政治は結果がすべて、まちづくりは道半ば~髙橋大・秋田県横手市長インタビュー(2)~

秋田県横手市長 髙橋大
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2023/11/29 政治は結果がすべて、まちづくりは道半ば~髙橋大・秋田県横手市長インタビュー(1)~
2023/12/01 政治は結果がすべて、まちづくりは道半ば~髙橋大・秋田県横手市長インタビュー(2)~
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2023/12/08 「ピンチの常態化」は「チャンスの常態化」~髙橋大・秋田県横手市長インタビュー(4)~

 

議会とぶつかるのは当然

小田 冒頭で市長室の移転について触れられましたが、当時の施政方針演説を読むと「市議会との物理的距離の短縮という点においても、市政の両輪である市議会と私が、より十分な話し合いができる環境になる」とありました。ここからは議会との関係について伺います。髙橋市長が議会との関わり方で重視していることは何でしょうか?

髙橋市長 議会には常に誠心誠意、向き合っています。現在、議場には25人(定数26、欠員1)の議員がいらっしゃいますが、私は目の前の25人と相対しているのではなく、その向こうにいる8万3000人(市の人口)と相対していると思って臨んでいます。

各議員にはそれぞれ個性があり、さまざまなものを背負って議場に集まっています。ですから、多様な意見があって当たり前ですし、ぶつかることも当然だと思います。活発な議論が展開できることは、民主主義において良いことです。

そもそも満場一致で賛成されるような簡単な提案なら、誰が市長を務めてもできます。右か左か、惑いながらもどちらか一方に決めて前に進めるような案こそ、政治家がすべき提案の真骨頂だと思います。ですから、私は「承認して進めないと市の将来が開けない、されど賛成したくない」と思われるような、ぎりぎりの提案を任期の許す限り続けようと思っています。

 

小田 時には議会が紛糾するのを覚悟の上で向き合っているのですね。

髙橋市長 議会の皆さんが悩みに悩み、苦渋の決断を下すような難しい提案をし続けています。ですから、一筋縄ではいかないものも多いです。これまで続けていたものを踏襲したり、変化を恐れたりする面はどうしてもあります。

しかし、この厳しい状況の中で物事を前に進めるためには、議会に認めていただかなければなりません。気迫、説得力、情報の裏付け、いろいろなアプローチを駆使して、ぎりぎり過半数の賛成を得る。そんなことを繰り返し行ってきました。

 

小田 粘り強く議会と向き合い、歩まれている姿がイメージできます。

髙橋市長 議員の皆さんも地域代表や団体代表など、それぞれの背景をお持ちです。その立場から見ると、私の提案を受け入れられないこともあるでしょう。議員のご意見は真摯に受け止めつつも、まちの将来のための政策は粛々と進めるつもりです。

 

リアルに物事を動かす

小田 改めて、首長の仕事は何だとお考えですか?

髙橋市長 リアルに物事を動かすことです。ただし、タイミングや就任からの経過時間によって、動かし方は若干異なってくると思います。例えば年度の初めに就任した場合、前の首長が組んだ予算や政策を踏まえて行政運営を行うことになります。すると、あまり大きなことはできないかもしれません。新規で政策を打ち出し、議会の承認を得るのは時間がかかりますから。

なりたての首長がすぐに成果として見せられることといえば、既存事業を止めるか、人事で既定路線を覆すくらいではないでしょうか。任期を重ねてくると、綿密な計画と裏付けが必要な大きな事業にも着手できるようになってきます。

 

小田 髙橋市長も時とタイミングを見計らって、市政を進めてきたのですね。

髙橋市長 行政の長としては、現実を動かすことが何よりも大切ですから。政治でより良い未来を勝ち取っていくのが役割だと思います。

 

小田 髙橋市長は市民や議会と正面から向き合い、時には厳しい判断を下しながら、あらゆる手を尽くしてきました。しかしながら人口減少は、そうした政策の効果を上回るスピードで進展しており、市長自身も「まだまだ」と自己評価せざるを得ません。人口減少がまちに与えるインパクトは、それほど大きく強いものだということを改めて実感しました。

次回も引き続き、髙橋市長の政策について詳しく伺います。

 

第3回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2023年10月23日号

 


【プロフィール】

秋田県横手市長・髙橋 大(たかはし だい)

1976年生まれ。秋田県十文字町(現・横手市)出身。秋田経済法科大(現ノースアジア大)経卒。東京の商事会社勤務、十文字町議、横手市議を経て、2013年10月横手市長に初当選し、現在3期目。

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