立場を超えた連携で相乗効果を生む~ 高橋純一・群馬県千代田町長インタビュー(4)~

群馬県千代田町長・高橋純一
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

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庁内で「オール千代田」の意識醸成

小田 ふるさと納税の強化に向けた先行投資や他自治体を巻き込んだPRなど、高橋町長の的を射た判断はどのような基準の下で行っているのでしょうか?

高橋町長 すべての判断が成功につながるとは限りません。時には失敗することもあります。判断基準になっているのは、強いて言えば今まで培ってきた勘でしょうか。周りの方々の助けがあってこそ判断できることも多いです。

 

小田 そんな高橋町長の姿に触発される職員も多いのではないでしょうか?

高橋町長 私の座右の銘は山本五十六の「やってみせ 言って聞かせてさせてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」です。トップが率先して行動する姿を見せれば、部下にも動きが出てくるでしょう。ですから課局長などの管理職にも、この名言をよく伝えるようにしています。同時に「万一、事業が失敗したら私が全責任を取る」とも伝えています。すると職員は町長に迷惑を掛けられないと思うのか、慎重になることもあるのですが、結果を出そうと試行錯誤してくれます。

私は前例にない新たな発想も含め、職員には動いていってほしいと思っています。その点、ふるさと納税は良い方向に向かったと感じています。

 

小田 高橋町長からの働き掛けで、職員の意識が変わったタイミングはありましたか?

高橋町長 就任して2年目の頃に、町の広報紙に職員の集合写真を載せました。庁舎前の芝生広場に集まり、皆の決意を表現するため、左胸に拳を当てるポーズで撮影したのです。「意識改革。」と大きなキャッチコピーを添えて掲載しました。

そのとき、私は職員に「『出るくいは打たれる』と恐れてはいけない。一人ひとりが責任を持ち、自由な発想を持ちながら仕事に取り組んでいこう。与えられた仕事をこなすだけでなく、課局を飛び越えて協力していこう」と伝えました。そこから職員の行動が変わっていったように思います。「オール千代田」の意識で仕事に取り組むようになっていきました。

 

「広報ちよだ」2017年8月号に掲載された職員の集合写真(出典:千代田市)

 

小田 職員の皆さんでそのような集合写真を撮る事例は初めて耳にしました。普段のマネジメントのみならず、目に見える形でモチベーションアップに取り組んだのですね。その他に職員とのコミュニケーションで意識していることはありますか?

高橋町長 やはり、日ごろのコミュニケーションを丁寧に行うことです。庁内には若手からベテランまで、さまざまな年代の職員がいますが、どの世代の話にも耳を傾けるようにしています。特に若手職員とは定期的に意見交換会を開き、彼らの考えや価値観をよく聞くようにしています。個人的な相談に乗ることもありますし、冗談交じりの会話をすることもあります。

 

小田 きっと優しい雰囲気の中で会話が行われているのでしょうね。

高橋町長 普段の関わり方によって、いざ伝えるべきタイミングが来たときのメッセージの伝わり方が変わると思っています。日ごろから、どれだけコミュニケーションを取っているかという点は、組織の一体感を保つためには重要です。

 

方向性を決め、ワンチームで取り組む

小田 最後に千代田町の魅力について、お話しいただけますか?

高橋町長 千代田町は東京から60㌔圏内にあります。最寄りの東武線・館林駅までは車で20分、新幹線の熊谷駅には車で40分ほどで行けます。高速道路でしたら、最寄りの東北自動車道・館林インターチェンジまで車で30分です。都心へのアクセスに恵まれた土地だと思います。のどかな田園風景が広がっており、住むには最高の場所です。

 

小田 今後は利根川新橋の建設が進むことから、町を訪れる関係人口が増えるかもしれませんね。

高橋町長 ふるさと納税で体験型の返礼品を開発し、町を訪れる人を増やしたいと考えています。幸いなことに、これまでも関係人口は増えてきています。町長就任の翌年から実施している「ちよだ利根川おもてなしマラソン」の影響です。これは近隣の大学や専門学校、高校、各種の団体などと協力しながら運営しています。行政ができることは限られていますので、官民連携で実施しているマラソン大会です。

 

小田 これも、立場の違う者同士をつなぐ高橋町長の「調整力」が感じられるエピソードですね。

高橋町長 違う組織の者同士でも、方向性を決め、ワンチームで取り組めば目的は達成できると思います。そのためにはまずお声掛けして、連携を深められないか、対話を重ねることです。

 

【編集後記】

「常に関わる全員のことを考え、必要なコミュニケーションを欠かさず行う」

高橋町長のインタビューからは、このような姿勢がひしひしと伝わってきました。「普段の関わり方によって、いざ伝えるべきタイミングが来たときのメッセージの伝わり方が変わる」という言葉には、はっとさせられるものがあります。

個人も組織も自前主義的な発想に陥ると、普段のコミュニケーションやつながりをおろそかにしがちです。高橋町長は施策を通じ、立場を超えた人のつながりの形成と、そこから生まれるチームの相乗力をマネジメントされているのだと感じました。

 

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2024年4月15日号

 


【プロフィール】

高橋 純一(たかはし・じゅんいち)

1960年生まれ。群馬県千代田村(現千代田町)出身。2008~12年千代田町議。16年千代田町長に就任し、現在3期目。座右の銘は「やってみせ 言って聞かせてさせてみて 誉めてやらねば人は動かじ」。

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