共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(2)

共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生
スカラと共同開発、三方よしの共創プラットフォーム

株式会社Public dots & Company代表取締役 伊藤大貴

2020/11/09  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(1)
2020/11/24  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(2)
2020/11/26  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(3)
2020/12/01  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(4)
2020/12/03  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(5)


※こちらの記事は、第1回からの続きになります。

クリエーティブな手法は生まれつつあるものの…

こうした自治体の悩みには、幾つかアプローチの方法があります。一つが包括連携協定、もう一つが公募型プロポーザルです。まず、包括連携協定について見てみましょう。ここ数年、注目を浴びている手法です。包括連携協定は、企業と自治体が連携して社会課題の解決を目的に、企業が持つノウハウやネットワークを活用したい自治体と、CSR、CSVの観点から地域に貢献したい企業の思惑が一致した取り組みと言えます。包括連携協定ではフィー(費用)は発生しないものの契約であるため、自治体は協定を結んだ企業に対して、何かあれば、まず先に相談するというフローが発生します。これが企業にとっての一つのメリットです。どんな事項について協定を結ぶのかを契約書に明記するため、その事項について当該自治体から最初に相談を受けられるというのは企業にとって大きな魅力です。

ただ、この包括連携協定も今、曲がり角に差し掛かっていると私は感じています。具体的な自治体の名前は申し上げられませんが、幾つかの自治体から「包括連携協定が形骸化していて、契約を結んだはいいものの、実際には何も進捗がない状況をどうしたらいいだろうか」という相談を頂いています。包括連携協定を締結する際に、企業と自治体間でお互いに何をリソースとして出し合うのか、その先にどんなアウトカムを目指すのか、という点がしっかりと共有できていないことが形骸化してしまう主な要因です。企業サイドにも、包括連携協定を結ぶことができればそれでいい、という考え方のところが少なからず存在するのも事実で、結果、包括連携協定を締結しておしまい、ということになってしまいます。

そんな現状も見え隠れするため、弊社は企業から自治体との包括連携協定の仲介を依頼される際には「ちゃんとアウトカムを設計しましょう」と提案しています。いずれにしても包括連携協定は自治体と企業が契約締結後も、密にコミュニケーションを重ねていかないことにはなかなか実態を伴ったものになりにくいという課題があります。

公募型プロポーザルに眠る創造性

もう一つの手法が公募型プロポーザルです。言うまでもありませんが、公募型プロポーザルとは、地方自治体が事業者を選定するための入札方式の一つです。公募に当たって地方自治体は業務の目的や期間、その政策効果などの要件を提示し、民間企業はその要件に対してアイデアや実施方法などを提案します。公募を実施した地方自治体は民間企業から寄せられた提案を審査し、事前に定めた審査基準に従って評価し、事業者を決定するのが公募型プロポーザルです。要件設定次第で企業側の提案の自由度が変わってくるため、公募型プロポーザルの要項はまさに自治体の腕の見せどころであり、創造性が問われるところでもあります。

政策をクリエーティブにするという意味では一見、良さそうな公募型プロポーザルですが、企業から見ると、一つ、大きな欠点があります。それはある自治体が実施した公募型プロポーザルを他の自治体が認識していない上に、そこに集まった民間提案を他の自治体が見ることができないという点です。そのため、せっかく評価された提案でも、それを他の自治体に横展開するのが難しいのが実情です。企業目線に立てば、この評価された提案を次にどの自治体に持ち込んだらいいのかが分かりません。自治体が抱えている社会課題には共通点があるわけですから、よく考えたらもったいないことです。包括連携協定も公募型プロポーザルもそれぞれに良さがありながら、一方で企業目線に立つと、課題も散見され、官民共創で日本の社会課題を解決する決定打にはなり得ていないのが現状です。

この状況を打破する可能性を秘めているのが、本稿で取り上げる逆公募型プロポーザルです。正直に言えば、私たちが企画会議を重ねて編み出したものではなく、ひょんなことからアイデアが生まれました。その「ひょんなこと」にこそ、実は逆公募型プロポーザルが持つ、自治体と企業の共創を加速させる大いなる可能性が隠れていると私は考えています。逆公募型プロポーザルはコロンブスの卵のような仕組みではないかと思うところです。逆公募型プロポーザルが生まれた背景について、次回ちょっと触れてみましょう。

第3回につづく

※本件に関する詳細は、こちらのプレスリリースをご覧ください。


プロフィール
伊藤大貴(いとう・ひろたか)伊藤大貴プロフィール写真
株式会社Public dots & Company代表取締役
元横浜市議会議員(3期10年)などを経て、2019年5月から現職。財政、park-PFIをはじめとした公共アセットの有効活用、創造都市戦略などに精通するほか、北欧を中心に企業と行政、市民の対話の場のデザインにも取り組んできた。著書に「日本の未来2019-2028 都市再生/地方創生編」(2019年、日経BP社)など多数。博報堂新規事業(スマートシティ)開発フェロー、フェリス女学院大非常勤講師なども務める。

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