公民連携時代の指定管理者制度再考(2)

公民連携時代の指定管理者制度再考
公園からのまちづくり

株式会社Public dots & Company PdC エバンジェリスト
SOWING WORKS 代表
元国土交通省 都市局 公園緑地・景観課長
町田 誠

2020/10/20 公民連携時代の指定管理者制度再考(1)
2020/10/22 公民連携時代の指定管理者制度再考(2)
2020/10/27 公民連携時代の指定管理者制度再考(3)
2020/10/29 公民連携時代の指定管理者制度再考(4)
2020/11/03 公民連携時代の指定管理者制度再考(5)
2020/11/05 公民連携時代の指定管理者制度再考(6)


公民連携を促進したPark-PFI制度とは

さて、このような空間特性を持つ公園を、豊かな都市生活時間を創出するための、そして、「居心地が良く歩きたくなるまち」ウオーカブルシティー実現の社会装置にするための管理方法をこれから提案していきたい。

先に述べた13万㌶とは都市公園法に基づく都市公園の総面積であって、児童福祉法に基づく児童遊園などは入らない。都市公園に類似するものも含む、いわゆる公園等全体のデータとしては、地方財政白書(総務省令和2年版)に15万7000㌶という数字がある。13万㌶、15万㌶という面積がどのくらいかということをリアルに感じてもらうために日本地図に落としてみると、「沖縄本島」や「淡路島+琵琶湖」「東京23区+川崎市+横浜市」「伊豆半島」などを上回る面積となっている。沖縄県那覇市の国際通りや北部のやんばるの森などに立って、足元の大地、沖縄本島全体の面積をすべて税金で将来にわたって管理しなければならない、と考えていただければ、その大変さをリアリティーを持って感じ取ってもらえると思う。こうした都市公園の管理に費やされている費用は、全国合計値で年間約3800億円程度。全国の数値であるから大きく感じられて当然だが、この数値はここ20年程度ほとんど変わっていない。その間も公園はどんどん整備されて面積は増えている。つまり、平方メートル当たりの管理費がどんどん下がってきているのだ。現在、全国平均値で平方メートル当たり300円を切る。2000平方㍍程度の大きな街区公園(昔の児童公園)一つの年間の管理費が60万円ということになる。家族を養うため600万円の収入を得るには、大きな街区公園10カ所を、1人で管理しなければならないことになる。しかし現実はもっと厳しい。300円は全公園の平均値であり、街区公園だけを取り出せば、ほぼ3分の1といったところだ。生計を立てるために1人で管理しなければならない大きな街区公園は、30カ所という数になってしまう。公園の管理費がどれほど切り詰められてきているか理解していただけると思う。

公園管理をめぐるこうした厳しい現実と、都市空間の中でもっと生活の豊かさに役立つ公園の姿の模索。こうしたことが、公園における公民連携の先進事例を生み出してきた。ここ10年以内の動きだ。2017年の都市公園法等の改正を待たずして、もともとの設置管理許可制度を使って、これらの事例は生まれた。大阪で言えば天王寺公園の「てんしば」、東京で言えば「南池袋公園」。もちろん、福岡にも名古屋にも先進的な好例はある。そして法改正を経て、パッケージ化された制度の適用によって全国で次から次へと公園の公民連携事例が生まれつつある。パッケージ化された制度の意味とはそういうことなのだ。それが無ければ、すべてが手探りによって、一つ一つの事業を成立させることが必要となる。もとより公共の仕事は「中立」「公平」「公正」「透明」であることが求められる。普通の公務員なら、大きな重圧としてそれを受け止めるので、時として公民連携プロジェクトは頓挫してしまうこともある。

公園に限らず、スター選手のように語られる成功した公民連携プロジェクトたちは、民間セクター側で動き回った優れた人材と、公共セクター側で走り回った人材の努力とリスク負担、リスクヘッジの上に成立している。それらはいわば公民連携のオートクチュールの世界なのだ。普通の公務員にとっては、あまりにもすご過ぎて、近寄り難さすら感じるというのが本音ではないだろうか。

Park-PFI制度は、都市公園法等の改正によるパッケージ化された制度であって、法令を理解し、ガイドラインに従えば公園の公民連携事業例を創り出せる仕組みだ。だからこそ、これだけ多くの適用、運用が進みつつあるのである。もちろん、都市の状況や公園の立地環境によって、Park-PFI制度による事業はさまざまではあるが、これらはいわば、公園の公民連携事業のイージーオーダーなのである。

 

天王寺公園てんしば

大阪 天王寺公園てんしば(2015年リニューアル)

11万カ所の持続可能な管理を目指して

公園の世界の公民連携は、Park-PFI制度で広い門が開かれた。ハードルは高くない。しかし一方で、収益を上げられる公園などそれほどたくさんない、都市や立地環境の恵まれた所でしかできないという声も聞く。それもまた事実だ。今のところ100や200事例は動きつつあるが、都市公園の数は11万カ所だ。Park-PFI制度も十分活用してもらいたいが、これは、アドバンテージのある公園に公民連携を導入し、一つ一つの公園(しかも優秀な公園)を卒業させる(自律的な公園経営を成立させる)仕組みだとも言える。管理費全体が抑制を受ける中で、11万カ所の公園の持続可能な管理、経営的管理から発生する利益をより広い範囲で吸収し、少しでも多くの社会的効用・役割を発揮させ、公園の積極的な利活用を促し、都市生活者の豊かな生活時間に供される公園の姿を実現していかなければならない。

エリア価値向上につながる全ての公園の持続可能な管理のスタイル、方法論をこれから提案していこうと思う。オートクチュールにチャレンジすることの意味や成果は大きいが、難しい。こうした現実の中で、このプロジェクトが目指すものは、2003年の地方自治法改正で制度化された「指定管理者制度」をベースとして、その創造的な運用の普及を図るという一見地味に見えるプロジェクトであり、公園政策の第一線にいた公務員OBたちで組織する「経営的公園管理研究会」からの社会への提案である。

豊かな都市生活、歩いて楽しいウオーカブルシティー実現の原動力となる公園管理の具体的手法「指定管理者制度のカスタマイズ」を次回以降紹介していきたい。

第3回につづく


プロフィール
町田 誠(まちだ・まこと)町田誠氏プロフィール写真

1982年旧建設省。旧国土庁、国土交通省等勤務の他、国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、全国都市緑化フェアTOKYO GREEN 2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に従事。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。

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