環境対策のプロとして、汚染物質に真正面から立ち向かう

本目 今はどんなお仕事をされているのか、具体的に教えていただけますか?

竹内さん 議員を辞めた後は、1年1ヶ月英会話学校に勤め、その後、中途採用で東芝環境ソリューション株式会社に就職しました。主任からスタートして、2年半でグループ長(課長職)に、4年半で部長に昇進しました。私が率いる環境フィールド部では、土壌汚染、地下水汚染、埋設廃棄物対策、石綿アスベストや金属ナトリウムなど有害危険物の除去、危険な設備の解体、建屋の解体などを担当しています。企業や研究機関、教育機関、個人のお客様も含め、全国対応で負荷の高い環境課題を一つ一つ解決していく仕事をしています。

防護対策をして汚染物処理を実施

防護対策をして汚染物処理を実施

本目 例えば土壌汚染への対応というと、具体的にはどのように行うのですか?

竹内さん いろいろな方法があるのですが、土壌汚染対策法に規定のある特定有害物質で汚染されているところは掘削除去したり、水に溶けないようにしたり、封じ込めたり、薬液注入をしたりします。清浄な土と入れ替えるのは費用が掛かりますが、対応としては万全です。地下水汚染では遮水壁を打設して流出を防止することもあります。土地の資産価値やお客様側の予算、行政からの指導、その後の土地の利用状況に応じて、さまざまな対応が考えられます。

本目 いろいろな方法があるんですね!よく出張に行かれているイメージなのですが、どんなお仕事で出張が多いのですか?

竹内さん 全国各地に環境フィールド部の担当者が散らばり、そこでお客様第一の視点で汚染対策や危険物の除去などをしているので、その仲間の様子を見るために、そしてお客様の御用聞きをするために、あちらこちらへ飛び回っている感じです。私も入社当初は一担当者として汚染対策の計画立案、実施、行政との協議、具体的な施工などをしていましたが、今は管理職として安全管理、労務管理、原価管理、品質管理などのマネジメントをしています。

本目 なるほど、竹内さんのお仕事の大枠がイメージできてきました。今のお仕事で、議員時代の経験が活かせていることはありますか?

竹内さん それがね、実はすごく活きているのですよ。人生において、ゆりかごから墓場まで、どの年齢であっても、行政との関係を切り離すことはできませんよね。そういう広い視点や長いタイムスパンで考えることが大事だと、議員をしていた時に気づくことができました。それが今の仕事にとても活きています。埋設されている汚染源は何十年も前に起因していて、それを令和の時代になって私たちが対策することになるのですから、長いタイムスパンの仕事ですし、人の健康被害を未然に防ぐためには広い視点も必要なのです。

また、議員10年目にして議長になれたのは、会派を問わず若手からベテランまで仲良くさせていただき、議長に推挙していただいた経緯があります。あの時にコミュニケーション能力が得られたからこそ、今の会社でも新しい人間関係を築くことができています。上司・同僚・部下の皆さんは本当に良い方ばかりで、働きやすい職場環境の中、順調にキャリアを積ませていただき、とても感謝しています。

仕事が変わってもぶれない軸は、環境と社会への思い

本目 議員時代に吹田市の緑化を目指されていたことや、現職での環境汚染対策のお話を聴きますと、キャリアの軸とされているものは、やはり「環境」なのでしょうか?

竹内さん そうですね、やっぱり「環境」ですね。廃棄物処理って、誰も進んではやりたがらないのです。例えば、一般廃棄物の回収のため、収集車でまちを回ってくださる方がいらっしゃいますよね。誰かがやらなければならない大事な仕事です。廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。産業廃棄物は、そこから特別管理産業廃棄物に分かれます。私たちが主に扱っているのは、その特別管理産業廃棄物(特定有害物質を含む産業廃棄物)という人体に有害な汚染物です。そういう廃棄物に対して、環境負荷低減を使命に、私たちは真正面から勝負しています。適正に、適法に処理をすることでお客様からも喜んでもらえますし、地球環境保全にも貢献していることになります。そういう意味では、私のキャリアの軸として「世のため、人のため」という考え方があり、東芝グループの経営理念「人と、地球の、明日のために。」との共通点というか、深いつながりがあると感じています。

また、誰かがやらなきゃいけないこと、難題と言われている土壌汚染、地下水汚染、埋設廃棄物処理に対峙していることが、自分に合っていると思っています。自分の経験、ノウハウ、スキル、国家資格も含めて、自分の力が仕事に活かせるのは大きな喜びです。「どんな離島や山奥でも、環境課題のあるところに駆けつけて、適切な対処ができる!」という自信と情熱をもって仕事ができています。そういう意味では、人生楽しく過ごせていますね。

本目 今のお仕事にやりがいを感じていらっしゃるのですね。「環境」そして「社会」のためという2本の軸が混じりあって、その中でご自身のやりたいことを全力でやってこられたのだなと思いました。

左)藤村修・内閣官房長官(当時)

左)藤村修・内閣官房長官(当時)

インターン 今後やってみたいことはありますか?

