ウィズコロナ時代に「自治」を考える ~「#墨田区マスクプロジェクト」と議会・行政~(中)

東京都墨田区議会議員
佐藤 篤

2020/8/3 ウィズコロナ時代に「自治」を考える ~「#墨田区マスクプロジェクト」と議会・行政~(上)
2020/8/5 ウィズコロナ時代に「自治」を考える ~「#墨田区マスクプロジェクト」と議会・行政~(中)
2020/8/7 ウィズコロナ時代に「自治」を考える ~「#墨田区マスクプロジェクト」と議会・行政~(下)


マスク転売規制という壁

小売り販売網を構築するに当たり、大きな壁となったのが、マスク転売規制(国民生活安定緊急措置法施行令)だった(表1)。マスク製造工場は、このプロジェクト以外にも、100枚単位での販売を行っていたが、これが経済産業省の見解によると、「衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者」(同施行令第2条)に該当し、私たちのこのプロジェクトを通じて小売りする行為は、転売行為と位置付けられるというのだ。私たちのプロジェクトは、これにより、(暴利ではなく)一定の利益を得て市場原理によって販売網を広げて、区民の手にマスクを届けるという術を失った。こうした善意の取り組みまでも規制されてしまうというのはなかなか理解し難いものであったが、法令の規定なのでやむを得ない。

(表1)◆国民生活安定緊急措置法施行令 <出典:総務省行政管理局ホームページより>
(衛生マスクの転売の禁止)

第二条 衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。

手弁当で販売することに

ここで頓挫するわけにはいかないので、自分が販売してもいい、と申し出てくれた方々に、このことを一人一人説明して回った。店に置いて販売したり、個人で販売したり、これには一定の手間がかかるわけだが、「利益を求めているのではなくて、区民にマスクを供給するというこのプロジェクトに共感しているので、気にしないで」と、温かく理解してくださった。これにより、このプロジェクトは一切の利益を得ない、文字通り「手弁当」でスタートすることとなった。

区民からの反響

販売を始めると、さまざまな反響があった。特に3店舗500枚を販売してくれたあるコンビニエンスストアでは、半日で完売する盛況ぶりだった。蕎麦店では、マスクをきっかけに初めて出前をとってみたという方がその感想をSNSに上げてくれるなど、新たなつながりができた。本区は「人つながる墨田区」をキャッチフレーズとして、政策を進めてきた。人が分断されるコロナ禍においても、協働の取り組みを行い、新たなつながりを生むことができたことは、禍の中にあって一筋の幸せな出来事であった。

こうした取り組みを進めるうちに、メリヤス業以外にも、ウレタン等加工業(サトウ化成)およびプラスチック真空成形加工業(吾嬬製作所)も参入し、フェイスシールドを作ることになった。コロナ禍をきっかけに、各産業のコラボレーションが進み、区民に地場産業の素晴らしさに触れていただくことは、区議会議員として心から嬉しい出来事であった。

ウィズコロナ時代の自治とは

私は、自由民主党町会・自治会制度推進議員連盟(ぬくもり議連)の事務局長を務め、生まれ育ったまちの町会役員も務めている。昔ながらの下町に生まれ育って、まさに醤油の貸し借りをするまちに育ってきた。しかし、ウィズコロナ時代には、人の接触を控えなければならなくなり、自治の在り方が根本的に変わったと考えている。町会・自治会もさることながら、あらゆる自治組織が、オンライン等非接触型の動きを考えていく必要が出てきた。しかし、これは効率化の契機であるかもしれない。一堂に会さなくてもスキマ時間でどこでも会議をすることができれば、自治組織再生に向けて、ピンチをチャンスにすることができるかもしれない。

今回の#墨田区マスクプロジェクトは、まったく面会したことのなかった人間が、ネット上の呼び掛けを中心に集い、一つの形になった。

翻って、私は区議会議員でもあるわけだが、こうした動きは、議会や行政にとっても学ぶべきところが多いのではないかと考えている。これまで行われてきた住民意見を集約する手段も、大きく変容を強いられている。

「下」に続く


プロフィール
佐藤篤さん写真佐藤 篤(さとう・あつし)
東京都墨田区議会議員
1985年東京都墨田区生まれ。麻布高等学校卒業。早稲田大学政治経済学部を3年次で飛び級し、同大学院法務研究科修了。法務博士(専門職)。米国外資系法律事務所に勤務、2011年墨田区議会議員選挙初当選、現在3期目、墨田区議会副議長を務める。子どもの事故予防地方議員連盟会長。マニフェスト大賞(早稲田大学・毎日新聞社)優秀政策提言賞受賞。地方議会改革、政策法務、生活困窮者支援に関心をもって活動中。

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