若者と政治をつなぎたい
全世代の声が届く、まっとうな政治を目指して
西東京市議会議員
田村 ひろゆき
2020/11/17 若者と政治をつなぎたい(前編)
2020/11/19 若者と政治をつなぎたい(後編)
コロナ禍に生まれた新しいつながり
コロナ禍では、田村議員の活動にどういう影響がありましたか。
市政報告会の会場が、会議室からオンラインに替わりました。また、インターネットを通じて市民の声を募集するアンケートを実施しました。「コロナ対応に関して、西東京市への要望はありますか?」という問い掛けでしたが、幅広い世代から多数の声が寄せられました。30〜40代からのご意見が多く、20代や中高生の声も集まりました。「学校の休校・再開は慎重に」「市内の商業施設が密」「市からの情報発信が少ない」など、切実な声ばかりでした。中学生からは「オンライン授業は嫌。授業は直接受けたい」という声も届き、なるほど、当事者ならではの声だなと思いました。これらの声は、なるべく編集せず〝生の声〟として、市のコロナ対策本部に届けました。行政に届けたこと自体も、市民にフィードバックしました。
このように新たな形での市民とのつながりができたのは、コロナ禍での大きな出来事でした。今回、声を多く寄せていただいた中高生から30代というのは、投票率が低い世代です。そういう世代の方々に「議員に声を伝えるのは大事なんだ」「私の声をきちんと届けてくれる人がいるんだ」と気付いてもらえたのではないでしょうか。
ウィズコロナ時代、若者と政治の距離は近づいたのでしょうか。変わらず遠いですか。
今回の新型コロナウイルスは「関係ない人がいなかった」ため、全員が自分事の問題として、いろいろと思うところがあったのではないでしょうか。安倍晋三総理大臣(当時)の一言から全国一律で休校になったり、一部の政治家の意向で給付金の対象や額が変わったり、政治と生活が密接に関わっていることを、身に染みて分かった方もいると思います。特に子どもたちの学校生活は、影響がとても大きかった。各自治体の教育委員会の判断によって、休校・再開の時期や、卒業式・入学式の有無、オンライン授業の有無などの対応が、大きく分かれました。自分がどこに住んでいるかによって、自分の学校生活が大きく変わることが、よく分かったと思います。「これは他人事じゃない」という感覚を。
その感覚から、選挙へ足を運ぶことにつながってほしいと期待しています。実は西東京市議会議員選挙は、クリスマス前後に実施しているせいか、非常に投票率が低いです。前回選挙(2018年)で全体の投票率が36・84%、年齢別の投票率を調べてみると、25歳が14・84%で最低、年代別でも20代が最も低く17・42%と、極めて低い数字となっています。これを1%でも2%でも改善したいと考えています。
若者の声が届く政治を実現したい
若者と行政という視点では、これからどんな活動をしたいですか。
西東京市では2年前「若者サミット」を開催しました。若者に自由に政策提案をしてもらい、「駅前広場を空中庭園にして、大人も子どもも遊べる場所に、夜は星空シネマに」「西東京市産の野菜を使ったスムージーを売るアンテナショップをつくる」など、とても興味深い提案もありました。しかし、残念なことに予算を伴っていなかったため、現時点で実現に至ったものはありません。
一方、予算を伴った取り組みをしている自治体もあります。愛知県新城市の「若者議会」では、若者の提案に予算を付けて、実際に図書館の改修やイベント開催などを若者目線で実現し、成果を挙げています。
西東京市議会には「子ども議会」を開く計画があるのですが、ここでは子どもの自由な提案までで終わらせないでほしいと思います。しっかり予算付けをして実現させ、単なる真似事にしないようにと意見を出しています。子どもたちと一緒にまちづくりができたら、と考えています。
田村議員がここまで「若者」という視点を大切に活動していらっしゃるのはなぜですか。
基本的な考え方として、議員・議会は市民の代表です。100人の市民がいたら、100人の意見がきちんと反映される意思決定であるべきだと思っています。ただ、今の議会の意思決定の中に色濃く反映されるのは、どうしても〝シルバーデモクラシー〟。議員の年齢も、投票に行く人も、政治や行政に意見する人たちも、年齢層が偏っているのではないでしょうか。選挙に行く50〜70代の声は大きく届きますが、子どもも含めて若い世代の声は届かず、政治から置いてきぼりになってしまいます。でも、この町で長く生きていくのは、若者世代。さらに言えば、赤ちゃんや子どもが一番長く住み続けます。そういった世代の皆さんに、今の市政で起きていることをきちんとお伝えして、逆にご意見を頂いていく。年齢に偏りなく、全世代の声が政治に届くことが、まっとうな意思決定につながるのではないでしょうか。
西東京市は2018年、「子ども条例」を作りました。そこには、まちづくりに子どもたちの声を反映させていこうという理念があります。学校のことも、この町のことも、18歳にならないと発言できないわけではないはず。有権者ではないけれど主権者である、18歳未満の人たちの声にも耳を傾けることは、市政を担う上で、とても大事なことなのではないでしょうか。
【インタビューを終えて】
「若者と政治をつなぎたい」。田村議員のつなぎ方は、硬い「パイプ役」や巨大な「架け橋」といったイメージとは異なります。手と手を取り合う握手のような、料理にとって重要な役割を果たすパン粉や卵などの「つなぎ」のような、優しくて親しみやすいつなぎ方。街と町をつなぐ鉄道が大好きだという田村議員は、寝台特急「北斗星」に乗った時、旅する老夫婦と乗り合わせ、ピザをごちそうになったり、老夫婦の素敵なエピソードを聴いたりと、とても温かい時間を過ごしたそう。親しみやすい田村議員だからこそ、老夫婦が話し掛けてきたり、中学生からもインターネットを通じて意見が届いたりと、市民と政治を優しくつなぐことができているのではないでしょうか。
これから田村議員が、政治の中からどんな形で若者を引き寄せ、若者と政治をつないでいくのか、目が離せません。
(おわり)
【プロフィール】
田村 ひろゆき
西東京市議会議員
1978年西東京市生まれ。中央大学法学部政治学科卒。大学在学中に議員インターンシップを運営するI-CAS設立。元衆議院議員秘書、武蔵野大学職員、旅行会社社員。2018年12月の西東京市議会議員選挙で初当選。無所属1期目。
政治をわかりやすく!徹底した情報公開をモットーにレポート発行、SNSでの発信などを行う。
47都道府県を制覇した乗り鉄派。海外は20か国以上。コロナ禍の下では遠出を自粛し、地元食べ歩き情報を発信。