元Jリーガー現役地方議員による初の座談会。前回の前編では、セカンドキャリアとして「地方議員」を選んだ理由や、実際に議員としてどのように活動しているかなど、意気投合しながら大いに語られました。今回の後編では、元Jリーガーという経歴をどのようにサッカーやスポーツ関連の政策に活かしているか、今後活かしたいかなど、元Jリーガー議員ならではの会話も展開されます。
2020/12/7 元Jリーガー現役地方議員座談会(前編)
2020/12/9 元Jリーガー現役地方議員座談会(後編)
星だいすけ氏(町田市議会議員)
高松大樹氏(大分市議会議員)
稲葉まさはる氏(埼玉県吉川市議会議員)<コーディネーター>
【実施日】 2020年10月21日(水)
【会場】 株式会社Public dots & Company(渋谷スクランブルスクエア内)
プロチームがある町は、スポーツ施設が充実しているのか
都築 僕ら3人の自治体で共通しているのは、ゼルビア・トリニータ・レッズ・アルディージャというプロチームがある町だということ。やっぱり「自分のホームタウンを何とかしたい」と思いますよね。「レッズ・アルディージャがあるさいたま市」となると、市民にとっても、スポーツが必然的に関心事になると思います。
高松 大分市には男子バレーボールチームも、フットサルチームもあります。身近にプロチームがあるというのは、すごく大きいことだと思います。
都築 高松さんはたしか、大分スポーツ公園のグラウンドの人工芝化を推進していますよね。
高松 はい。大分市はプロスポーツのある町で、サッカー人口も多い割に、市有の人工芝グラウンドが無かったのがおかしな話で。2億4000万円の予算を組んでもらって、3年がかりで人工芝化してもらいました。市内ではそのほか、ジムなどのスポーツ施設や学校の老朽化も目立ってきており、利用者が多いところをより充実させてほしいと訴えています。
都築 地域や行政が関わらないと、チームが大きくならない部分もあるけど、サッカーが好きな人もいれば嫌いな人もいる。そこに税金を突っ込むわけだから、文句を言う人がいるのは当然のことです。そこのバランス感覚は難しいですね。浦和レッズの練習場は、調整区域の田んぼの中にあるんですが、これは特例でレッズが建物を建てさせてもらって、さいたま市の財産として寄付している形です。
稲葉 町田市のスポーツ施設はいかがですか?
星 FC町田ゼルビアはJFLからJ3・J2へと上がってきている段階で、今はJ1昇格を目指しています。昇格するには、チームの強さはもちろん必要ですが、スタジアムがJリーグの基準を満たしていることが条件となります。チームの昇格に合わせて、スタジアムも段階的に席数を増やし、クラブハウスと練習場の工事も進めてきました。今はJ1ライセンスに必要な席数を確保するため、1万席から1万5000席へと増設する工事をしている最中で、2021年2月に完成予定です(下図)。
高松 大分のスタジアムも老朽化しているので、今後のビジョンを検討する必要があるんです。星さんに教えてほしいのですが、スタジアムの増設に多額の税金を使うともなると、町田市民が署名活動をしたのでしょうか?
星 はい、そうですね。あ、そうそう、ゼルビアがJ2に上がる時の入れ替え戦に、高松さんも出場されていて、私はその時スタッフをやっていて。高松さん、あの時アウェイでPKを外していただいて、ありがとうございました! おかげで、ゼルビアが勝って、J2に昇格したんです!
高松 そうなんですよ! 僕たちがJ3に落ちたんですよ、入れ替え戦で負けて…。
星 高松さんにPK外していただいて、町田市役所内に集まっていたサポーターたちは大盛り上がりでしたよ! すみません、あの時は喜んじゃって(笑)
高松 いつか、町田市役所行きますんで!!
星 ぜひお待ちしています(笑) それで話を戻すと、スタジアム改修の予算を組む時に、署名はやっぱりサポーターがやってくれました。J2に上がるための予算要望だったので、もちろん当時スタッフだった私も手伝いました。その後スタジアムは、段階的に改修を繰り返してきたため、どうしても予算がかさんでしまいました。結果論ですが、新しいサッカー専用スタジアムを別の場所に作った方が良かったのではないかと思うところもあります。ただ、この段階的な改修がなければ、チームのJ2昇格も、J1を見据えた戦いもできませんでした。大分市営のスタジアムも、財政面等、さまざまな課題があると思いますが、一気にサッカー専用スタジアムを作ってしまった方がいいのではないか、と個人的には思います。
高松 スタジアムの周辺に、他競技のスポーツ施設が結構あるんです。大分市陸上競技場と、大須スポーツ公園を、今後どうスポーツの拠点にしていくかを考えている最中ので、また今度アドバイスをいただければ有難いです。スポーツ施設と言えば、関連して、プール施設については皆さんどう思いますか? プールの維持管理って相当お金がかかるじゃないですか。授業で使うといっても、1年のうち2か月くらいしか使わないので、統廃合や民間委託など今後検討が必要だと思うんですよね。皆さんの自治体では、何か動きはありますか?
都築 さいたま市は、学校同士の距離が近いところが多いので、プールを統合しようという話は確かに出ていますね。でも民間委託という話は出ていないですし、あまり議論されていないのが実情です。
星 町田市もプールについては、あまり議論が進んでいないです。「各学校に1つずつあるプールを民間活用しよう」と声を上げている人はいますね。中学校に2つだけ室内プールがありますが、そこは市民に開放していて、収入がある程度入っていますね。
高松 神奈川県海老名市や千葉県佐倉市などでは、プールを廃止する学校が増えていて、学校外の屋内温水プールや民間のスイミングスクールなどに、場所を移して授業を行っているそうです。民間のスイミングスクールに場所を移すだけでなく、インストラクターに授業を任せることで、安全面についてもプロに見守ってもらえますし、春秋にも実施できるため、プログラムも1年通して組みやすくなるそうです。さらには、教員の働き方改革という意味でも、相当負担が減るらしいんですよ。場所としても、プールを壊してグラウンドを大きくできたら、年間を通じてその場所を活用できると思うんですよね。
都築 さいたま市緑区は、新設の小学校がまだまだできてるんですよ。さいたまスタジアム周辺の地域には、1000人規模の新設校が作られ、多い時には1500人くらいの児童が入っているわけですよ。その人数を2つの学校に分けるために、また新設校作ってと。さいたま市は、あと10年くらいのスパンでは、人口増なんですよ。出生率は上がらないけど、子どもの数はどんどん増えています。だからさいたま市は、ポジティブに子どもたちのために財源を使っていけますけど、10年後より先のことを考えると、子どもが減って、ネガティブにやらないといけない時が必ず来ます。その時のために、今作る新設校を廃校する時にどう使うかまで、今考えないといけないんです。グラウンドやプールといったスポーツ施設も、先々のことを見据えて計画を立てていくのが、政治家の仕事だと思っています。