新型コロナウイルスで地方自治体はどう変わるか(上)

磐田市議会議員
草地博昭

2020/6/22 新型コロナウイルスで地方自治体はどう変わるか(上)
2020/6/24 新型コロナウイルスで地方自治体はどう変わるか(中)
2020/6/26 新型コロナウイルスで地方自治体はどう変わるか(下)


私の住む静岡県磐田市では、4月7日に緊急事態宣言が発令された東京、大阪、福岡など7都府県から遅れて、4月16日に発令され、そこから5月14日の宣言解除までの1カ月間、日常の劇的な環境の変化を受け、慌ただしく対応に迫られる日々でした。

この原稿は5月17日に書いていますので、6月に発行されるこの記事を読んでいる皆さんからすると、ずいぶん昔の対応のことを書いているように思われるでしょう。事実、緊急事態宣言下のGW最後の週末と、解除後の週末の雰囲気はずいぶん違うと感じたのは私だけではないと思います。まず先にこの約1カ月間を振り返り、私の住む自治体が1週間ごとに、どのような対応をしてきたのか整理したいと思います。

4月の1週目に、小中学校の始業・休業への対応、2週目に7都府県の緊急事態宣言、それが3週目に全国へ拡大され静岡県も対象となり、4週目に県の休業要請に伴う市独自の休業要請や協力金の取り扱いについての協議と、4月の変化は毎週怒涛のようでした。5月1日には磐田市議会5月臨時会を開き、子育て世帯への臨時特別給付金(児童手当の1万円上乗せ)の支給や、全国民への10万円の特別定額給付金などの予算を可決しました。人口約17万人の磐田市の2020年度当初予算は669億7000万円ですが、この特別定額給付金は170億円であり、補正予算を加えた予算の総額は約840億円となります。全国のほぼ全ての自治体が、この5月中には過去最高の予算額を組んで事務作業をし、併せて新型コロナウイルスの予防や感染そのものへの対応をしています。全国の自治体職員たちの業務量の増加や、さまざまな市民からの意見、要望などによるメンタル(精神)への影響も心配です。全国の自治体職員のこのような対応と苦労に対し、自治体に携わる一人として心からのエールを送ります。

今回は、この新型コロナウイルスの影響で、地方自治体で起こっていることと、そこからどう自治体が変わっていくのか、事実と可能性を探っていきます。

議会が開けなくなるかもしれない

まず、私は地方自治体議会の議員ですので、議会の対応から話を進めていきます。今回、まず最も心配したのは、議員や職員で感染者が出たり、地域全体がロックダウン(都市封鎖)されたりして、議会が開けなくなったらどうなるのだろうということです。結果として、5月臨時会を開くことができましたので、心配は杞憂に終わりましたが、私は当時議会運営委員長でしたので、その対応は頭を悩ませました。

議会運営委員会とは、議会運営が円滑に行われるよう議事日程など運営について協議する機関です。そして、通常でしたら会議規則や申し合わせというルールに基づき、議会日程等を決めるわけですが、今回は会議そのものが参集できず開けない可能性がありましたので、そこで考えた手段が「オンライン化」です。磐田市議会では、昨年度より正副議長と議会運営委員にのみタブレットが配布され、25人中11人の議員だけで試験運用をしている最中です。全員にタブレットはありませんから、まず議会の運営を決める、議会運営委員会のみはオンライン化できるかどうか、そしてその後、議会そのものも適応できるかを検討しました。

この検討は4月中旬に進めたものですが、検討した課題を参考として挙げておきます。まず、私たちは法に基づき「地方公共団体の長から招集され」議会を開いており、招集は「議場」にされることになっていますから、招集される場所の考え方を整理しなくてはならないこと。それから議員定数の半数が出席しなければ会議を開くことはできないことになっていますから、「出席」の考え方の整理をしなくてはならないこと。またその他にも、「議会公開の原則」「議事録」「規律」など課題も多くあり、やはり議会運営委員会も、そして本会議もオンライン化は、法的に難しいだろうということになりました。

実はその後、4月30日に総務省からの通知で、地方議会の委員会をオンラインで開くことが可能になりました。これだけでもこの1カ月で、大きく環境が変化した例として受け止めていただけるのではと思います。

ちなみに磐田市議会では、解釈として難しいとはいえ、本当に議員に感染者が出た場合には、超法規的手段もあり得るだろうから試験だけでもやっておこうと「議会運営委員会打ち合わせ」という、法に基づかない打ち合わせをオンラインで試験的に行ってみました。そこではモニターの前にいれば出席と見なすのか、誰か横にいて助言することもあり得るのではないか、通信が不安定になったらどう対応するのか、また、当局からの説明方法など、できることとできないことを含めて課題は見えてきました。

しかし、やってみて新たな可能性として感じたこともあります。育児休業中の議員の議会への出席や、病気のとき、災害時など、オンラインにはさまざまなシチュエーションが考えられます。今後さらに進むであろうオンライン議会をどうするのかの議論が、議会の在り方にまで幅を広げて進められる予感がしています。そこでは、より時代と市民に即した姿になるよう、スピーディーに自らの街の議会の在り方を考えていくことが私たちには求められています。

「中」に続く


プロフィール
草地博昭(くさち・ひろあき)
磐田市議会議員
1981年生まれ。2002年国立豊田高専卒、東海旅客鉄道(JR東海)入社。同社建設工事部、NPO法人磐田市体育協会を経て2013年より静岡県磐田市議会議員(2期目)。2019年度は議会運営委員長を務める。

スポンサーエリア
おすすめの記事