
京都府八幡市長 川田翔子
(聞き手)一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事 小田理恵子
2026/06/30 行政も政治も知る市長が実践する、信頼から始まる組織マネジメント~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(1)~
2026/07/02 行政も政治も知る市長が実践する、信頼から始まる組織マネジメント~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(2)~
2026/07/07 「生活都市」から、「多機能都市」へ~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(3)~
2026/07/09 「生活都市」から、「多機能都市」へ~川田翔子・京都府八幡市長インタビュー(3)~
川田翔子京都府八幡市長のインタビュー(後編)をお届けします。
八幡市は人口が1995年の約7万6000人をピークに減少し続け、現在の高齢化率は約32%に達しています。加えて直近2年で市内の路線バスが大幅に減便されるなど、郊外都市(注1)特有の移動の課題が顕在化しています。こうした構造的課題に対し川田市長は、生活都市から「より多機能な力を有した、生活に潤いをもたらすまち」への転換に挑んでいます。
後編では、郊外都市への問題提起、予算の選択と集中、そして、建設的なタウンミーティングの設計思想について詳しく伺いました。(聞き手=一般社団法人官民共創未来コンソーシアム代表理事・小田理恵子)
郊外都市が直面する移動問題
小田 市長就任後、痛感した課題はどんなことでしたか?
川田市長 人口減少の影響が、市民の皆さんの日常生活に直接的な実害として表れていることです。
八幡市は約30年前が人口増加のピークでした。高度経済成長の後に宅地造成が一気に進み、人口が3万人から7万6000人まで増えました。しかしそこから30年間は減り続け、今は約6万8000人です。
市に定住された方は75歳ぐらいになられ、そろそろ車の運転が難しくなってきました。しかし車を手放してみたら、バスが来ない。移動の問題が深刻です。
一方で、民間の路線バスや電鉄会社も人手不足の局面の中で、サービスを縮小するなどの決断をせざるを得ません。少しでも魅力がない、お金や人が少ないと判断されたら、容赦なく撤退を迫られるような時代になっています。
直近2年で、市内の路線バスは約200便が減便されました。全体の4分の1ほどの数であり、かなりの勢いで減っています。
今後も人口の絶対数が減る中で、潮が引くように暮らしに影響が出るのは八幡市のような郊外都市であることをすごく痛感しています。まちの魅力を全力で磨いていかないと、生き残っていけないというのが私の強い問題意識です。
小田 確かに、人口減少のインパクトは過疎地域よりも郊外都市の方が大きいかもしれません。
川田市長 コンパクトシティやコンパクト・プラス・ネットワーク(注2)といった取り組みも推進されていますが、最適化させるのはものすごく難しいですよね。それを仮に自治体ベースで行ったとしても個別最適にしかならないでしょう。
先ほど申し上げた八幡市の公共交通は、民間企業がほぼ手を引き始めている状況です。最終的に誰が市民の足を保障するのかという問いに対しては、おそらく行政がやるということになります。
そこで課題になるのが行政界です。市民の皆さんはまちの区切りに関係なく移動されます。本当に住民本位の公共交通網を実現するには、行政の枠をまたいで手を結んでいかなければなりません。今はそういう枠組みはないので、考える局面に来ていると思います。
国全体での制度設計が必要
小田 前編では「郊外都市の課題は国の政策の焦点に当たっていない」とお話しされました。その点について、もう少し詳しくお聞かせください。
川田市長 国では、過疎地域の支援を中心に議論が進められがちです。三大都市圏の郊外にある八幡市のような都市は支援対象外の制度設計になっています。しかし実際には、こういう郊外都市でも公共交通は縮退していますし、人口減少は深刻です。これは国全体で取り組むべき課題だと思っています。
小田 財源格差も大きな問題ですよね。例えば関東では、東京都が潤沢な税収を背景に手厚い子育て支援を打ち出すと、周辺自治体から人材も住民も流出してしまいます。このような状況についてはどうお考えですか?
川田市長 おっしゃる通りで、東京は大企業が集中していますから、例えば都心のビル1棟か2棟分の固定資産税だけで、おそらく八幡市を運営できるほどの税収があるのではと思うくらいです。次々と新しい無償化や補助を打ち出せるでしょう。
本来少子化をマクロで考えたときには、地域や地方にこそ子育て政策への潤沢な予算が必要です。ただでさえ東京に若者が流出している状況において、それを止めようと思ったら、地方の行政サービスを充実させなければいけません。
しかしその施策を自治体の財源に任せたことによって逆転現象が起きています。これは本末転倒だと思います。
地方のライフスタイルが若い人たちの目に魅力的に映るよう、制度を整え、地方の魅力を発信していかなければならないと考えています。
注1=ここでは、高度経済成長期に宅地造成や団地の建設等で急激に人口が増加し、現在は急激な人口減少が起きている都市部周辺のベッドタウンなどを指す
注2=人口減少や高齢化社会に対応し、医療・福祉・商業施設を集約(=コンパクトシティ化)し、それらを中心市街地や拠点と公共交通でつなぐ(=ネットワーク化する)まちづくりの考え方
(第4回に続く)
※本記事の出典:時事通信社「地方行政」2026年5月25日号
【プロフィール】

川田 翔子(かわた・しょうこ)
奈良県出身。京都大経済学部経済経営学科卒業。
2015年京都市役所に入庁。生活保護ケースワーカーや学校跡地を活用した官民連携事業を担当。
22年に退職し、参議院議員の私設秘書に。23年11月、八幡市長選挙に立候補し、女性最年少(当時33歳)で初当選。市長に就任。

