【自治体DX(2)】自治体におけるデジタル変革の必要性と課題

前回は、昨今活発化してきた自治体におけるデジタル変革の意義についてご説明しました。今回はその必要性と課題についてご紹介します。

自治体におけるデジタル変革の必要性


このデジタル変革の必要性の流れは、国外の行政でも表れています。デジタルネーティブな住民が増え、国家間、都市間の競争に晒される中で行政のあらゆる部門において、デジタル化を前提とした行政運営が求められるようになってきているためです。

例えば、英国政府、オーストラリア政府、米国のニューヨーク市、カナダのバンクーバー市など海外の行政のあらゆる層において、デジタル化を推進する役職が置かれ、デジタル戦略を実施して、実行するようになってきました。

なお、これらの行政体には全て行政CDOまたはそれに類する役職が設置されており、自治体におけるデジタル変革の必要性は高まっています。

デジタル化とICT化の違い


さて、ここでデジタル化とICT(情報通信技術)化の違いについても触れておきたいと思います。日本ではテクノロジーの組織への実装を表現する際にICT化またはIT化と表現されてきました。このICT化とデジタル化はしばしば混同されますが、厳密には異なる意味で用いられます。

デジタル化は、組織のあらゆる部門や事業についてテクノロジーを用いて価値を創造し、変革するユーザー目線の概念です。一方で、ICT化は業務の効率化やセキュリティーの向上といった管理者目線の概念です。

従って、ICT化の部門は組織の一部門として設置されることが多いのに対し、デジタル化の部門はあらゆる組織に俯瞰的に対応できるよう位置付けられるのが海外の民間企業や行政体では一般的です。

 

デジタル変革への課題


 デジタル変革の背景と自治体におけるデジタル化の必要性について説明してきましたが、日本のデジタル変革は遅れている現状があります。

意識の課題


デジタル変革を自治体において実施する際に課題となるのは、職員の意識です。1990年代のパソコンの導入に始まり、自治体におけるテクノロジーの活用は主に業務効率化を主眼に進められてきたために、デジタル化をその延長線上で捉えようとする者が多いことが挙げられます。

前述したようにこのような意識は、テクノロジーによる行政事務の効率化や経費節減つまりICT化の概念であり、デジタル化の本質ではありません。デジタル化によって結果的に業務が効率化されることも多々ありますが、それは副次的な要素であり、行政のデジタル化において最も重視されるべきはテクノロジーの導入によって住民にとってどのような便益がもたらされるかというユーザー目線です。

従って、業務効率化・経費節減もデジタル化の重要な要素ではありますが、それらの要素はいったん脇において、住民の便益向上のためにいかにテクノロジーを活用できるのかという最優先事項に意識を集中させることが大切です。

例えば、テクノロジーの活用によっていかに自治体の内部業務が効率化されようとも、結果的に住民の便益が下がるようでは、ICT化とは呼べてもデジタル化とは呼べないことになります。

さらに、デジタル化においては、テクノロジーは情報通信関係の部署のみに関わることではなく、全ての部署に関わる前提条件です。テクノロジーの活用に対して行政内の全職員に当事者意識を持ってもらうことは非常に困難な課題です。

 

人材の課題


次の課題は、人材です。デジタル化の重要性を理解しても、実際に行政内部でデザインし、実行に移していける人材が不足している現状があります。特にジェネラリストが多い行政内部においては、適切な職員がいないケースがほとんどです。

また、デジタル化はICT化と異なり、単にアナログの業務をデジタルに置き換えるだけでなく、その結果どのように住民の便益がもたらされるのかまで含めたデザイン能力が問われるため、単にICTシステムに明るい人材を外部より招聘したからといって解決するわけでもありません。

行政、テクノロジー両分野に一定程度の知見を有し、総合的にデジタル化をデザインできる人材は、官民の人材の流動性が極めて低い日本においては非常に稀少です。

 

組織の課題


最後の課題は、組織です。デジタル化の推進に資する人材が見つかったとしても、適切な役割と権限を与えなければ機能しません。最も起こりがちな事例は、そのような人材を行政の情報通信関連の一部署に配置してしまうことです。これはICT化とデジタル化を混同しているために起こる配置です。

また、権限も重要です。民間企業でもCDOは役員級で組織全体を俯瞰できる形で適切な権限を伴って置かれることが一般的ですが、自治体であれば首長の直轄に配置することが望ましいです。

 

次回は、今後の自治体DXの展望についてご説明します。

  

(株式会社Public dots & Company取締役(介護福祉士)福島県磐梯町CDO(最高デジタル責任者)一般社団法人Publitech代表理事・菅原直敏)

 

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