【支援事業者へのインタビュー】
自治体主催の合同企業説明会など就職氷河期世代支援事業に取り組む就労支援会社の責任者(ヒューマンアカデミー株式会社の八田尚之部長〈社会人教育事業部・行政営業部〉、株式会社学情の瀬戸本浩司執行役員〈パブリックサービス事業部〉)にお話を伺いました。
─このたびの就職氷河期世代支援をどのように評価していますか?
八田氏 学校卒業時の就職難に苦しみ、非正規での就業を繰り返してきた就職氷河期世代にとっては正規雇用を実現する絶好のチャンスであるとともに、人手不足に直面する中小企業における人材確保の面でも、非常に有効な施策であると考えています。
瀬戸本氏 政府の就職氷河期世代支援プログラムは、民間の人材サービス事業者だけでは取り組めない領域であり非常に期待しています。効果的な実施に向けて、地域の自治体や経済団体、各種支援機関と、民間事業者の集客力(企業・求職者)や高いマッチング力の連携が重要と考えます。
─自治体や地域の経済団体などに期待したいこと、求めることがあればお願いします。
瀬戸本氏 最大の課題は雇用側である地域の企業等の就職氷河期世代への理解促進であると考えています。多くの企業が人手不足で苦慮する中、就職氷河期世代の活用が経営課題の解決につながる可能性があることを積極的に啓発していただきたいと思います。また、採用時の条件面の設定や既存社員との関係構築等、採用から定着までの企業支援が必要であると考えます。
八田氏 就職氷河期世代の方々に対する理解が進んでいないことが課題と感じております。長年の景気拡大により、自力で正社員転換できる方は既に正社員として活躍しており、それ以外の方はメンタル面などに何らかの問題を抱えていることに留意が必要と考えます。同世代特有の多様性、強み等に対する理解が必要だと考えます。
─その他、就職氷河期世代支援に関して、ご意見や提言等がありましたらお願いします。
八田氏 この世代の方の多くは、採用試験で不採用を繰り返し企業に応募すること自体が心理的なハードルとなっています。弊社が携わった合同企業説明会では、出展企業に対して「書類選考を経ず、応募者全員と必ず面接すること」をお願いしたことで、多くの参加者が集まり、多くの方が正社員就職できたと思います。書類選考を行わない企業とのマッチング事業は非常に有効と考えます。また、正社員就職後の定着も大きな課題となることから、ミスマッチ防止の観点から職場実習を取り入れた支援事業が不可欠と考えます。
瀬戸本氏 一般的な企業の採用活動の現場では求職者が提出する職務経歴書やインタビューから「実績」を評価・分析して、自社への適性を判断します。就職氷河期世代の求職者の皆さんはアピールできる「実績」が乏しいことが予測されますので、対象者の適性を測定した上で企業にPRできるツールの開発やPR情報の作成支援が必要ではないでしょうか。就職氷河期世代の正規雇用に向けたモチベーション向上も必要と考えます。
筆者プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリック・クロス代表取締役。2003年の創業以来、若年層・就職氷河期世代の就労支援に従事。2011年より大津市議会議員(滋賀県)を2期務め、地域の雇用労政や産業振興に注力して活動。株式会社ミクシィの社長室渉外担当など歴任。著書・寄稿に「就職氷河期世代の非正規ミドルを戦力化する 人事実務、マネジメント」(2019年)など多数。京都大公共政策大学院修了。1978年生まれ。