竹内さん 人生の師匠・(元内閣官房長官の)藤村修先生が、「十年一仕事」とよくおっしゃっていました。私は下積み時代も含めて、地方議員12年、京都大学での論文執筆に8年と20歳代、30歳代を過ごしてきました。40歳代は現職で環境に向き合ってきましたので、次の50歳からの10年間は新しい何かがしたいなと考えているところです。しっかり準備を進めて、有意義な50歳代にしたいですね。

インターン 昇進のお話も出ましたが、特に女性の昇進は悩む人が多いと思います。キャリアを考える上で、アドバイスをいただけたら有難いです。

竹内さん 女性取締役の比率が少ないとか、女性管理職が少ないとか、いろいろと課題はあると思います。でも、男女に能力的な差はありません。男だから、女だからという議論は置いておいて、本気でやりたいことがあったら、本気で立ち向かっていけば、きっと誰かがどこかで見ています。10年前、私が本目さんと初めてお会いした時、当時吹田市議として本気で仕事をしていたからこそ、10年後の今、インタビューという機会をいただいているのだと思います。何かやる時には、本気でやってみてください。男だから、女だからではないと思います。

オンラインインタビューの様子

竹内さんの「真正面から廃棄物と勝負しています!」という熱い想いに感銘を受ける本目議員、たぞえ議員、ママインターン

 

【インタビュー後記】

たぞえ 議長までご経験された方なので、物事を俯瞰的、客観的に捉えながらも、その中には熱い正義感や情熱がある。そんなスキルもマインドもある竹内さんであれば、このあとの10年も、民間企業でも公共の現場でも、その両者の橋渡し役でも、どこでも輝くことのできる方なのだろうと思いました。

本目 現在の仕事にとてもやりがいを感じていらっしゃることが、ひしひしと伝わってきました。議員を3期12年、そして議長の職務も全うされて、人間力やコミュニケーション能力も含め「人間としての器の大きさ」が得られ、それが今の仕事にも活きていらっしゃるのだろうなという印象をもちました。

インターン 「誰かがやらなきゃいけないことに対して、じゃ私がやる!」という意志の強さと行動力が竹内さんの魅力だと思いました。インターンとして参加させていただいたことで、普段はなかなか聴けないような議員や議長の裏側や思いまで聴くことができ、とても貴重な機会になりました。ありがとうございました。

 

ひろげよう!ママインターンプロジェクト
2021年1月より活動。地方議員とママが協力し、まちを良くするために共に学び成長するママインターンシップ。 子育て支援や女性政策などを政策の柱として活動する、東京都台東区 本目さよ区議が始め、広めている取り組み。今回のインタビューには、このママインターンが参加・取材した。【ママインターン3期生の申し込みは、2021年12月20日締切】くわしくはこちら⇒ https://hiromamapj.com/

(文・PublicLAB編集部/人材事業部 冨山美欧)


 

【プロフィール】

プロフィール写真竹内 忍一(たけうち・じんいち)
元大阪府吹田市議会議員(第67代 市議会議長)
東芝環境ソリューション株式会社 環境フィールド部(部長)

大阪府吹田市出身。同志社大学卒業後、株式会社熊谷組に就職。退職後、27歳にして(大阪府)吹田市議会議員選挙で初当選。市議3期12年、第67代吹田市議会議長を務めた。議員在職中に京都大学大学院にて公共政策修士(専門職)、博士(法学)の学位を取得。現在は、東芝環境ソリューション株式会社ソリューション・エンジニアリング事業部環境フィールド部(部長)。

 

本目さよ(ほんめ・さよ)

台東区議会議員/WOMANSHIFT代表

横浜市・八王子市育ち。大学・大学院で心理学を専攻。(株)エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートに入社し、人事部で働きやすい職場にするための各種制度を策定。「性別に関わらずやりたいことができる社会をつくる」ため、2011年に台東区議会議員選挙に立候補し初当選。現在3期目。気軽に政治に関われる「ママインターン」を展開中。

 

田添麻友(たぞえ・まゆ)

目黒区議会議員

東京都目黒区生まれ。大学卒業後、専門商社に2年勤務し、ベンチャー系経営コンサルティング会社に転職。3児の母となり、待機児童問題に直面。高校生のときから環境問題等を解決したいという想いもあり、2015年に地元・目黒区から無所属で立候補し初当選。現在2期目。

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