「継承と挑戦」新たな風を吹き込む市政運営~山本知也・青森県むつ市長インタビュー(2)~ 

青森県むつ市長・山本知也
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事・小田理恵子

 

2025/04/23 「継承と挑戦」新たな風を吹き込む市政運営~山本知也・青森県むつ市長インタビュー(1)~

2025/04/24 「継承と挑戦」新たな風を吹き込む市政運営~山本知也・青森県むつ市長インタビュー(2)~

2025/04/30 前例を打破し、「日本一」にこだわる市政~山本知也・青森県むつ市長インタビュー(3)~

2025/05/01 前例を打破し、「日本一」にこだわる市政~山本知也・青森県むつ市長インタビュー(4)~

 

「宮下市政」の継承と新たな連携

小田 山本市長は、宮下前市長の秘書を務めた経験をお持ちです。前市政の政策とリーダーシップを、どのように継承・発展させようとお考えですか。

山本市長 私は宮下前市長のリーダーシップに大きく影響を受けてきました。いわば「宮下市政」とでも呼べるような、新しいものに挑戦し、スピード感を持って決断・実行していく市政運営のスタイルです。単に施策を引き継ぐのではなく、即決断・即実行を継承し、それをむつ市の新たな挑戦に生かしていこうと心掛けています。

 

小田 山本市長は、就任から8カ月という短い期間で数々の施策を実行されてきました。そのスピード感の秘訣は何でしょうか?

山本市長 「次々と新しいことに挑戦する」という前市長の姿勢を基盤としながら、市民が変化を実感できる施策の展開を心掛けています。例えば、「こどもまんなか宣言(注3)」に基づくおむつの無償化や学校へのエアコン設置など、県内でも先駆的な取り組みを迅速に進めてきました。

実は宮下前市長の存在の大きさ故に、後継者としての重圧を指摘されることもあります。しかし私は、ナポレオン・ヒル(米国の自己啓発作家)の「信念の力」にある言葉、「できないと思えばできない、無理だと思えば無理、できると思えばできる」を胸に、前市長の偉大さをむしろ超えるべき目標として捉えています。そのために、多くの施策をスピード感を持って打ち出し、実施してきました。

(※注3)子どもの最善の利益を第一に考え、社会の中心に子どもを据えた政策を推進する取り組み。むつ市では条例制定や第三者機関設置を通じ、子どもの権利尊重と成長支援を進めている。

 

むつ市こどもまんなか宣言(出典:むつ市WEBサイト)

 

発想を変え、前例踏襲からの脱却

小田 40代の若手首長として、人口減少や財政難などの課題に直面する地方自治体にどのように向き合っていこうとお考えですか。

山本市長 私は若い世代の首長だからこそ、前例にとらわれない柔軟な発想と実行力で市政を変革したいと考えています。過去の成功事例を参考にすることは大切ですが、従来の思考に固執し過ぎてしまうと、急速に変化する社会に対応できません。

 

小田 地方自治体では「前例踏襲」の慣習が根強く残るところも多いですが、その打破に向けてどのような課題意識をお持ちですか。

山本市長 市職員として働く中で、「失われた30年」と呼ばれる時代の実態を目の当たりにしてきました。その時代に成果を挙げた取り組みには敬意を払いつつも、現在の高齢化や人口減少といった新たな課題には、これまでの発想では十分に対応できないと感じています。

前例を踏襲する自治体運営では、地方は確実に取り残されてしまいます。だからこそ、若い感性を生かし、新しい挑戦をしていく必要があります。具体的には、オンライン化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といったアプローチを活用し、時代に即した発想と実行力で、むつ市を「前例にとらわれず挑戦を続ける自治体」として発信していきます。

この取り組みを通じて、次世代が「この地で暮らし続けたい」と思える地域づくりを進めていくつもりです。

 

小田 今回は、山本むつ市長の「日月に私照なし」を軸とした市政運営についてお話を伺いました。職員時代から培われた公平・公正の信念、前市長から受け継いだ「一人の市民を大切に」「市民は家族だ」という理念が、むつ市の新たな挑戦や変革の基盤となっていることが印象的でした。

また、市職員・県議会議員として、行政の内外両面を経験した山本市長ならではの視点が、市民に寄り添う具体的な政策や未来を見据えた取り組みに結実していることが分かりました。

次回は、むつ市が掲げる「日本一」へのこだわりや、DX推進、地方自治の未来に向けたビジョンについてさらに掘り下げて伺います。

 

第3回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2024年3月17日号

 


【プロフィール】

山本 知也(やまもと・ともや)

1983年青森県むつ市生まれ。
2006年にむつ市役所へ入庁し、体育施設管理、税務、財政、企画や秘書など幅広い業務を担当。
19年、青森県議会議員に初当選し、むつ市を取り巻く課題解決に尽力。23年4月、むつ市長に就任。現在は1期目。

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