縛りが多いと

「よこらぼ」ではフリーテーマで民間から「やりたいこと」を募り、行政と民間がオープンにディスカッションしながら内容を煮詰め、町は実施にあたっての法的課題の解決や地域をまとめるサポート役に徹します。

「町がやりたいこと」をアウトソースするのではなく、提案から実施まで一貫して民間主導。民間の自由度がきわめて高い点が大きな特徴です。

公民連携を実施する際、「〇〇をなんとかしたい」と自治体が課題設定することは多く、課題解決策すらも自治体があらかじめ決めてしまうことは珍しくありません。

たとえば「健康寿命延伸を目的としたカフェスタイルの高齢者ためのコミュニティ施設をつくりたい。場所はここで、広さはこのくらいで、営業時間は○時から○時まで」といったようなケースですね。

このような“縛り”が多いほど「民が官に合わせる」ことになり、民間の自由度は低くなります。また「予算がないから企業に投げよう」という真意も見えます。

これは非常にもったいない公民連携です。「カフェスタイルの高齢者コミュニティ施設」といった行政が考える解決策より、もっと実効性が高く、もっと低予算で効率的なノウハウや政策アイデアをもっている民間企業などを“縛り”によって結果的に排除してしまっているからです。

ホンネの発信が状況を変える

これとは真逆のスタイルが「よこらぼ」です。民間側のやりたいプロジェクトが先にあり、自治体側は「それが町のためになるならお手伝いしますよ」というスタンス。「官が民に寄り添う」カタチです。

「よこらぼ」で実現した事業やプロジェクトは、IT、ドローン、遠隔医療相談などの先端分野からスポーツやアートのイベントなど、内容は多岐にわたり、地域活性をもたらしています。それまではなかった、上場企業や大学をはじめ、外資系、ベンチャーなどの企業とのつながりも新たに生まれています。

「よこらぼ」で多様な公民連携プロジェクトが横瀬町で実現している(画像は「よこらぼ」のサイトより)

「よこらぼ」によって横瀬町は町の可能性を拡張しています。“縛り”を極力設けず、自治体がサポート役に徹して民間の高い自由度を担保すれば、小規模な基礎自治体でも多様で魅力的な公民連携を推進できることを証明してみせた、とも言えます。

「誰に、どう頼めばいいのかわからないから公民連携に踏み出せない」―。こうした悩みにとらわれている自治体は、思い切って「誰に、どう頼んでいいのかわからないんです」「民間のみなさんの自由な提案が欲しいんです」と発信することで難しい状況を転換できるかもしれません。

(続く)

自治体通信Onlineは全国の自治体トップ・職員・議員に贈る自治体の"経営力"を上げる情報サイトです。

スポンサーエリア
おすすめの記事