地方自治体における就職氷河期世代支援の進め方(4)


株式会社パブリッククロス代表取締役
元大津市議会議員・藤井哲也

地方自治体における就職氷河期世代支援の進め方(記事一覧)
Ⅰ.就職氷河期世代支援の概要
    第1回 就職氷河期世代が生まれた社会背景
    第2回 就職氷河期世代支援に向けた動き
    第3回 就職氷河期世代の職員採用をめぐる取り組み
    第4回 就職氷河期世代支援プログラムの概要
Ⅱ.就職氷河期世代支援の問題点整理
    第5回 就職氷河期世代を活用することによって得られるメリット/就職氷河期世代支援・官民連携の取り組み
    第6回 先行モデル地域の取り組み
    第7回 施策推進における課題
Ⅲ.政策提言
    第8回 政策提言/コラム「越境的学習の効果は?」/支援事業者へのインタビュー


就職氷河期世代。一般的に1993年から2004年に学校を卒業して社会に出た世代のことを言います。昨年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2019」(いわゆる「骨太の方針」)で、この世代に対する集中的な支援の必要性が論じられて以降、にわかに国、地方で動きが活発になってきました。なぜ今、この問題がクローズアップされてきたのかを見ていきます。第1回第2回第3回はこちら)

Ⅰ.就職氷河期世代支援の概要

5.就職氷河期世代支援プログラムの概要

昨年6月に「骨太の方針」で示された「就職氷河期世代支援プログラム」や、昨年12月に決定された「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」から、今後進められる就職氷河期世代支援施策の概要をまとめます。

プログラムの基本認識は、「3年間の取り組みにより正規雇用者を30万人増やす」こと。そのために「社会との新たなつながりを作り、本人に合った形での社会参加も支援するため、社会参加支援が先進的な地域の取組の横展開を図っていく。個々人の状況によっては、息の長い継続的な支援を行う必要があることに留意しながら、まずは本プログラムの期間内に、各都道府県等において支援対象者が存在する基礎自治体の協力を得て、対象者の実態やニーズを明らかにし、必要な人に支援が届く体制を構築することを目指す」としています。

支援対象者は、「不安定な就労状態にある方」「長期にわたり無業の状態にある方」「社会参加に向けた支援を必要とする方」に大きく3分類し(図表)、国、地方自治体、民間企業や経済団体などと連携して施策を推進する体制を前提とし、施策の方向性としては、地域ごとの官民連携プラットフォームにより推進を図るとともに、一人ひとりの対象者につながる積極的な広報活動、対象者の個別状況に応じた各種事業の展開を進めることが検討されています。

図表(出典:厚生労働省「就職氷河期世代の方々の活躍の場を更に広げるために」)

具体的な施策としては、新たに就職氷河期世代に限定した求人をハローワークや民間の求人サービスにおいて要件を緩和すること、短時間で可能な資格取得を支援するために職業訓練制度を見直したり、オンラインで各種訓練を受講できたりするようにすること、民間事業者による正社員就職に対する成果連動型就労支援の推進など不本意非正規社員の正規転換策のほかに、地域若者サポートステーションの対象年齢等の拡大や、生活困窮者自立支援事業の強化、中高年ひきこもり者のアウトリーチ型支援の充実、いわゆる「8050問題」等の複合課題に対応できる包括的支援・居場所づくりの推進などが挙げられています。さらに、当該世代を採用・正社員転換した企業への助成金も従来から拡充されます。

この他、次号以降で取り上げますが、事業予算の75%を充当できる「地域就職氷河期世代支援加速化交付金」として、2019年度補正予算では全国で30億円が措置され、地方創生交付金の50%補助に比べて、地方自治体にとって有利な財源として活用できることになります。

(第5回に続く。4/13更新の予定です)

筆者プロフィール

藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリッククロス代表取締役。2003年の創業以来、若年層・就職氷河期世代の就労支援に従事。2011年より大津市議会議員(滋賀県)を2期務め、地域の雇用労政や産業振興に注力して活動。株式会社ミクシィの社長室渉外担当など歴任。著書・寄稿に「就職氷河期世代の非正規ミドルを戦力化する 人事実務、マネジメント」(2019年)など多数。京都大公共政策大学院修了。1978年生まれ。

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