議員提案条例の制定とその後の展開(5)

鈴木太郎 (横浜市会議員、株式会社Public dots & Companyエバンジェリスト、明治大学客員研究員)

 

前回に引き続き、「横浜市官民データ活用推進基本条例」制定後の動向についてご紹介します。

(過去の記事はこちら。第1回第2回第3回第4回

3.横展開を模索

条例制定後、計画策定を所管する常任委員会でリーダーシップを発揮する傍らで、同様の条例を他都市でも展開できないか模索したいとの声が国会議員から上がってきました。自民党本部IT戦略特命委員会および超党派のデジタルソサエティ推進議員連盟から招聘され、横浜市会での「横浜市官民データ活用推進基本条例」制定に至る足取りと、今後の展望を紹介しました。両団体共に官民データ活用推進基本法の制定に関わった国会議員が所属しているので、法の趣旨を地方自治体のレベルで具現化する取り組みとして評価していただきました。参加してくださった国会議員が地元に持ち帰り、地方議員と協議した結果、北九州市では同様の条例が議員提案で成立しました。

4.横浜市官民データ活用推進計画が完成

こうした一連の取り組みを経て、2018年5月に横浜市官民データ活用推進計画が完成しました。これは政令指定都市としては初の取り組みです。計画は次の通り5章から成り立っています。

第1章 横浜市官民データ活用推進計画について

1.計画の目的
2.計画の位置付け
3.計画期間

第2章 官民データを取り巻く状況

1.横浜市の現状と課題
2.横浜市のデータ活用に係るこれまでの取り組み
3.ICTの進展とデータ活用への期待の高まり

第3章 基本方針

1.官民データ活用の推進に関する施策の考え方
2.官民データ活用の推進に関する施策

第4章 官民データ活用の推進に関する施策

1.データを重視した政策形成と基礎的データの整備の推進
2.行政に係る手続のオンライン化の推進
3.行政が保有するデータの活用の推進
4.マイナンバーカードの普及および活用
5.情報通信技術の利用の機会等の格差の是正
6.情報システムに係る規格の整備および互換性の確保
7.官民データ活用に関する教育および普及啓発
8.先端技術・データを活用した取り組みの協働・共創による推進
9.市民、大学、企業等と連携したデータ活用の在り方に係る調査・研究

第5章 計画の推進

1.計画推進に当たっての留意点
2.推進体制の全体像
3.オープンイノベーション推進本部による推進
4.計画の進捗管理

 

第4章の施策を「基盤・環境の整備」「データの整備」「データの活用」の観点から整理し、また、データ活用の場面として、「庁内」と「市民・大学・企業等」を想定すると(図2)のような全体像にまとめられます。

図2 出典:横浜市

また、さまざまな技術の進展を取り入れてデータ活用を進めることで、本条例の目的である「効果的・効率的な市政運営」「市内経済の活性化」「安心・安全・快適な生活環境」の実現を目指します。
議会側が議員提案で条例を定めることにより政策の基本的な考え方を示し、それを受けて市長以下執行部が政策を具体化する行政計画を策定することで二元代表制を象徴する政策パッケージが完成しました。また本計画の特色として、市民・大学・企業等、行政サービスの受益者との間でのデータ活用という側面と行政内部でのデータ活用という側面を分けて整理したことが挙げられます。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった新たな技術を活用した、より便利で安全な行政サービスの在り方を追求すると同時に、行政運営の方向性をデータやエビデンスに基づく政策推進へと変革していく指針として示したことにもなります。

 

鈴木太郎(すずき・たろう)

1967年横浜市生まれ。横浜市会議員(5期)。明治大客員研究員。三菱銀行(現三菱UFJ銀行)、外資系金融機関、政治家秘書、米マイクロ・ストラテジー本社勤務を経て現職。民間企業での勤務経験を活かし、「官民データ活用推進基本条例」「将来にわたる責任ある財政運営にかかわる条例」「中小企業振興基本条例」などを議員提案によって成立させる。現在は民間と行政をつなぐ公民連携に取り組む。米シラキュース大情報研究大学院修士課程修了、上智大外国語学部卒。

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