みを始めた自治体や企業は増えてきていますが、計画策定や政策決定の場に次世代を担う若者の意志や考えが反映されていることはほとんどありません。若者の考えが確実に政策へ反映されることと、若者側の積極的な参加の意思が合致すれば、SDGsが一過性でなく持続可能なものになるのではないでしょうか(「SDGs白書2019」、pp.91〜95)。持続可能な地域をつくるためには、行政の発想を超えた若者の新しい発想が求められていると考えます。

SDGsの取り組みは2016〜2030年までの期間を考えると、スタートしたばかりと言えます。SDGsにおける都道府県の役割をテーマに考察を行いましたが、日本において先進事例は少ない一方、具体的な活動はこれからといったものが多く、今後の取り組みが期待されます。世界各国が持続可能な社会という共通の目的に向かって歩むことは、非常に意義のあることです。その主役は、SDGsの達成期限である2030年に20代後半から50歳を迎え、社会で中心的な役割を果たすミレニアル世代です。このミレニアル世代がSDGsと真剣に向き合い、参加し、2030年以降の「ポストSDGs」を担う覚悟で行動を起こすことができれば大きな動きに繋がっていくと考えます。筆者はミレニアル世代より少し上の世代ですが、ミレニアル世代が自分のこととして参加できる仕組みづくりに取り組んでいきます。また、自治体議員として、これから重要となる広域自治体としての都道府県の役割を果たしていきます。

【参考文献】慶應義塾大SFC研究所×SDG・ラボ(2019)「SDGs白書2019」(インプレスR&D)  

おわり


プロフィール
稲垣昭義(いながき・あきよし)
三重県議会議員
1972年三重県四日市市生まれ。県立四日市高校、立教大法学部、明治大大学院ガバナンス研究科卒。2003年三重県議会議員選挙初当選、現在5期目。現在、三重県議会最大会派新政みえ代表

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