共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(5)

共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生
初回はイーデザイン損保の「安心安全な移動」

株式会社Public dots & Company代表取締役 伊藤大貴

2020/11/09  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(1)
2020/11/24  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(2)
2020/11/26  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(3)
2020/12/01  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(4)
2020/12/03  共創をデザインする逆公募型プロポーザル、誕生(5)


イーデザイン損保によるプロジェクトのテーマは「より安心安全な移動社会の共創」

では、ここからは具体的な話に移りましょう。日本で初めてとなる逆公募型プロポーザルの募集を東京海上グループのイーデザイン損保が実施します。今回、同社が募集するテーマは「より安心安全な移動社会の共創」。東京海上グループの若手有志団体Tib(ティブ)とイーデザイン損保の共同プロジェクトで、「地方自治体との新たな価値共創の仕組みの構築」を掲げながら、昨今の社会課題でもある「安心安全な移動社会の実現」に向けた政策・アイデアを求めるものです。逆公募型プロポーザルですから、審査を経て最も高い評価を得た自治体に対して、イーデザイン損保より資金の寄付を実施し、その政策・アイデアの推進の一助としてもらうことを想定しています。

今回、イーデザイン損保がこのプロジェクトに手を挙げた背景を説明しましょう。同社は2009年に設立された会社で、東京海上グループの一員としてインターネットや携帯電話を活用した自動車保険を取り扱っています。インターネットを活用した自動車保険の販売を通じて、安心・安全を広げる事業活動を目指してきたとのこと。またデジタル化の流れにも合わせ、より簡単で便利に自動車保険を活用できるようワンクリック見積もりやセコム事故現場急行サービスの導入等を実施しています。

その挑戦の一つとして、Tibと一緒に、「若者ならではの発想を使いながら、よりお客さまに対する安心・安全の価値や幅を広めるためにできること」を模索してきました。そこでユーザーのリアルな声に注目しました。「特に自分が無事故でいる時には、社会のセーフティーネットである保険の価値を感じづらい」「保険への加入を通じて安心・安全な世の中に繋がっている実感が持てない」

確かに言われてみれば、その通りで、同じような感想を持ったことがある読者の方もいることでしょう。保険は万が一のときに力を発揮するものですが、その原資はドライバーの日頃の安全運転があってこそです。これまで安全運転の対価は、保険等級という形で個人に還元される仕組みになっていましたが、「保険における顧客体験の向上は何か」を考えた結果、保険加入者の安全運転がより安心・安全な世の中に繋がっていると実感できる仕組みが必要ではないかということでした。

ESG投資の世界の潮流と企業が果たす公益性

こんな問題意識を持っていた中で、イーデザイン損保は私たちPublic dots & Companyと出会いました。「『公共』を再定義する。」をミッションに掲げる弊社にとって、イーデザイン損保の問題意識は非常に感銘を受けるものでもありました。上述した「真の社会課題」をまさに探究しているように映り、自治体との共創によるアウトカムが目に浮かんだのです。社会的インパクト投資の研究で世界的に著名な経済学者のジャズジット・シン教授は次のように述べています。「これまで社会貢献といえば、儲かった時にCSR部署を設立したり、慈善事業で社会に還元してきたが、これからは違う。単にビジネスの利益を社会に還元するのではなく、社会に不利益を起こさないやり方でビジネスをしていくことこそが社会貢献との認識が広まりつつある」(「世界最高峰の経営教室」2020年、日経BPマーケティング)。

今回のイーデザイン損保の取り組みはまさに、世界的なESG投資の流れにマッチしています。安心・安全を切り口に移動や交通に関して自治体が解決したい課題や、挑戦したい政策・アイデアを、その実現に向けて一緒に目指していくことを狙うのが、今回の逆公募型プロポーザルです。例えば高齢者が多い地域では、コミュニティー交通の運営やシニアドライバー支援が必要かもしれないし、都市部では交通量に合わせた駐車場や駐輪場といった空き資産の活用が必要かもしれません。一口に「移動・交通」といっても、地域によって抱えている社会課題は異なりますし、まさに逆公募型プロポーザルによって、各地の悩みや新たな挑戦を聞きたいというのが今回の狙いです。

