教育委員会は市の組織中でも変えるのが難しい「聖域」ですよね。そこをここまで動かせたのは、【当事者の声】と【全中学校の校則の分析データ】という両者をしっかり揃えたからだと思いました。まさにEBPMで教育委員会を動かした好事例です。

実はそれだけではないのです。それと同時にメディア対応も行いました。議会質問は午前中だったのですが、同じ日の午後にTG研究会と共に記者会見を行い、校則の調査結果を公表しました。地元紙2誌、全国紙3誌、テレビ局2社が参加し、各社から「浜松市のブラック校則」といった形で報道されました。続いて文春デジタルに掲載され、2日間でコメントが4000に上るなど、社会の問題意識として広がりました。その後もテレビ、新聞などの取材が続きました。

 

私もこれらの記事がSNSでシェアされて何度も目にしました。全国で「浜松市のブラック校則」がバズってました。それだけ世論の後押しがあれば市も動かざるを得ないですね。

そこは戦略的に進めました。メディア対応に関してはTG研究会に前面に出ていただき、議員である私は極力表に出ないようにしました。議員はとかく自分が目立ちたがる傾向がありますが、メディアはそれを嫌いますからね()

当事者、団体、事実とメディア、うまく絡めて進めていく必要があると考えました。

 

そこまで考えて進めていたとは驚きました。議会質問から3か月ですが何か変化はありましたか?

教育委員会からの指導はすぐに実現しましたが、先ほど申しましたように、校則は各校長の判断なので、そこをどう動かすかですね。教育委員会の指導を受けて「靴の色は白」という指定を「何色でもよい」とすぐに変えた学校もあります。それもどうかと思うのですが・・・というのも校則については「どのような手順でどう修正・加筆していくのか、どこにも書いてない」んです。今後の課題です。

現在のところ、目に見える成果としては、新聞の切り抜きをもって三者面談に臨んだ保護者が出たり、自分事として新聞を初めてちゃんと読んだという生徒が出たりと、今回の件を通して学校や社会との関わり方について考えてくれる、保護者や生徒が増えてきたのが嬉しいことです。

校則に関する法的な根拠についても調べました。年明けに弁護士会に相談しまして、弁護士からは「校則はルールというより目標のようなもの。守らないと学校に入れない、授業を受けさせないといったことがあれば【教育の義務】を果たしてない、つまり違法であると言える。また指導であれば、教育の効果や合理性を明らかにしなければならない」という見解をいただきました。教育は子供の権利であり、校則を盾にそれを阻害するようなことはあってはならないということです。今後この解釈を前提に、何かあれば弁護士会の「子どもの権利委員会」への訴えなど進めていきます。

 

今後浜松市の校則は変わっていくのでしょうか?

校則を変えるとなると冊子等の差し替えなどもあるので、新学期の4月に刷新される可能性があります。今はそこを注視しています。4月に調査します。

制服に関しては、今の制服を丸ごと変えるのはとてもエネルギーが必要です。ですから浜松市の「標準服」を提案しています。「標準服」とは、シャツ、ジャケット、ベスト、スカート、ズボン、リボン、ネクタイなどの「基準服のパーツ」があって、その中から、好みや、暑さ、寒さの感覚に応じて、組み合わせを子ども自身が選択できるものです。ポイントは、男子は「この形」、女子は「この形」と2つにキッチリと分けないこと、男女の枠にはまらない特にジェンダーに違和感を持つ子どもたちや、暑がり寒がりの子ども達にも対応できることです。浜松の中学生は、既存の制服を着てもいいし、先に説明した市の標準服を着てもいいという選択型になったらいいなと提案しています。これは北九州市の事例を参考にしました。

標準服

 

お話を聴いていると、鈴木さんが真に願っているのは「子供たちが多様性・個性を持ったまま成長してほしい」ということなんだな、と伝わってきました。

昭和の時代は働き手に同質化が求められたかもしれませんが、これからは多様性・個性の時代です。同質化した人材は不要となり、AIやロボティクスに置き換わっていきます。

しかし今の中学校は、同調圧力が強い場所です。他の生徒と違うことがいじめや不登校の原因となることもあります。

今の子供たちが未来を逞しく生きていくためにも、理不尽な校則によって見えない鎖で自分たちを縛ることがないよう、私たちが手を差し伸べていくことだと思っています。

 

 

(インタビュアーより)

感慨深いです。自分でも良いインタビュー記事だと思います。私の拙い文章からでも、鈴木議員の戦略的な活動や哲学が伝わります。こうして地域のために汗をかく地方議員が日本全国に沢山いることを私は知っています。そしてその活動を「私がやりました!」とひけらかすこともしない。鈴木議員も、お会いすると偉ぶらないごく普通の女性に見えます。

こうした、「実はすごい地方議員の活動」をこれからもどんどん発信していきたいと決意を新たにする小田でした。

 

プロフィール

鈴木恵(すずき・めぐみ)

浜松市議会議員

自動車販売会社にて女性営業第1号として、バンバン車を売る。子どもの預け合いを通じて、母親たちのネットワークづくりをするなど積極的に活動。

子育て支援が政治的課題でなかった当時、仲間で1200名余の子育て世代のアンケート調査をしたり、その結果を行政や企業などに提案していく活動をしていたところ、この活動を応援してくれた女性グループから市議会に出ないかと誘われたことがきっかけで、立候補。地盤、看板、カバンのない中からのスタートし、初当選し、現在5期目。

現在は、新型コロナウィルスへの感染予防対策によって、影響の受ける人たちを少しでもやわらげることとともに、市民が「これおかしいな」「変えていきたいな」と思った時、市政や社会などに声を届ける方法をまとめていきたいと奮闘中

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