都市公園法の改正で、都市公園を「不動産」に見立てた活用が一気に進もうとしている。財政が悪化する自治体にとってpark-PFIは大きな可能性を秘める。一方、この制度の導入は、市民とのコミュニケーションデザインが極めて需要になっていく。相模原市で起きた鹿沼公園の再整備計画は、この事例として非常に示唆に富んだプロジェクトだった。行政と市民の双方から巧みにクリエイティブを引き出した相模原市議会の五十嵐千代議員に、この2年の取り組みを聞いた。
(聞き手=Public dots & Company代表取締役 伊藤大貴)
東京郊外にある相模原市。駅から徒歩5分に立地して、交通公園があり、大きな池があって、そこには白鳥もいて、一方で敷地内には野球場もテニスコートもある鹿沼公園。この公園をpark-PFIを使ってエリアを活性化しつつ、その周辺にある老朽化した公共施設の複合化と財政負担を抑えて実現しようと「淵野辺駅南口周辺公共施設再整備・地域活性化基本計画(案))」が持ち上がったのが2017年。一見、良さそうな案にも聞こえます。
この話が出たときに大きな違和感を覚えたんです。違和感は内容以上に、「急に」、この話が浮上してきたことへの違和感。淵野辺駅周辺にある公共施設に老朽化の課題はあるものの、他と比べて特に緊急性が高いものではありません。それにも関わらず、鹿沼公園を候補地とした集約、複合化を進めるという話が議会で浮上しました。
それが2017年3月の議会です。淵野辺駅南口の再整備に関する議会サイドの質問に対して、「民間活力を生かした公共施設の集約、複合化」の検討に際し、建設地が鹿沼公園であることが既成事実化しているようなやり取りがありました。その時に、「あれ?」って。どこでそこまで議論されてきたのだろう?」と思って、庁議の議事録を調べたら、異例のスピード感で議論が進んでいたことが分かりました。
それで私は2017年6月から毎回、議会で鹿沼公園を取り上げました。その議会質問に対して、相模原市からは(1)12月に住民説明会を開催、(2)翌2018年3月に基本計画を策定、という流れが示されました。
この答弁を聞いて、私は「もっと市民の声を聞いて、計画をつくらないとダメじゃないの?」って言ったんです。だって、議員の私ですら、唐突に感じた話だったし、市民はもっと知らないわけです。しかも、鹿沼公園は沢山の人に愛されている公園だから。丁寧なプロセスが必要だよね、と思いました。
通常、議会答弁でスケジュールまで示されたら、なかなか、それがひっくり返ることはないと思います。
行政は3月までに声を聞きますとは言ったんですけど、でも、案ができるのが12月で、その前に議会に案を出すわけだから、実質1ヶ月程度で市民の声を聞くと言っているに等しくて、それは無理がありすぎます。本気で市民の声、聞くつもりないでしょ?って感じました。
その後、私の質問に関心をもってくれた新聞記者の方々も色々と取材を始めて。市民の中で特に声が上がったのは「交通公園部分を潰して、複合施設になるのは嫌だ」と言う声であることがわかりました。それが記事になったことで、より、市民の関心が高まりました。
私自身の一番最初のインパクトは「急で、かつ具体的」であることの違和感でしたが、議会質問を通じて、行政が想定している計画がより明らかになった時に、「公共施設を集約・複合化して公園内に建設し、現行の公共施設の跡地は民間への売却を中心に検討する」という案そのものも、長期的なまちづくりを考えるといい案とは思えませんでした。