“核心的な公民連携”のあり方などを論じる本連載。第2回は「どんな自治体もできる公民連携促進策」です。
この記事は【自治体通信Online Special Contents】からの転載です。
(第1回はこちら)
【目次】
■ 余力がない…
■ 大きな地域間格差に
■ 「よこらぼ」
■ 縛りが多いと
■ ホンネの発信が状況を変える
余力がない…
自治体が公民連携に取り組もうとする場合、次の“3つのあり方”のどれか、もしくは組み合わせで推進することが多いと思います。
ひとつは「公民連携室」といった専門部署で民間の政策アイデアを受け付けるケース。
たとえば、私が市議会議員を務めていた横浜市(神奈川)では、民間事業者などからの公民連携に関する相談や提案の受付窓口として政策局に「共創推進課」を設置しています。
2つめは、自治体がテーマを設定して民間からアイデアを募るケース。
これも横浜市の事例ですが、同市には「テーマ型共創フロント」という制度があり、「住宅地の市有地活用についてのアイデア募集」「消防機器資材の開発改良」「自転車保険の加入促進に関する連携」など多種多様な公共政策領域で民間アイデアを募っています。公民連携の推進と同時に地方自治への住民参画を促すねらいもあります。
そして3つめは、首長のリーダーシップや職員個人の問題意識で実現させるケ-ス。これまで述べた“仕組み”ではなく、属人的な“頑張り”で公民連携を推進するパターンです。
横浜市のような大規模な自治体なら専門部署を設置して専任職員を配置することも可能でしょう。しかし、人的リソースや予算に余裕がなく、仕組みをつくれない自治体では首長や職員といった個人の頑張りが公民連携の推進力となっています。
ところが、もっとも多いパターンは、仕組みはなく、問題意識はあるものの目の前の業務に忙殺され、公民連携をやろうにも余力がない―。こんなケースなのではないでしょうか。
公民連携は、言うまでもなく、地域課題の新しい解決手法として期待され、さまざまな成果も各地の自治体からも出ています。しかし、積極的に取り組んでいるのは一部の自治体にととどまり、なかなか広く波及しないのはなぜか。
その理由は、リソースが不足のため、多くの自治体に「仕組みがない」ことにくわえ、意欲があっても職員の「余力がない」ことが原因であるように感じます。
大きな地域間格差に
こうした現実は、自治体の将来に黒い影を落としています。
公民連携を推進できる自治体では公共課題の解決にヒト・モノ・カネ・情報の民間リソースを活用できますが、推進できていないところは自治体単独のリソースで地域課題と向き合わざるを得ないからです。その結果、何が起きるか―。
自治行政が専門のある大学教授は「公民連携を推進している自治体は、従来の行政にはなかった地域課題解決の新しい知見を豊富に蓄積できる。公民連携ができていない自治体は前例踏襲型で地域の問題に対処せざるを得ない。そのため、長期的に両者の間には大きな地域間格差が生じるのは避けられない」と指摘します。
その通りだと思います。だからこそ、公民連携を切実に必要としているのは、仕組みをつくりたくてもつくれない自治体、目の前の業務に職員が忙殺され、公民連携をしたくてもできない自治体だと思います。
「よこらぼ」
公民連携に踏み出せない理由は、忙しくて手が回らないことも大きいとは思います。しかし、「公民連携のやり方がわからない」「誰に、どう頼んでよいのかわからない」ということがもっとも大きな“壁”になっているのではないでしょうか。
その解決策のひとつとして、公民連携のノウハウや事例をシェアできるプラットフォームづくりがあります。
公民連携の進め方だけではなく、地域課題の解決に貢献してくれるパートナー企業なども簡単に探せる仕組みがあれば、日本全体で公民連携がより加速するでしょう(私自身、自治体と民間を橋渡しするプラットフォームづくりに取り組みたいと考えています)。
しかし、現状、そうしたプラットフォームはありません。それでも、どんな自治体もできる公民連携促進の取り組みはあると思います。モデルになるのは横瀬町(埼玉)の「よこらぼ」(横瀬町とコラボする研究所)です。
平成28年にスタートした横瀬町独自の公民連携プラットフォーム「よこらぼ」は、誤解を恐れずに言うと自治体の“敷居”を低くすることで、それまで町独自のリソースだけで取り組んでいた公共領域の課題解決と地域の魅力度向上に民間を続々と巻き込むことに成功しています。