そして大事なことは保険商品の提供という枠を超えた社会的責任への挑戦です。従来、こうした社会課題の解決は自治体がなんとか頑張ってやるものでした。しかし、昨今の自治体の財政状況やマンパワー不足などと相まって、社会課題の解決は自治体が自前でやり切れなくなりつつあります。一方、企業もまた、これまでは収益一辺倒だったところが、シン教授が喝破するように、事業性と公益性を両立させることが求められる時代となり、そちらに意識が向きつつあります。まさに企業と自治体がそれぞれの強みを生かし合って共創することで、社会に新しい価値を生み出す時代の到来です。今回のイーデザイン損保による逆公募型プロポーザルはその先鞭になるはずです。この取り組みが上手くいけば、今後、第2弾、第3弾と続く企業が必ず現れるでしょう。また、イーデザイン損保も今後、より多くのユーザーの安全運転が地域や社会に還元されるような新サービスの開発にも繋げていくはずです。民間企業が持つテクノロジーやサービスと、地方自治体の政策力、社会課題への認知力が合わさることで、21世紀型の新しい公共が誕生するのではないでしょうか。

募集要項

〇今回の取り組みの概要
・スケジュール
2020年11月20日:募集開始
2021年1月15日:エントリーシート提出締切
2021年2月中 :寄付先決定
2021年3月中 :寄付実施
2021年4月~ :対象企画・アイデア実施
2021年6月~ :企画・アイデア実施結果のフィードバック

・寄付金額
1企画・アイデア当たり50万円~100万円(未定)
※自治体の皆さまの「寄付受納(もしくはそれに準ずるもの)」の仕組みを活用して寄付を実施させていただく予定です。
※寄付をさせていただく企画・アイデア数、総額は未定です。

・募集対象
「より安全な交通環境・社会の実現」につながる企画・アイデア
(例:地域小学生への通学帽寄付、電動車いすの活用実験、自動運転バスの実証実験等)

〇応募条件
✓【1月15日(金)17時まで】にエントリーシートに必要事項を記入し提出すること
✓企画・アイデア実施後、実施内容を簡潔にまとめたフィードバックシートを提出できること
※エントリーシートおよびフィードバックシートの雛形はイーデザイン損害保険にて用意しております。
※応募にあたっては以下記載の照会先にまずはメールにてご連絡ください。エントリーシートの雛形をお送りします。

〇エントリーシートの記載項目
・応募者情報
・応募事業名
・企画・アイデア実施の目的
・企画・アイデア概要
・企画・アイデアのスケジュール案

〇フィードバックシートの記載項目
・実施した企画・アイデアの概要
・企画・アイデア実施時や取組み等の様子が分かる写真
・今後について(ある場合のみ)等

【逆公募型プロポーザル事務局】株式会社Public dots & Company
【問い合わせ先】info@publicdots.com

求む!自治体エントリー

今回の逆公募型プロポーザルは弊社が事務局、資金提供者としての募集者がイーデザイン損保という形でスタートしますが、その趣旨、目的、手段に関心を示す企業も現われています。詳細はPublic dots & Companyのウェブサイトでもう間もなく公開予定ですので、楽しみにしてください。お金の出し手と企画、アイデアの出し手を逆転させ、ベクトルを変えることによって生まれる企業と自治体の共創。仕組み自体は単純ですが、おそらく、長年の企業と自治体の受発注の関係性などから、ベクトルの向きを変えるという発想にはなかなか行きつきませんでした。「ひょんなこと」から生まれた、このアイデア。今回のイーデザイン損保のプロジェクト、その先には逆公募型プロポーザルを仕組みとして、先般当社からリリースした「官民共創型デジタルプラットフォーム“CO-DO”」上で社会に提供していきたいと考えています。ぜひ、多くの自治体からのご提案をお待ちしています。

(おわり)

※本件に関する詳細は、こちらのプレスリリースをご覧ください。

・イーデザイン損保によるプレスリリース

・Public dots & Companyのプレスリリース


プロフィール
伊藤大貴(いとう・ひろたか)伊藤大貴プロフィール写真
株式会社Public dots & Company代表取締役
元横浜市議会議員(3期10年)などを経て、2019年5月から現職。財政、park-PFIをはじめとした公共アセットの有効活用、創造都市戦略などに精通するほか、北欧を中心に企業と行政、市民の対話の場のデザインにも取り組んできた。著書に「日本の未来2019-2028 都市再生/地方創生編」(2019年、日経BP社)など多数。博報堂新規事業(スマートシティ)開発フェロー、フェリス女学院大非常勤講師なども務める。

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