【SDGs最前線(2)】調査手法がまだ確立されていないマイクロプラスチック

プラスチックごみが流出する経路や製品や量など、問題解決のための実態調査が必要です。

 

以前より、行政に実態調査を働き掛けてはいましたが、その調査手法は確立されていません。日本では、環境省が日本海周辺の海域での調査を行うにとどまっており、各地域で調査を行うとすれば、その調査手法の確立と標準化が必要となってきます。

そのため、議会から大上段に訴えても前に進めることはできないでしょうし、行政に訴えるだけではなく議会という立場を活かしてできることもあるのではないかと考えました。

そこで、まず先に議員として調査を行い、ある程度信頼できるデータを提示することができれば、今後の道筋もつくのではないかと考えました。前述のEBPMに基づく政策提言と言えるかもしれません。

川崎市において、プラスチックがどこから流出しているのか、また、流出している製品は何か、その用途は何かを絞り込むことを目的として、実態調査を行いました。本レポートは、201889月にかけて川崎市内の河川や港湾、計14カ所で実施したマイクロプラスチック等の浮遊状況調査とその結果について報告するものです。

マイクロプラスチックの調査手法


調査に当たっては、環境系ベンチャー企業である、ピリカに協力をお願いしました。ピリカでは、東京理科大学の二瓶泰雄教授(環境水理学、河川工学、数値流体力学)、片岡智哉助教(海岸工学、水工学)らのアドバイザリー協力の下、NOAA(米国海洋大気庁)が公開している調査手順書を参考に浮遊するマイクロプラスチックの調査を行う手法を開発していたためです。また、ピリカは、マイクロプラスチックの調査だけでなく、ポイ捨てごみの調査など社会課題の解決に取り組む若手エンジニアが立ち上げたベンチャー企業でもあることから、その活動を後押ししたいという意図もありました。

そのため、今回の調査内容および結果は、全てオープンデータとしてピリカが公表することについて同意しています。

ピリカでは、調査に河川や港湾、下水処理施設など、さまざまな場所で利用可能な(マイクロ)プラスチック浮遊量調査装置「アルバトロス」(特許出願中)を用います(図2)。これはバッテリー駆動のスクリューで水面付近の水をネットに取り込み、濾過して、浮遊マイクロプラスチックを採取する装置です。橋上または船上などから収集機を水中に沈め、3分間で濾し取った固形物を収集します(写真1−1、1ー2)。収集機のネットの網目は0.3㍉、3分間で510立方㍍の水を濾過し、固形物を採取します。

図2・収採取装置構造図(ピリカ社より提供)

写真1−1・調査の様子

写真1−2・調査の様子

ただし、これは水より比重の軽いプラスチックに絞った調査であり、ペットボトル繊維などは水より比重が重く海底に沈殿するため、この調査では採取できません。海底に沈殿するごみからマイクロプラスチックを分離し調査する手法は見つからず、本調査は浮遊するプラスチックごみだけを対象に実施しました。

 

調査地点

本調査は、川崎市内の河川および港湾14カ所で実施しました(表、図3)。海面調査は、川崎港の岸壁寄りの地点と岸から離れた海上で収集を行っています。海面調査に加え河川調査も含めたのは、陸上からの流出経路を特定するためであり、主な河川の本流、支流および上流、下流を調査地点に含めています。また下水道からの流出の可能性も考え、下水道処理場に繋がる上流、下流地点も調査に加えました。

図3・調査地点マップ

表・調査地点一覧


調査

本調査は、収集機を水中に沈めて、濾し取る方式のため、岸壁や橋上からの調査が可能です。河川調査、岸壁からの海洋調査には、特別な許可や申請は必要がないことを確認の上、順次実施していきました。海上調査に当たっては、川崎市港湾局に協力いただき、港湾局所有の巡視船(写真2)の船上から採取を行っております。

写真2:川崎市港湾局巡視船「つばめ」

写真3:収集機セッティング中の様子

 

一カ所当たりの採取は、セッティング(写真3)から作業完了まで最大2時間程度かかります。調査員の確保や降雨などで当日の作業が中止になることもあり、14カ所の現地調査だけでも、2週間程度必要でした。

写真4:抽出作業

このようにして採取したサンプルは、まず固形物の中からマイクロプラスチックのみを分離します。塩化ナトリウム溶液を用いて固形物を沈降分離し、目視での判断をしやすくした状態でプラスチックの可能性があると判断された固形物を手作業で抽出します。これは非常に根気と手間を要する作業です(写真4)。

その後、FT─IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた成分分析および、マイクロスコープを用いた外観の撮影や大きさの測定による分析を行います(写真5、6)。FT─IRを用いて読み取った固形物のスペクトルから成分を同定するプロセスは、東京工業大学の福原学准教授(分析化学)のアドバイスを受けて実施し、品質を担保しています。

今回はマイクロプラスチックの調査の内容について記載しましたが、このようにして調査をしたことで、意外な調査結果が浮かび上がってきました。次回はその調査結果についてレポートします。  

写真5:FT-IRを用いた成分分析の様子(ピリカ社より提供)

写真6:FT-IRを用いた成分分析の様子(ピリカ社より提供)

 

【SDGs最前線(1)】東京湾を漂うマイクロプラスチックはどこからやってくる?

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