
大阪府箕面市長 原田亮
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子
2026/04/22 市民と職員の「声」に徹底的に向き合う~原田亮・大阪府箕面市長インタビュー(1)~
2026/04/23 市民と職員の「声」に徹底的に向き合う~原田亮・大阪府箕面市長インタビュー(2)~
2026/04/28 住宅都市のブランド価値と次世代への責任~原田亮・大阪府箕面市長インタビュー(3)~
2026/04/30 住宅都市のブランド価値と次世代への責任~原田亮・大阪府箕面市長インタビュー(4)~
大阪府箕面市。人口約14万人のこの自治体は、2024年に北大阪急行線が箕面萱野駅まで延伸したのを契機に、全国的にも珍しい人口増加局面を迎えています。この街で同年8月に当時38歳という若さで市長に就任したのが原田亮氏です。
大阪維新の会の現職を破っての当選は、府内の市長選で維新公認の現職が敗れる初の事例として注目されました。
しかし、就任直後に原田市長が直面したのは、組織内部の現実だったといいます。転職市場の活況により職員が民間に流出し、長期休職者も増加傾向にありました。
本インタビュー前編では、原田市長が就任直後から取り組んだ職員の処遇改善や技術系人材確保の課題、そして「外から来た宇宙人」という自己認識の下で、組織とどう向き合っているかについて伺いました。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)


原田市長(上)へのインタビューはオンラインで行われた(出典:官民共創未来コンソーシアム)
就任初日に 全職員にアンケートを実施
小田 箕面市は人口増加が続いており、明るいニュースが多い自治体という印象です。一方で、原田市長は就任直後から組織改革に着手されました。この改革の意図についてお聞かせください。
原田市長 まず大阪府全体の状況から説明させてください。大阪は維新の会派の首長が半分ほどを占めているため、多くの市町では職員の待遇を厳しくする「身を切る改革」が行われてきました。一方で今は転職市場が活況で、転職サイト等に登録した職員には、大手企業から高い年収のオファーが届きます。
そうすると当たり前のことながら、職員が民間企業へ転職していく。そんな状況が続いていました。
また、メンタルヘルス等が理由の長期休職者も増えていました。これに関しては、他の自治体でも同じ状況かと思います。
私が組織改革に踏み切ったのは、まずは組織の基盤をしっかりと立て直すためです。就任した当日には、「職員の皆さんは人の財と書いて〝人財〟です。私は人を大切にする職場をつくります」とお伝えしました。
そして実態を知るために、就任初日に職場環境に関するアンケートを全職員向けに実施しました。
小田 市職員の待遇について、議員時代から課題感を持っていらっしゃったのでしょうか?
原田市長 はい、議員時代から課題感として持っていた考えです。官民問わず全国的に人手不足で人材の獲得合戦が行われているのに、市役所ではあまり工夫がされてきませんでした。やはり不景気になれば、安定を求めて市役所の人気が高まるからでしょう。
しかしこれからの時代は、市役所であろうとも人材獲得や育成に投資をしなければ生き残れません。そこでまずは現状を把握するためにアンケートを取ったのです。
アンケートでは、働きにくいと感じるのはどんな場面か、ハラスメントはないか、挑戦したい仕事は何かなど、あらゆることを聞きました。
職員の皆さんからすれば、38歳の「異物」の市長が何をやり始めたんだと思ったでしょう。しかし私は職員の皆さんに、縦ではなく「横並び」であるということを伝えたかった。そのために、市役所を働きやすい環境にすることを最優先しました。
小田 職員の方々からは率直な意見は得られましたか?
