政と民の間にある第三の選択肢を(3)

東京都議会議員
奥沢高広

2020/6/15 政と民の間にある第三の選択肢を(1)
2020/6/17 政と民の間にある第三の選択肢を(2)
2020/6/19 政と民の間にある第三の選択肢を(3)

若者が直接的に政治参画していく道しるべを示していく

日本財団の調査では、諸外国と比べて日本の若者は「国や社会を変えられると考える」「社会課題について積極的に話している」割合が圧倒的に少ないことが分かります。若者が社会を変える成功体験を生み出していくことは、日本の明るい未来を創る上で欠かせません(図表)。

出典:日本財団「18歳意識調査」:テーマ「国や社会に対する意識」より抜粋

(図表)出典:日本財団「18歳意識調査」:テーマ「国や社会に対する意識」より抜粋

そんなとき、小学生による要望活動がまちを動かしたニュースを見ました。簡潔にいうと、公園でのボール遊びを禁止された小学生が、さまざまな人と話し合い、調査し、区議会に陳情を提出し、要望を実現したというものです。(詳しくは、「僕らがちんじょうしたわけ(NHK首都圏)」をご覧ください(※)。

この中で、何が大事なのかといえば、

  • 子ども自身が社会は変えられるという成功体験を得たこと
  • 政治や行政が子どもの意見を正面から受け止めたこと

──だと思います。そして、この要望活動を陰で支えた議員がいたことも重要です。若者の代弁者ではなく、若者が直接的に政治に参画していく道しるべを示すこと、それが新しい政治家の役割ではないかと考えています。

プレイベントのリポートを読んでみて、なるほど、自分の伝えたかったことはこれだったのかと気付いたことがあります。

「日本の若者の多くが未来に希望を持てなかったり、将来を悲観してしまったりしていることがとても悲しいです。でも社会は変えられるし、みんなはもっと幸せになれるはず」

政治は人々を幸せにするためにある、そのツールであり、その結果だけでなく、プロセスにも、その力があると思っています。

政治に必要なのは、この真っすぐな瞳に違いない!

しかし、船出は大変厳しいものに。というのも新型コロナウイルス感染症の影響で、外出自粛の要請が出たからです。顔を合わせた上で築くのと同じ信頼関係をオンラインでつくるのには、難しさを感じています。初めに参加者全員で簡単な自己紹介をして、私から大学の野球部時代の体験や議員になってからの話などを通じて、チームビルディングの重要性について話すところからスタートしました。

その後、東京都の新型コロナウイルス感染症対策について、意見を出し合いました。

「ライブ配信を見ると、チャンネル登録者が7万人しかいません。どれだけ良いことを言っても伝わらなければ意味がないです」

「私の学校には、東京、千葉、茨城から通う人がいますが、その意識には差があります。東京だけ自粛しても意味がありません」

「地域コミュニティーの維持も大切で、高齢者にとっては死活問題です。どういう形であれば会っても平気ですか?」

「文句を言いたいだけの人が電話相談をすると、本当に必要な人に支援が届きません」

どれもが、本質的だと思いました。ここで、自分の大きな間違いに気付きます。

「若者に何かを教えたり導いたりする必要はない。私たちの役割は、適切な場所と機会を用意するだけ」

──だと率直に感じました。

オンラインで、学びに対する姿勢がはっきり見て取れたことは意外でした。メモを取る人、携帯をいじっている人、課題に真面目に取り組む人、いつも以上に主体性が問われます。

そのような意味で、画面を通じてこちらを見詰める真っすぐな瞳はうれしいものでした。

「この瞳を信じて、行動する背中を押すだけでいい。世界を変えるのは、この若者たちなのだ」と、心から思える瞬間でした。

今後は、参加者同士のコミュニケーションを充実させ、この集団をチームに変えていく工夫をしていくつもりです。早くオフラインで会いたいという声も出ていますが、まずはウェブ飲み会でも開催してみようかなと考えています。

政治家3・0への挑戦

東京まちづくりゼミは、これからが本番です。

この成果はいずれお伝えしますが、最後に、これからの時代の政治家像についてお伝えします。政治家のことを「先生」と呼ぶ人も多く、指導的立場にある人という意味で使っているのだと思いますが、東京まちづくりゼミでは、参加者と「フラット」で対等な関係を築き、さまざまな主体をつなぐ「ハブ」となる政治家を求めています。

政治家が接する情報は、身近な困りごとや規制緩和、まちづくりなど、課題のオンパレードです。解決策は必ずしも政治や行政が提示できるものばかりではなく、ビジネスの側面から取り組んだ方が早いものもあります。私たち政治家の課題との向き合い方を伝えることは、次世代がより豊かに生きる糧になると確信しています。

社会課題を中心に置いて、解決できる主体を繋いでいく、さらには、そこで得られたノウハウを後世に伝えていく、それが私の考える新しい政治家像「政治家3・0」です。この取り組みが、若者の課題解決能力を高めるとともに、政治の価値も変えていくことができれば、最高に幸せです。

※=https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20191217.html

(おわり)


プロフィール
奥沢高広(おくざわ・たかひろ)
東京都議会議員
1982年5月1日、栃木県佐野市生まれ。
慶応義塾大法学部政治学科卒・体育会野球部ヘッドコーチとして東京六大学リーグ戦優勝。三菱地所株式会社住宅事業部、学習塾・通信制サポート校運営、衆議院議員公設秘書を経て、2017年東京都議会議員選挙初当選。都議会会派「無所属 東京みらい」の幹事長を務める。また、合同会社Cross Point代表社員として、政治と民間の越境をテーマに東京まちづくりゼミやTokyo Cross Pointを運営。

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