自治体オープンデータの現状と可能性(3)


横須賀市議会議員

株式会社Public dots & Company調査研究員・小林伸行

(過去の投稿はこちら、第1回第2回

自治体オープンデータの課題

とはいえ、諸外国と比べれば日本のオープンデータは緒に就いたばかりです。多くの自治体では提供しているデータの量も質も十分ではありません。事例として試行段階の取り組みも多く、市民生活に実質的な便益を生むようなサービスももっと登場するはずです。「卵が先か、鶏が先か」の議論もありますが、オープンデータについては、まず卵を産むべきではないか。つまり、使い途を案じず自治体がどんどん情報を出すべきでしょう。

もともと筆者は、本来ならば国による一元的なオープンデータが望ましいと考えてきました。国は、地方自治体に対して推進の旗を振りますが、結局、作業をするのは1800弱の自治体です。各自治体で同じような公開作業をしなければならず、重たい行政組織では意思決定に至る内部調整の労力もバカにならない。分散型の対応はコストがかさみます。

これに対し韓国では、アジア通貨危機で国家破産の危機に瀕し公務員を大幅削減したため、行政効率の向上に迫られ1998年から自治体標準システムを整備しています。全ての自治体が同じ行政システムを使用し、ありとあらゆる業務をIT化しオープン化したのです。一方の日本では、国が定めた同じような業務をしていながら、自治体ごとにそれぞれ行政システムを組んでいます。国はITベンダーに遠慮しているのか、システム統一化を図ろうとしません。韓国のようにシステム統一し、国が一元的にオープンデータ化するのが、最もスマートな方法でしょう。

何といっても、横須賀市職員が訴えていたように、やはり規模のメリットも大事です。自治体ごとに公開されているデータとされていないデータがあったり、公開する書式が違ったりすれば、データ活用のコストは増えます。昔のスーパーコンピューター並みのCPU(中央演算処理装置)が家庭用ゲーム機に搭載される時代に、処理するデータ量は問題となりません。共通化されれば、民間事業者も手間をかけずにマーケットを広げることができ、サービス提供の意欲も高まります。

しかし、国を待っているわけにはいきません。筆者がそう感じたのは、横浜市の動きを見たからです。以前、鈴木太郎・横浜市議が紹介したように、自民党横浜市連を中心に議員立法で「官民データ活用推進基本条例」が策定されました(publab.jp 議員提案条例の制定とその後の展開(1)~(6))。前述の通り「官民データ活用推進基本法」によって、国と都道府県にオープンデータ推進が義務付けられましたが、市町村は努力義務にとどまっていました。そこで、横浜市は独自に義務化したのです。横浜市会の取り組みを冷ややかに見ていた筆者も、2017年の条例制定後の歩みを見て考えを改めました。横浜市オープンデータポータル(※)では、多くの情報が見やすく提供され、民間との協働も相次ぎ、彼我の差は開くばかりです。

議員と職員はオープンガバメントの伴走者に

ところで、市民にとって行政が出す情報は膨大で、しばしば難解です。だからこそ「市民にはなかなか理解できないし、誤解を生むこともあるから」と、逆に行政側が情報を出し惜しみすることもあったように思います。今後、オープンデータが世にあふれたとき、市民や事業者のナビゲーターを議員や行政職員が務めることができれば、社会実装をより加速できるはずです。

そのためにも、官民連携のプラットフォームである株式会社Public dots & Companyには期待して参画しており、自分自身も知見を磨いて備えていくつもりです。共に社会を変革できる方々と一緒に歩めれば幸いです。

※=横浜市オープンデータポータル https://data.city.yokohama.lg.jp/

(終わり)

 

プロフィール

横須賀市議会議員 小林伸行 こばやし・のぶゆき

1975年福島県生。筑波大卒。地域情報誌と環境コンサルティングに携わった後、政治を志す。政策秘書資格試験に合格後、国会議員秘書を経て2011年より現職。無所属三期目。マニフェスト大賞実行委員会事務局長。かながわオープンデータ推進地方議員研究会所属。株式会社Public dots & Companyのサロンメンバー。

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