公民連携時代の指定管理者制度再考(3)

公民連携時代の指定管理者制度再考
新たな価値形成につながる公園管理の方法論へ

株式会社Public dots & Company PdC エバンジェリスト
SOWING WORKS 代表
元国土交通省 都市局 公園緑地・景観課長
町田 誠

2020/10/20 公民連携時代の指定管理者制度再考(1)
2020/10/22 公民連携時代の指定管理者制度再考(2)
2020/10/27 公民連携時代の指定管理者制度再考(3)
2020/10/29 公民連携時代の指定管理者制度再考(4)
2020/11/03 公民連携時代の指定管理者制度再考(5)
2020/11/05 公民連携時代の指定管理者制度再考(6)


2003年地方自治法改正で制度化された「指定管理者制度」をベースとして、その創造的な運用の普及によって公園の積極的な利活用を促し、少しでも多くの社会的効用・役割を発揮させ、都市生活者の豊かな生活時間に供される公園の姿を実現するための方法論について、前回に引き続き述べていきたい。

指定管理者制度導入の振り返り

少子高齢化等を背景にした厳しい財政状況の見通しから、これまでに整備してきた多くの公共施設の老朽化への対応を積極的に進めるため、2013年に閣議決定された「日本再興戦略─JAPAN is BACK─」の中に、「国、自治体レベルの全分野にわたるインフラ長寿命化計画(行動計画)を策定する」ことが盛り込まれ、「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる骨太の方針には、「インフラの老朽化が急速に進展する中、『新しく造ること』から『賢く使うこと』への重点化が課題である」という文言が明記された。翌2014年には「公共施設等総合管理計画」の策定が、各地方公共団体に対して総務省から要請されている。この中には、PPP(官民連携)・PFI(民間資金活用による社会資本整備)の利用を含めて、将来的なまちづくりの視点から検討を行う必要性が示され、以降、地方公共団体においては同計画が策定され、切実な財政状況を背景にした施設の除却を伴う統廃合も含めて、公共施設管理の合理化が進められてきている。

一方、指定管理者制度は遡ることさらに10年、2003年の地方自治法改正で制度化されている。それまで、地方公共団体の出資法人だけに許されていた「公の施設」の管理について、広く民間の団体に行わせることを可能にした制度である。施設の管理に係る地方公共団体の負担を軽減するこの制度は、一般的には、利用者ニーズへの対応によるサービス向上、経費の節減などの効果があるといわれている。

総務省の調査「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果(2019〈令和元〉年5月17日公表)」によれば、指定管理者制度に付されている公の施設の数は、全国で7万6268施設、うち都道府県施設のみ公の施設全数の掲載があり、全1万1492施設中6847施設が指定管理で、導入率は約60%となっていることが分かる。これに比べ、市区町村が管理するすべての施設の数は断然多いので、導入率は相当低くなるはずだ。ちなみに都市公園の場合の導入率は12%程度。

指定管理者制度全体を見た場合、導入施設数は年々増えているという状況ではない。総務省の3年置きの調査でも、直近3年間では520施設(約0・7%)の減である。こうした頭打ちとも言える制度の導入状況を見ても、指定管理者制度の運用によって、公共施設の効用発揮が図られるようになるのか疑問に感じる人の方が圧倒的に多いと思うが、どのような運用を行えば、管理の効率化と質の向上、利用の活性化が図れるか、その方法を述べる前に、なぜ指定管理者制度の導入が進まないのかということも含めて、公共施設の管理に係る仕事の本質的な特性・特質について、公共事業におけるアウトソーシング(外部委託)の歴史という観点から考察したい。

公共の仕事のアウトソーシングという観点から見た「管理」という仕事

公共事業の整備から管理に至るまでの地方公共団体における業務は、時代によって順次外部化されてきている。外部化の理由は、社会基盤の整備のスピードが著しく高まった時代(高度経済成長時代)、公共団体の限られた組織・人員で業務をこなす上でアウトソーシングが不可避だったということに他ならない。昭和20年代ごろまでのいわゆる直営工事時代では、作業員を公共団体が雇用し、自らの重機と購入した資材で工事を行い、測量・調査・計画・設計の業務もインハウス(公共団体内)で行っていた。戦後しばらくして、公共工事の大型化や工事量の増大を受けて、工事外注が行われるようになる。建設業法ができたのが1949年。それでもなお、測量・調査・計画・設計の多くは役所で行われていたが、昭和40年前後からこれらの業務のアウトソーシングが本格化していく。1964年には、建設コンサルタント登録規程が当時の建設省により告示された。こうした過程を経て、「調査」「測量」「計画」「設計」「工事」の各段階を、「発注」と「納品」「引き渡し」の繰り返しの作業によって完成させるシステムが出来上がり、ものすごいスピードで社会資本が形成されるようになった。

さて、最後まで「直営」、インハウスに残ったのは「管理」という業務である。整備の過程は公共事業の種別にかかわらず外部化の流れが共通しているように思うが、「管理」に限っては施設の性格によって必要となる管理行為の事情が大変違ってくるので、ここからは本題である公園管理を例に述べていこうと思う。

公園管理は、植物管理、清掃、建物・工作物管理など、外形的に公園を維持保全する維持管理作業と、利用者に係る利用(者)管理(利用サービス管理)等の大きく二つに分かれる。道路や河川と比べると、圧倒的に利用(者)管理のウエートが大きい。そして、外形的な施設等の維持・保全に関する作業の類いは、整備工事と同様に外注されることが増えていくが、利用者に係る管理は最後まで直営という形態が残ってきた。

昭和50年代に入ると、総合的な管理の外部化─業務委託─が、いわゆる外郭団体に出されるケースが出始め、公園管理業務委託のスタイルが誕生したが、この段階では委託契約による管理作業の単純外部化にとどまっており、2003年の指定管理者制度により、ようやく本格的な管理者権能の外部化がなされるようになったのである。指定管理者制度の導入は地方公共団体により状況が異なるものの、まずは外郭団体に、次いで民間企業やNPO法人等へという傾向にある。

全体の流れとして、直営管理から外郭団体へ、民間企業・NPO法人へとウエートが移ってきているといってよい。こうした流れは、公園管理における官民のパートナーシップ形成、公民連携という観点からも無視できない大きな流れである。公園の管理を民間のセクターが行うことは、サービスの向上、社会資本の効用発揮という意味で大きな可能性を発生させる。

第4回につづく


プロフィール
町田 誠(まちだ・まこと)町田誠氏プロフィール写真

1982年旧建設省。旧国土庁、国土交通省等勤務の他、国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、全国都市緑化フェアTOKYO GREEN 2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に従事。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。

スポンサーエリア
おすすめの記事