次世代に継承できる、小さくとも誇り高いまちを~山添藤真・京都府与謝野町長インタビュー(3)~

京都市与謝野町長 山添藤真
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2022/09/26 まちの新産業を「デザイン」で創出~山添藤真・京都府与謝野町長インタビュー(1)~
2022/09/29 まちの新産業を「デザイン」で創出~山添藤真・京都府与謝野町長インタビュー(2)~
2022/10/03 次世代に継承できる、小さくとも誇り高いまちを~山添藤真・京都府与謝野町長インタビュー(3)~
2022/10/06 次世代に継承できる、小さくとも誇り高いまちを~山添藤真・京都府与謝野町長インタビュー(4)~


 

第1回第2回に引き続き、京都府与謝野町の山添藤真町長のインタビューをお届けします(写真1)。

全国どの自治体においても現在、社会全体が縮退する中でのまちづくりという難解な課題に直面しています。その打開策の一環として、同町はホップ栽培、ビール醸造という新産業の創出に着手。約7年の歳月をかけ、今年度に醸造所の着工を予定するところまで進みました。

前回まではこうした事例について伺い、「小さな可能性を見逃さない」という山添町長のチャレンジングな姿勢から、自治体における新しいリーダー像を垣間見ることができました。

 

今回からは、自治体運営の難しさについて伺います。あらゆる意見が飛び交い、衝突も起こるのが自治体運営の場です。同町には、これまでにどのような事例があり、どう合意形成してきたのでしょうか。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)

 

自治体運営におけるバランス感覚

(写真1)山添町長(上)へのインタビューはオンラインで行われた

 

小田 前回は与謝野町のまちづくりの成功事例について伺いましたが、行政に解決が求められる課題は増える一方です。与謝野町でもご苦労されていると思いますが、いかがでしょうか?

山添町長 これまでにさまざまな事業を考案しました。その中で、ホップ栽培とビール醸造のように継続しているものもあれば、着手後に十分に浸透していないもの、民間事業者に譲渡して手が離れたものなど、それぞれの進捗状況には違いがあります。進捗が滞っている事業の問題は何かと掘り下げていくと、大体が予算かマンパワーがないことです。

とはいえ、限られたリソース(資源)の中で複数の事業を同時並行で行わざるを得ません。予算とマンパワーの問題を掘り下げるよりも、それぞれの進捗具合をしっかり見定めながら、どの時点でどの事業に予算と人員を投入し、前に進めていくのかを考えることの方が重要な気がします。

 

小田 小規模自治体の場合は、特にリソースの配分がカギを握りますね。人材に関しては外部登用という選択肢も考えられます。

一方で、小規模自治体ならではの強みもあると思います。住民との一体感が得やすく、いざ動くとなった場合は非常にスピーディーな印象です。サステナブル(持続可能)なまちづくりにおいては、むしろ小規模自治体の方がうまくいくのではないでしょうか?

山添町長 同感です。フランスの政治哲学者ジャンジャック・ルソーの説に、民主主義がしっかりと機能する人口規模は2万~3万人というものがあります。人同士がある程度、顔の見える関係にあり、その中で起こるさまざまな課題を熟議し、住民参画を得ながら粘り強く前に進めていくとすると、確かに人口2万~3万人ほどが適正規模のような気がします。

 

小田 山添町長がリーダーシップを発揮するに当たり、参考にした他自治体の首長はいらっしゃいますか?

山添町長 兵庫県豊岡市の中貝宗治前市長が進めていたまちづくりは非常に参考になりました。豊岡市は与謝野町の3~4倍の人口規模で面積も大きいですが、その中で環境政策や災害対策、芸術文化の振興、ジェンダーギャップの解消など、非常にバランスの取れた自治体運営をされている印象でした。

 

小田 まちづくりは10~20年、あるいは100年のスパンで見る必要があります。その中でバランスを取るのは非常に難しいですね。数十年後の未来を見据えて注力する方向性を決めることと、住民の目の前の暮らしを考えた施策を同時に動かさなければなりません。

山添町長 長期的な計画性を持ち、一歩ずつ前に進む首長の姿勢はとても大切です。さらに大切なのは、まちづくりのビジョンを住民に説明し、理解を得ていくことです。首長と住民の意識の擦り合わせは丁寧に行う必要があると思っています。

 

合意形成の難しさ

小田 与謝野町では昨年、公共施設の整備計画が白紙に戻されました(注1)。住民との「意識の擦り合わせ」という部分で不具合があったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

山添町長 いろいろな要素が絡んで起きたことだと考えていますが、その中の一つとして、住民の皆さんに町がしっかりと説明責任を果たすことができなかったという点が挙げられると思います。この件からわれわれも学び、次に生かそうと取り組んでいるところです。

 

小田 与謝野町は2006年に加悦、岩滝、野田川の3町が合併して誕生しました(写真2)。今回の計画白紙は、もしかしたら合併で住民の中に生まれたわだかまりのようなものが、少なからず影響したような気もします。

山添町長 それはあると思います。市町村合併の難しいところですね。3町合併の理由については、住民の皆さんにご理解いただいています。財政健全化のために必要不可欠だったと。合併当初は、旧3町にそれぞれあったコミュニティー施設などは統廃合した方が合理的だとも思われていたはずです。

しかし合併から15年以上経過する中で、やはり暮らしの利便性などを考えると、施設を残してほしいという気持ちになられたのだと思います。これに関しては、町からの継続的な説明が不足していたと反省しています。引き続き、公共施設の統廃合は財政健全化のために必要であると粘り強くお伝えしていくつもりです。

 

(写真2)与謝野町は今年で合併16年を迎えた(出典:与謝野町公式フェイスブック)

 

注1=旧野田川町地域にある中央公民館と体育館、給食センターを取り壊し、跡地に認定子ども園を整備するという町の計画に施設利用者らが反対し、約8500人分の署名を提出した。町は第三者委員会を設け、保育施設などの在り方を検討。同委は計画をいったん白紙に戻した上で、住民参加の下での新計画策定を求める報告書を提出した。

 

第4回に続く

 


【プロフィール】
京都府与謝野町長・山添 藤真(やまぞえ とうま)

1981年京都府生まれ。2004年フランス国立建築大学パリ・マラケ校に入学。06~08年フランス国立社会科学高等研究院パリ校に在学。10~14年京都府与謝野町議。14年与謝野町長に就任し、現在3期目。

スポンサーエリア
おすすめの記事