外とつながることで政策をクリエティブに

鈴木議員は政策通の一人として、地方議員の間ではつとに知られた存在。三菱銀行を経て政治の世界に飛び込み、横浜市議として現在5期目。その卓越した洞察力は一体、どこから来るのでしょうか。一見クールな鈴木氏の中に、今社会が直面する大きな変化と、その中で人々が抱える生きづらさへの眼差しがありました。

(聞き手:PublicLab編集長・小田理恵子)

冒頭から少しマニアックな話になってしまいますけど。近年、SDGsの文脈も手伝って話題になり始めているマイクロプラスチック問題があります。国もようやく対策に乗り出したところですが、鈴木さんは早い段階でこの問題に注目していました。

 

これは環境ベンチャーのピリカと議論している中で見えてきた問題です。日ごろ、色んなところにアンテナを立てるようにしているからこそ、マイクロプラスチック問題も環境ベンチャーのピリカという会社と出会いました。

 

マイクロプラスチック問題については、そういう課題があることは知っていましたが、横浜という都市が、マイクロプラスチックに対して何か原因を作り出してしまっているのか、それとも関係ないのか。ピリカとの議論を通じて、どうやら私たちの暮らしそのものがマイクロプラスチックの原因となっているらしいということがわかりました。通常、因果関係がそこまではっきり分からない段階だと、行政は「まだ、そこまでは・・・」と尻込みすることが多いのですが、そういう分野こそ、議員が果たす役割があると思っています。

2018年の横浜市議会で鈴木さんは下水道からマイクロプラスチックが流出している可能性について取り上げていました。下水道に注目する、そのアイデアはどうやって思い付くんですか?

 

下水道は雨水と汚水を分けて処理する「分流方式」と、分けずに同じ下水管に流してしまう「合流方式」とあるわけですが、専門家と意見交換するうちに、合流式の下水道に課題がありそうだと分りました。ちょうど横浜市が下水道の水質調査をするという話もあったので、だったら、「同じタイミングで、マイクロプラスチックの調査もやったらいいのでは?」というのが私の提案でした。

 

マイクロプラスチックについては、まだ調査手法が確立されているわけではない中で、横浜市が動いた背景には、そういう行政の、一見関係ない動きを巧みに捉えた提案だったから、なんですね。鈴木さんの政策は非常にロジカルで、その裏打ちはデータや調査の積み上げなんでしょうか。

 

ロジックは組み立てますが、そこまで言うほど僕はデータを積み上げでもないんですよ。細部に入っているわけでもありません。今やっている感じではそこまでデータドリブンではありません。

 

政策は実現してこそ意味があると思っているので、その点では最大会派の強みは使っています。議会とは良い関係を保っておきたい行政執行部側の構図がありますから。

 

外からどう見えているか分りませんが、自民党だからなんでも政策を通せるというわけではなく、やはり、党内での合意を取っていく作業は非常に重要です。新しい政策はすぐに理解されないことも多いですし、急に突飛なことをやろうとしてもうまくいかないので、タイミングを見極めています。最大会派といえども、会派内で同意を得ないと政策は前に進められないんですよ。

 

これまで16年、市議を続けてきた中で、何か印象的な出来事ってありますか?

 

例えば2009年に議員提案条例で制定した「中小企業振興条例」は分かりやすい事例です。リーマンショックで公共事業が減少して地元企業が大打撃を受けることが想定されたので、当初会派で地元企業への発注などを推進するよう、行政に対し申し入れを行うという話が出ました。

 

しかし、申し入れだけでは、行政が実行するかどうかわからないから「条例にしましょう」、と提案して、党内でこのアイデアが受け入れられました。これが横浜市会における最初の議員提案条例となり、早稲田大学などが主催するマニフェスト大賞でも受賞しました。

 

この体験は私に取っても、横浜自民党にとっても大きな意義があり、政策立案に対する潮目が変わりました。会派でマニフェストを作って政策を進めたり、議員提案条例を出すことが当たり前、という考え方になったのです。

 

会派の合意形成と同時に気を使っているのは、行政への丁寧なアプローチです。条例が制定されれば、動くことになるのは現場を持つ行政ですから、ある程度準備はさせてあげないと。ここは丁寧に。職員との信頼関係は重要です。いきなり言っても職員も不安に思うじゃないですか。

 

長年の議会経験の中で築いた鈴木さん個人に対する信頼と、信頼を得る提案スタンスを取っていることの両面ですね。私は川崎から鈴木議員を見ていましたが、表向きは、本当にさらっとやっているように見えたんです。でもこうしてお話を伺うと、実は裏では綿密な準備を時間かけてやっているということなのですね。ところで、こうした政策の話は選挙の票に繋がりにくいという面があると思います。

 

それはそうです。でも、それはいいんですよ。政策は選挙のためにやっていることではないから。僕は横浜市会議員なので、「横浜の未来のために」という思いでやってます。

 

地域活動はかなりやってますよ、それこそ泥臭く。住民と接点を持つ、ここは重要です。ただね、やっぱり大切なのは、選挙に勝ちたいからという動機で地元を回ると、その下心っていうんですかね、そういうのは市民に伝わってしまう。一見、同じようにやっていても有権者には伝わります。不思議ですね、人間、伝わっちゃうんですよ。

地元を回ると、ちょっとしたスモールトークがあるわけで、どの地域で何があったのかを吸い上げられる良い機会だと思っています。議員の仕事の一つに市民からの陳情の処理がありますが、実際に動いて汗をかくのは役所の人で、自分は繋いでいるだけです。ニーズを伝える選択肢の一つとして住民が議員を使っているだけですから。

 

議員の本来の役割は、ルールを決めること、方向性決めることだと思います。もっと言うと、限られた財源の中で取捨選択すること。

 

今まで鈴木議員とは政策の話しかしていなくて、地元活動の話を聞くのは初めてでしたので、普段知らない鈴木さんの顔が見えました。鈴木議員にはCOOLとHOTが同居しているんですね。普段はCOOLですが()。鈴木議員は政策面でも多大な成果を上げていますよね、それだけでも大変なことなのに、地元活動も精力的にこなす。その熱の部分の原動力というか、原点って何なのでしょうか

 

政治家になったルーツでしょうね。バブルの下り坂だった1990年代に大学を卒業して金融機関に就職しました。世の中の先行きが見えなくなって時代でしたよね。世の中変わっていかないといけないし、変わっていくのだろうと思ったら、何も変わらない。みんな出口のないトンネルを歩いていた。

「生き辛い」、「閉塞感を打開したいけど、一人ではできないよな」、という周囲の風潮があった。でも、もがく人間が居た方が良いと思った。もがくことが大事。

 

今でももがいています。

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