本格化する官民人材の流動化(3)<br>社会が気づいてない地方議員の価値

なぜ、私がPublic dots & Companyという会社を作ったのか。今、確信していることは地方議員や公務員が持つ社会資本と、そのポテンシャルに世の中のほとんどの人が気づいていない、という点にあります。

 

もちろん地方議員もピンキリですが、企画力があって、政策リサーチ、実現能力を備えた人材は存在します。私もかつて、そのフィールドで活動していたから分かりますが、悲しいかな、地方議員のその能力はなかなか陽の目を見ません。むしろ、「地方議員」と一括りにされて、誤解を恐れずにいえば、無用の長物のように見られがちです。

 

これは公務員も同様です。その肩書きのために、肩身の狭いをしている人も多いと思います。地方議員の中にも、地方公務員の中にも、公共性を備え、企画力の高い人材はいます。政治家という肩書きをフィルターする装置(会社)さえ用意すれば、官民連携プロジェクトに、マッチングすることで、企業が開発するサービス、プロダクトに公共性をインストールすることができます。

 

そしてビジネスを通じて、自らが磨く政策が社会に有用であることの実感を議員が持てるという利点もあります。幸いにして、私はこの2年でパブリック・アフェアーズという領域を知り、かつ、現下の自治体財政を考えれば、この分野が果たす役割は大きいと確信するに至りました。

 

県議選、政令市議選でも無投票が生まれる意味

2019年、今年は政治にとっては非常に象徴的な一年となりました。春の統一地方選挙で、人口規模の大きな自治体でも無投票が相次いだからです。もっとも象徴的なのは、かつて筆者が身を置いていた横浜市議会です。政令指定都市である横浜市の場合、地方自治体としての権限はほぼ神奈川県から委譲されており、必定、仕事は多い。そのため、議員のなり手も神奈川県議よりも横浜市議の方が人気となるため、過去無投票になったことがありませんでした。

 

ところが、2019年、横浜市神奈川区(定数5)で現公職選挙法の下で初めての無投票選挙区となりました。横浜市政上、初の出来事です。横浜市議会議員の議員報酬は月額95万3000円、政務調査費は55万円。テレビで流される、「議員報酬が少ないから、議員のなり手が少ない」というロジックは横浜市議会には当てははまりません。もっと違う理由、何か大きな社会の変化が起きていると見るのが自然で、それは前述したように議員の仕事が社会的に認知されていないこと、その有用性を認められていないからです。

 

高い議員報酬であっても議員のなり手がいない、という事例は他にもたくさんあります。それは道府県議、いわゆる広域自治体の議員もなり手不足が叫ばれています。栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県の関東5県に限定しても、無投票当選率はなんと24.5%でした。4人に1人は無投票で県議になった計算になります。この5県の定数は合計すると392。このうち96人が無投票で選ばれたことになります。選挙区数で見ると、176選挙区中64選挙区、つまり36%の選挙区が無投票でした。

 

神奈川県議会は48の選挙区がありますが、選挙の直前ギリギリまで半数の24選挙区が無投票の可能性が取りざたされる異常事態でした。最終的には「無投票にしてはいけない」と考えた人たちがいくつかの選挙で立候補したことで無投票選挙区は13にまで減ったものの、実態としては半数近い選挙区は選択肢が実質的には示されませんでした。

 

立候補せずにバッジを外した人たち

もう一つ、注目しておきたい動きがあります。それは春の統一地方選挙で立候補することなく、自らの意思でバッジを外し、在野に戻った人たちの存在です。それも一人や二人ではありません。これは統計データがないため、正確な数字は持ち合わせていませんが、私がかつて所属していた旧みんなの党関係者だけでも、何人かが静かにバッジを置いています。

 

弊社の共同経営者である小田理恵子(元川崎市議会議員2期8年)はその代表格と言っていいでしょう。メディアへの露出も多く、議会を超えて全国に仲間もいた彼女にとって、2019年の統一地方選挙は立候補すれば、3期目の当選は約束されたものでしたが、立候補しませんでした。

 

府知事と市長の入れ替えダブル選挙で一気に民意を惹きつけた大阪維新の会でも、4人の議員が自らの意識でバッジを外しています。こちらは「もともと1期4年で都構想を実現する」という約束で2011年に立候補し、2015年の都構想住民投票が僅差で負けたことから「在籍期間が少し伸びてしまった」という背景もあるようですが、いずれにしても、大阪にあって飛ぶ鳥を落とす勢いの大阪維新の会に所属していながら、自らの意思で立候補しなかった議員が4人もいた、というのは驚きです。

 

ほかにもバッジを外して上海へ渡った者、民間企業へ戻った者、起業した者、報道こそされないが落選ではなく、自らの意思で政治家を辞めた人たちが存在します。

 

バッジを置いた理由を一言でまとめるのは危険なことですが、ただ、確実に言えることは「政策を磨くことの意味」を見出せる環境が今は少ないということです。私たちはPublic dots & Companyを通じて、地方議員や公務員など公共性の高い仕事をしている人たちの価値を社会にもっと広く知らしめていきたいと考えています。

 

株式会社Public dots & Company伊藤大貴

 

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