公民連携時代の指定管理者制度再考(5)

公民連携時代の指定管理者制度再考
パッケージ化ですべての公園を一括指定管理に

株式会社Public dots & Company PdC エバンジェリスト
SOWING WORKS 代表
元国土交通省 都市局 公園緑地・景観課長
町田 誠

2020/10/20 公民連携時代の指定管理者制度再考(1)
2020/10/22 公民連携時代の指定管理者制度再考(2)
2020/10/27 公民連携時代の指定管理者制度再考(3)
2020/10/29 公民連携時代の指定管理者制度再考(4)
2020/11/03 公民連携時代の指定管理者制度再考(5)
2020/11/05 公民連携時代の指定管理者制度再考(6)


管理予算の増額は困難、組織も削減。厳しい現実だからこそ、限られたリソースを少しでも多く現場に充てながら、収益も上げて、豊かな市民生活の基盤としての公園の効用発揮を図る。「居心地が良く歩きたくなるまち」ウオーカブルシティーを実現させるためにも、全国10万カ所の小さな公園たちに新しい息を吹き込むことが必要だ。これからの公園管理手法のアウトラインを示したい。

公園管理の現場の実態

全国の公園の現場からは、管理に纏わる切実な声が聞こえてくる。地方公共団体側からも、ユーザー側からも、そして指定管理者からも、一様に「悩み」であることが多い。

地方公共団体からは、公園管理に充てる予算が確保できない、公園が市民1人当たり100平方㍍もあって、もうどうしてよいか分からない、苦情とクレーム対応が仕事の85%を占めている、など。ユーザーからは、公園で何かしようと思っても認めてもらえない(法律や条例で禁止されていると言われる)、禁止看板ばかりで何をしてよいか分からない。一方、速く走る自転車(人たち)が怖い、草が伸び放題、周辺住民からは子どもの声がうるさい、落ち葉や枝は困るが目隠しの木は必要、など。指定管理者からは、イベントを企画しても不許可になる、管理費が切られる、書類ばかり求められて労力が割かれる、やる気のある人材が辞めてしまうなど。

前回(公民連携時代の指定管理者制度再考(4))、管理費が限界状態にある所が多いと述べたが、これらの悩みは潤沢な予算があれば解決できる問題ばかりではない。もちろん、少しでも多くの管理費が現場に充てられるように努力することには意味があるが、もっと構造的(利用者・住民の意識など社会の慣習に関わること)な対応を要する課題も多い。公園がよく使われ、まちづくりの中で効用を発揮するためには、管理費を積めば済むということではなく、こうした構造的な課題を解決に導く可能性のある管理形態が求められる。

また、小さな公園が多いことも管理上の大きな課題だ。一番小さなカテゴリーである街区公園は約8万8000カ所、街区公園に類似する児童遊園や条例で管理している公園の数も1万2000カ所程度(国土交通省データ)あるので、全国で10万カ所の小さな公園が存在していることになる。ちょっと大きいと感じるような1㌶(100㍍四方)程度以上の公園は、大ざっぱに言えば1万カ所程度。これらの公園の多くは市街地の郊外部や自然豊かな立地にあることが多いので、街中に立地しているのは圧倒的に小さな公園なのである。

飲食や物販などで収益を上げたり、キッチンカーや移動販売車を入れたマルシェやミニコンサートなどの催しで賑わいを形成している公園は、大まかに言って1㌶以上、中規模以上の都市公園である。2017年に制度化されたPark─PFI制度(公募設置管理制度)により収益施設の設置が始まっている47公園(2020年7月現在)のうち、1㌶に満たないのはわずか2公園のみで、街区公園などがまちづくりの中でさまざまなアクティビティー(活動)の場となっているケースは稀だ。

子どもの安全な遊び場として整備が進められてきた、児童公園の名称が街区公園に改められたのは1993年。少子化等の中で児童の利用のみならず、高齢者をはじめとする居住者全体の利用を目的とした公園とするための名称変更であったが、現実的に年齢を問わない多くの利用を誘発するような新しい管理手法がなされてきたかといえば、大きな政策転換は見られなかった。整備を進めるための配置論という側面が強かったからである。しかし今、ウオーカブルなまちづくりを進める中で、小さな公園をどう大きく活かすかという視点が必要で、それを可能にする管理制度運用のパッケージが必要な時が今まさに訪れていると考える。

Park-PFIが明らかにしたもの(求められる市民生活サービス公民連携の視点)

都市公園法前の実態としての公園は、明治時代から料亭や茶店、旅館等の民間施設と共に存在して、公園の土地の使用料が管理や整備の原資となっていた。しかし、詳述には紙面が足りないが、公民の混在した状態が好ましくないという社会通念が一般化し、公園の中に存在したこれらの施設を排除していくことが公園管理の適正化であるという風潮の下で、民間施設は減少していった。そして、新たな「民」の施設を積極的に設置することは、ほとんどないまま長い時間が過ぎた。

1999年にいわゆるPFI法ができ、大規模で高度なサービスを行う施設が民間資本によって整備されるようになったが、かなり例外的な存在で、現時点でも20数例を数えるにとどまっている。Park─PFI制度は、公園法の中でクローズした簡易な手続きと、小規模な施設(カフェ1軒など)の設置に使いやすいこともあって、制度施行から3年間ですでに約50例が動き、100例以上が準備段階にあり、かなり早いペースで導入が進んでいる。時代が公民連携、公有財産活用に流れていることもあり、公園という空間に合った潜在的な需要が顕在化したと素直にみるべきだろう。これらの例を見てみると、外形的には、単独のカフェ・レストラン等を既存の公園の中に設置したものから、公園のかなりのエリアをリニューアルしたアウトレットモールのようなもの、新規の公園の整備に合わせての導入、キャンプ場やアスレチック施設のアウトドア系、ホテルや手ぶらでキャンプを楽しめるグランピング等の宿泊施設など、実にさまざまで、制度運用の幅が大きいこともよく分かる。これまで、慣習的に「ダメ」といわれていたところに風穴が開いて、「できる」ことが実例としてどんどん生まれ、連鎖的に増えている。

一般的な利用者にしてみれば、これまで子どもを連れて公園の遊具で遊ぶ時期はあったとしても、公園の中での時間消費型サービスの享受自体が新鮮で、環境の良い中で過ごす新たな生活時間を手に入れたということになる。公園に対するこうした需要、要望は、事例が紹介されるほど増えていく。

第6回につづく


プロフィール
町田 誠(まちだ・まこと)町田誠氏プロフィール写真

1982年旧建設省。旧国土庁、国土交通省等勤務の他、国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、全国都市緑化フェアTOKYO GREEN 2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に従事。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。

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