地方自治体における就職氷河期世代支援の進め方(7)


株式会社パブリッククロス代表取締役
元大津市議会議員・藤井哲也

地方自治体における就職氷河期世代支援の進め方(記事一覧)
Ⅰ.就職氷河期世代支援の概要
    第1回 就職氷河期世代が生まれた社会背景
    第2回 就職氷河期世代支援に向けた動き
    第3回 就職氷河期世代の職員採用をめぐる取り組み
    第4回 就職氷河期世代支援プログラムの概要
Ⅱ.就職氷河期世代支援の問題点整理
    第5回 就職氷河期世代を活用することによって得られるメリット/就職氷河期世代支援・官民連携の取り組み
    第6回 先行モデル地域の取り組み
    第7回 施策推進における課題
Ⅲ.政策提言
    第8回 政策提言/コラム「越境的学習の効果は?」/支援事業者へのインタビュー

Ⅱ.就職氷河期世代支援の問題点整理

5.施策推進における課題

連載(1)〜(4)までで、就職氷河期世代の現状や本年4月から始まる支援の概要について取り上げ、今号では施策の実効性を高めるための官民連携の在り方を取り上げてきました。就職氷河期世代支援の課題を取りまとめ、次回以降に掲載する幾つかの政策提言につなげたいと思います。

課題① 非正規雇用歴が長い方や長期無業状態の方へのジョブカウンセリングやマッチング機会の創出

非正規雇用が長かった方や長期無業状態の方の、職務経歴書やジョブカードは、企業にとって魅力を感じる部分があまりなく、また本人にとってもそれらへの記入が自信や自己効力感を損なう機会になりかねません。

ジョブカウンセリングやジョブマッチングの在り方をどうすべきかは重要な課題と考えられます。

課題② 受け入れ企業への理解や協力の推進

大阪府では専門の企業開拓員の方が、企業に対して理解促進を進めているということでした。やはり受け皿となる民間企業や経済団体の理解と協力なくして、支援施策の実効性は担保できないと考えられます。どのような点に着目して、行政や自治体は民間セクターに働き掛けるべきでしょうか。

課題③ 公共職業訓練や民間委託業者で実施される職業訓練

パソコンスキルや簡単な資格取得は、就職氷河期以降の世代はすでに基本的に身に付けています。

国の就職氷河期世代支援プログラムにおいても、ソサエティー5・0時代を見据えたスキル獲得機会の提供などが掲げられています。非正規雇用が長い方や長期無業状態の方にとって、どのような職業訓練がなされるべきかも検討課題として挙げられます。

課題④ 県域をまたいだ自治体間の連携

自民党政務調査会の雇用問題調査会内に設置された、就職氷河期世代支援プロジェクトチーム2でも議論になっていたように思われますが、県域をまたいだ自治体間の連携も検討されなければなりません。就職氷河期世代支援は地方創生とも関連することから、東京一極集中の是正の政策枠内において東京から地方へ、または地方中枢都市から周辺市町村への人の流れも想定されます。

課題⑤ 地域就職氷河期世代支援加速化交付金の活用

2019年度補正予算で、自治体が就職氷河期世代支援のために用いることができる新たな交付金が創設されました。本年度予算の編成や議会審議に間に合わなかった自治体も多くあることから、次回以降で幾つかの有効な活用案を提示したいと考えています。

(第8回に続く)

筆者プロフィール

藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリッククロス代表取締役。2003年の創業以来、若年層・就職氷河期世代の就労支援に従事。2011年より大津市議会議員(滋賀県)を2期務め、地域の雇用労政や産業振興に注力して活動。株式会社ミクシィの社長室渉外担当など歴任。著書・寄稿に「就職氷河期世代の非正規ミドルを戦力化する 人事実務、マネジメント」(2019年)など多数。京都大公共政策大学院修了。1978年生まれ。

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