チャンスを手繰り寄せる「調整力」 高橋純一・群馬県千代田町長インタビュー(2)

群馬県千代田町長・高橋純一
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子

 

2024/05/28 チャンスを手繰り寄せる「調整力」 ~高橋純一・群馬県千代田町長インタビュー(1)~
2024/05/30 チャンスを手繰り寄せる「調整力」 ~高橋純一・群馬県千代田町長インタビュー(2)~
2024/06/04 立場を超えた連携で相乗効果を生む~高橋純一・群馬県千代田町長インタビュー(3)~
2024/06/06 立場を超えた連携で相乗効果を生む~高橋純一・群馬県千代田町長インタビュー(4)~

 

調整のコツ

小田 広域避難に関する協定締結を積極的に行っているとのことですが、その状況についてお聞かせください。

高橋町長 現在は自治体などと災害時における協定を12本締結しています。民間企業とも協定を結んでおり、その数は58に上ります。

先ほどお話しした「災害時における利根川両岸相互応援に関する協定」は、19年に群馬県側の板倉町、明和町、大泉町と埼玉県側の行田市、加須市、羽生市、熊谷市と締結しました。このうち先行した板倉町、明和町、行田市、加須市、羽生市との協定(表のNo.9)については、明和町長から提案があり、私は各市町との調整で協力させていただきました。

 

協定一覧
自治体などとの協定一覧(出典:千代田町)

 

小田 利根川新橋の件でも感じましたが、高橋町長の「調整力」は物事を着実に前に進めますね。

高橋町長 自分で調整力があるとは思っていませんが、やはり段取りは大切です。われわれ行政の主な仕事は、段取りなのではないでしょうか。裏方に回ることもあれば、正面突破を試みることもあります。それぞれの局面で空気を読みながら物事を前に進めるのが仕事だと考えています。

 

小田 高橋町長が関係者間の調整を行うとき、どのようなことに気を付けているのですか?

高橋町長 状況を把握するために情報を収集した上で、さまざまなパターンを想定することです。利根川新橋の件で言えば、他自治体が独自に行う要望活動を調べて状況を把握し、どのように県へ要望を持って行けば前向きに検討していただけるかをシミュレーションしました。今回の場合は事前に要望活動の熱量を高め、機が熟したところで知事を訪問することが適切だと考えました。

 

小田 高橋町長の「機を読む力」のたまものですね。

高橋町長 なかなか言語化することは難しいのですが、やはり「空気を読む」ことをずっと行ってきたのかもしれません。私自身は非常に遠慮深い人間だと思っていますので、何かを調整する際にはどなたにも失礼がないよう、配慮することを心掛けています。

 

小まめなコミュニケーションが土台に

小田 高橋町長とお話ししていくうちに、人の和を大切にする謙虚な方であるという側面も見えてきました。

高橋町長 何をするにも皆さんのおかげです。私一人では到底できないことばかりです。

 

小田 本連載で高橋町長を取り上げるよう、ご推挙くださった自治体の首長は「利根川新橋が事業化したのは高橋町長のおかげだ」とおっしゃっていました。新橋の件に戻りますが、どのように近隣自治体と調整を進めたのか、もう少し詳しく伺えますか。

高橋町長 近隣自治体の首長とは、普段から小まめに意見交換しています。公務のときはもちろん、個人的に電話することもよくあります。互いにフラットな立場で言いたいことを言い合い、その中で出てきた意見を調整して進めていくことが多いです。

 

小田 議員とのコミュニケーションについてはいかがですか?

高橋町長 20年の町議選で当選した方々の多くは利根川新橋の建設を公約に掲げていました。その頃から、われわれと方向性を同じくしていたと思います。22年10月には議員12人全員と、県内を選挙区とするすべての国会議員を訪問し、要望書を提出しました。このように町議の皆さんとは、新橋に懸ける思いを共有し、活動してきました。

 

小田 あらゆる関係者をまとめ上げ、連帯感を築いてきたのですね。群馬県の山本知事との関係についても、お聞かせください。

高橋町長 私は山本知事が参議院議員だった時代からの支持者です。当時から何度も事務所を訪問し、利根川新橋の必要性を訴えてきました。ですから新橋のことは、知事も記憶していたのではないかと思います。

 

小田 高橋町長は淡々とお話しになりますが、どれも難しい調整だったのだろうと推察します。あらゆる立場の方々をまとめ上げ、一つの方向へと導いていく高橋町長の手腕には驚かされるばかりです。

 

次回も、高橋町長の「機を読む力」と「調整力」について掘り下げます。

 

第3回に続く

※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2024年4月8日号

 


【プロフィール】

高橋 純一(たかはし・じゅんいち)

1960年生まれ。群馬県千代田村(現千代田町)出身。2008~12年千代田町議。16年千代田町長に就任し、現在3期目。座右の銘は「やってみせ 言って聞かせてさせてみて 誉めてやらねば人は動かじ」。

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