●テクノロジーは手段であって目的ではない
「テクノロジーは手段であって、目的ではない」
これは、私が常々繰り返し申し上げていることです。皆さんこの点については頭で理解をされます。しかし、実際に運用段階に入っていくと、いつの間にか手段が目的化することはよく見られる風景です。
だから、目的であるミッション、ヴィジョンの共有が重要になってくるのです。これが共有されていると、常にアウトカムという目的を意識します。今やっていることが目的化していなかといことを客観的に判断する指標にもなります。
なお、磐梯町は昨年6月に新しい町長が就任し、「自分たちの子や孫たちかが暮らし続けたい魅力あるまちづくり〜共創・協働のまちづくり〜」をビジョンに掲げました。
そこで、半年かけて既存の総合計画を刷新し、そのビジョンに基づいた総合計画を策定ました。計画の中で、「共生社会とデジタル変革」という項目を設け、「誰もが自分らしく生きられる共生社会の共創」をデジタル変革の使命にしました。
また、このミッション・ヴィジョンの下、組織条例を改正し、デジタル変革戦略室を設置し、実現のための戦略・戦術を策定することも決まりました。総合計画は議会の議決事項なので、議員の皆さんのご理解と承認を頂いています。職員への理解は、全職員を対象としたDX研修会で促進していきます。
さらに、さらに、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」についても、ミッション・ヴィジョンを総合計画と100%リンクさせました。下位計画のミッション・ヴィジョンも総合計画に基づかないと整合性が取れないからです。
何のためにデジタル変革をするのか?
これを自治体のミッション・ヴィジョンを再確認する作業から始めていくことは、最初の一歩です。
アフターコロナの時代、今までの古い慣習や価値観に捉われない住民本位のミッション・ヴィジョンを掲げる自治体とそうでない自治体の格差が、テクノロジーによるてこの原理も働き、大きくなるのではないかと考えます。
シリーズ連載
アフターコロナと自治体のデジタル変革1〜テクノロジーで人々をエンパワメントする
- アフターコロナ
- 平成、変われなかった時代
- 新しい価値を共創できる時代
アフターコロナと自治体のデジタル変革2〜自治体の存在意義を再考しよう
- 自治体のミッションとヴィジョンは何ですか?
- 言葉は踊らされずに、利用しよう
- テクノロジーは手段であって目的ではない
アフターコロナと自治体のデジタル変革3〜戦術よりも戦略、現状把握をしよう
- RPAに失望する自治体
- ビジョンに至るまでの戦略を描こう
- ミッション・ビジョンがぶれなければ、戦略・戦術はピボットしても良い
アフターコロナと自治体のデジタル変革4〜全ては人と仕組みから始まる
- 司令塔の不在
- 組織の不在
- 手続きの重要性
アフターコロナと自治体のデジタル変革5〜適切な理解と人材活用
- ICT化とデジタル変革の違い
- 誰一人取り残さない
- 埋れている人材を活かそう
- 成果につながらない実証実験と包括連携協定
- 自分たちで考えよう
- 重要なのはパブリックマインド
アフターコロナと自治体のデジタル変革7〜アフターコロナの自治体像
- 新型コロナウィルスの危機は日本社会社会のリトマス紙
- 私たちは何を望みたいのか
- 行動するかしないか
筆者プロフィール
菅原直敏
一般社団法人Publitech 代表理事
株式会社Public dots & Company取締役
磐梯町CDO(最高デジタル責任者)。ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士、福祉にかかる4大国家資格を有する)。介護事業所を複数経営する企業の法人本部長として、経営および現場業務にかかわる。また、「共創法人CoCo Socialwork」 CEO、出勤しない会社、持たない会社、給与以外の価値を与える会社をコアバリューとして、自分らしい働き方の実践を行う。テクノロジーを活用して人々をエンパワメントするパブリテックという概念を提唱し、行政のデジタル化、社会のスマートか、テクノロジーによる共生社会の共創を目指すソーシャルアクションを行なっている。さらに、株式会社Public dots & Company取締役として、官民共創の取り組みを推進する。