広島から見る地域観光に本当に必要なこと

広島県議の出原昌直さん、今回の取材で初めてお会いしましたが、穏やかで静かに話をする人だな、というのが第一印象。伊藤忠商事を経て、地元・福山市に戻って独立起業、その後、瀬戸内で観光事業を手がける「ディスカバーリンクせとうち」の代表も務める出原さん。与党の県議として地域経済の活性化の一翼を担う存在です。そんな彼に、地元の観光施策や広域行政についてお聞きしました。

(聞き手=PublicLab編集長 小田理恵子)

 

出原さんは、伊藤忠商事を経て福山市で起業され、ディスカバーリンクせとうちという観光事業を手がける企業の代表も務めています。その後政治の世界に入っているわけですが、ビジネスと公共と、その両方の視点から地方都市のこれからを、どう見ていますか?

 

7年前から観光事業をやっていますが、最近『観光じゃないんじゃないか』と思い始めています。日本全体が人口減少の中、移住だったりUターンだったりIターンだったりと、人を外から呼び込もうとしていますよね。そこに力を入れ過ぎていて、小さな地域の単位で住んでいる人がそれを本当に求めているのか?、と。

 

それよりも、住みたいまちにすることに主軸を置いた方が良いのではないか、と考えるようになりました。尾道も福山も、最終的には自分たちの住みたいまちになって、その結果外の人が訪れてくれるのが良いんじゃないかなぁ、というのが今の私の考え。

 

尾道デニムという取り組みを行っているのですが、尾道を発信したいと動機から始めました。まちの人たちと協力し合って、自分たちが楽しいことをやってきました。その結果、蓋を開けてみると、県外や市外から尾道を訪れるひとが増えました。それって、結果的にそうなっただけ。

 

県外から尾道を訪れる人を呼び込みたくてデニムプロジェクトを始めたわけじゃないんですよね。そういう経験からも、意図的に観光という形ではない方が良いと思っています。

 

意地悪な質問をすると、人口減少社会はゼロマイナスゲームなので、強い都市しか生き残っていけないのでは?

 

昔の賑わいを取り戻そうとする必要はないと思っています。僕たちが20年前、30年前に経験した、子どもたちが街中で遊んでいる風景をもう一度取り戻すのは無理なんですよね、寂しいけど。自分の地元のどの地域も人口減少していて、そんな中で「何を残さないといけないのか。本当に残したいものは何か」を考えていく時期に差し掛かっているのではないでしょうか。

街の中で失ったらいけないものってあるじゃないですか。僕は繊維の産地で生まれ育ったので、繊維は残さないとと、思っている。それぞれが、自分の中で失ったらいけないというものがあるので、それを残していきたいですよね。

 

起業も経験し、地元の観光産業も手がけている中で県議になって。何か意識が変わったこととか、ありますか?

 

それはありますよね。地元の未来が自分ゴトになりました。議員になって、運動会やら盆踊りやら地域のイベントに出るようになって、地域の子供たちを実際に目の前にして「この子らが地域に残るのだろうか?」とか「この子らが大人になった40年後に地域はどうなっているのだろう?」と切実に思うようになったんですよね。

 

議員になる前から観光事業やってましたから、もちろん、今までも「次世代のために」って思ってたし、そう口にもしてましたけど、その思いはやっぱり、議員になってより強くなりました。やっぱ、少しでもいい未来を残してあげたい。

 

出原さんは観光ビジネスの専門家でもあるので、その視点から見て、子どもたちの未来に向けた取り組みを県はできていますか?

 

そこ、すごく難しい部分で。日本全体に言えることなんでしょうけど、公平性の考え方を改めた方がいいんじゃないかなって感じています。特定の分野やエリアに特化してそこに予算を投入し、実施し結果が出てから、他に広げる方が良い。何でそこだけ、何でうちではやらないんだという問題は出ても「確実に結果が出た」ということをやらないと。

 

観光でも、「どこか、特定の市やまちに特化した対策をやって欲しい」と県にいっている。どこかに集中投資すれば、結果は自ずととはっきりする。「ここ増えてないですよね」と。

そういう意味で、自治体がやりがちな公平性を求めた政策は薄く広く実施するから文句は出にくいけど、効果も分かりにくですよね。それなら、いっそのこと、特定のエリアに集中投資した方がイエス・ノーがはっきり分かる。

 

観光施策にしても、県のお陰で本当に観光客や宿泊が増えたのか?本当は民間の実績なんじゃないのかなって思うこともあります。これだって、県が観光政策に投じる予算を1年間ゼロにして何もやらなかった場合、どこまで影響があるのか見てみたい気もしますね。そうすればはっきりする()

 

お話を聞いていると、民間を経験しているからこその苦悩や葛藤が伝わってくる気がします。それでも政治の世界に身を置いているその情熱はどこから来るのですか?

 

選挙を経験して分かった事は、応援してくれる人がいるということの重み。応援してくれる人が居ると、体を壊すか落選するかでないと、引退はできないな、と。辞められないですよね。民間の立場もあるので、政治でできないことは民間でやろうと思ってます。

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