原田市長 3700人ほどの職員たちが働いていますが、半数くらいから回答を頂きました。それを約10時間かけて読み込み、実態を把握しました。
自治体の文書は情報公開請求の対象になります。ただ、それでも組織の実態を可視化することが必要だと考え、市長としての実績をスタートする就任初日のタイミングで実施したアンケートでした。
小田 以降、就任後1年間で集中して行った組織改革は、職員の皆さんの生の声がベースとなったのですね。
原田市長 はい。待遇改善の面で言えば、任期付職員を常勤職員化し、給与の見直しを行いました。職場環境の面では、固定電話をPHSに、デスクトップパソコンは更新のタイミングに合わせてノートパソコンに換えました。
そのノートパソコンには、業務効率化のためのAI(人工知能)を導入しました。
職員アンケートには「会議室が少ない」「休憩する場所が少ない」という声も多かったことから、26年4月に箕面市として11年ぶりに実施する機構改革に合わせて、全ての部署に会議室を設けます。
また、これまで開放していなかった市役所の屋上を、山並みが一望できる広場に整備し、休憩スペースにしました。ここは職員だけでなく、市民の皆さんにも使っていただける場所として開放しています。
他にも「日本で一番厳しいカスハラ対策」や窓口時間の短縮など、窓口業務の改善も行いました。このように、1年間で徹底的に職場の環境改善に努めました。
小田 就任1年間で徹底的に改革を進められたんですね。その結果、職員の皆さんの満足度はどう変化しましたか?
原田市長 課長級以上の職員に市長を評価するか? というアンケートをしたところ、9割以上が「評価する」と回答してくれました。ここまで来て、ようやくいろいろな施策を前向きに進めていけます。
また、この間行った改革は、採用面でも良い影響があります。採用説明会で私が改革の取り組みを説明すると、(就職を)検討している方に箕面市が魅力ある職場だと感じていただけるようです。順調に採用申し込みを頂いています。
技術系人材を民間から公募、副市長に
小田 官民問わず、全国的に建築・土木職従事者が枯渇する中、原田市長が技術系の副市長を公募で採用したことも注目されています。この背景についてお聞かせください。
原田市長 箕面市では消防署や温水プールの新設などをはじめ、建築・土木系の仕事がかなり増えています。そんな中、実は新卒の建築・土木職の採用が0人でした。全く採用できていない。初任給の高さで民間企業の方に流れていくからです。
全国的に見ても、建築・土木職が市役所に入ってくれるのは「転職」であるケースが多いです。
箕面市は、行政系と技術系の2人の副市長を置く体制です。これまで技術系の副市長は、技術系の部長が就任することが慣例でした。しかし、市全体で建築・土木職が不足しているため、同じ人事を行うと職員がさらに不足してしまうという課題がありました。
ならば、外部から採用しようという意図で公募を行いました。
小田 副市長の公募には何人ほどの応募があったのですか?
原田市長 全国から80人弱の応募がありました。採用したのは、JR西日本に勤めていた40代の方です。私とほぼ同年代で、職員と一緒に成長していきたいという思いを持つ本当に素晴らしい方です。来ていただけて良かったです。
「建築・土木」といっても、土木系か建築系かで専門性が分かれます。多くの場合、どちらかの知識経験しか持ち合わせていません。高い専門性が求められる職種ですから当然です。今からでも知らない分野の方を勉強していただけるようなエネルギーを持つ副市長がいいと思っていました。理想の副市長人事ができたと思います。
小田 新たな副市長への期待が高まりますね。
原田市長 やはり民間出身なのでフットワークが軽いんですよね。営業力もあるので、民間事業者とのやりとりでも活躍を期待しています。
小田 今の箕面市には、民間出身の副市長と行政出身の副市長の2人がいらっしゃるということですね。お二人に対するマネジメントで、何か違いはありますか?
原田市長 私と民間の副市長は、市役所組織からすると「宇宙人」なんですよ。市役所の力学と違う人の動かし方をしてくるし、なんか訳分からんことを言ってくる未知の存在です。
そういった我々の宇宙言語をしっかりと市役所内部に翻訳するのが行政系の副市長の役割だと思っています。行政系の副市長は、過去の人事評価のデータから最もふさわしい人材を選出しました。民間の宇宙語を翻訳できて、行政のマネジメントもできる方です。
私は自分で全部やろうとは全く思っていません。市役所にはこれまで培ってきた仕事のやり方があるでしょうし、人の動かし方もあります。そこは行政系のベテランに頼るようにしています。
(第2回に続く)
※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2026年3月16日号
【プロフィール】

原田 亮(はらだ・りょう)
1986年生まれ。大阪大法学部法学科(政治専攻)卒業。
衆議院議員事務所勤務を経て、25歳で箕面市議会議員当選(当時全国最年少)。その後、大阪府議会議員を2期務める。
2024年8月、箕面市長に就任。

