コマ大戦が繋ぐ行政と中小製造業の地域活性化(3)

北名古屋市議会議員
Code for Nagoya 名誉代表
桂川将典

コマ大戦が繋ぐ行政と中小製造業の地域活性化
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「きっかけづくり」を支援し、地域にシビックプライドの醸成を図ること

このコマ大戦の取り組みは結果オーライでスタートした事業ですが、振り返って俯瞰してみると、そこには住民参加の地域活性化としてうまくいったポイントが幾つも含まれていました。

認知の拡大

コマ大戦の成功の一つは、このPR活動がうまくいったことです。イベントにテレビ取材が頻繁に入ったことで、参加者の子どもや大人、地域のお年寄りだけでなく、イベントを知らなかった住民の方にもテレビで広く知っていただくことができました。テレビ取材が事業に連動したことで、短期間でも認知が一気に広がりました。

参加者の拡大

もう一つのポイントが、既存の産業が関わっていることです。コマ大戦では北名古屋市内の製造業を中心に、サービス業や銀行などさまざまな事業者にも声を掛けて参戦してもらいました。市内にネットワークのある、既存の産業が土台になっていることが、仲間づくりや参加しやすさに繋がっています。地域活性化の成功事例でも、もともとある産業、素材や技術を土台にして新たな視点で取り組んでいるケースでは、認知度も高く参加者が多くなり、地域に受け入れられています。

参加者の熱意とシビックプライドの創出

こうした地域活性化に絶対に必要なのは、参加者の熱意です。地域のさまざまな取り組みに積極的に参加した住民が感じるのは「私たちが取り組んだことが評価されている」という手応えです。事業を担当する職員だけでなく、ボランティアとしてイベントなどに関わった住民の方たちこそ「感謝」「喜び」といった無形の報酬を獲得しています。行政として官民双方が関わるイベントを行う際には、住民が高い満足を得ているかどうか、という点を絶対に忘れてはならないと思います。深い思慮に基づいた住民意見に行政が適切に応えること。これがシビックプライドの醸成に直結していると言えます。

地域活性化のために「人の交流」をつくる

地域の活性化のために必要なのは予算消化のために金太郎飴のような計画書を持って来るコンサルタントではなく、参加者の意欲を生むことです。その「きっかけ」になるのは、人と人との交流です。行政の立場は交流を創出する際に、いろんな人を巻き込みやすい立場です。

官民の立場を超えた交流を大切に

課題解決のアイデアを出すのに苦労している職員の方も多くいらっしゃいますが、地域活性化のためのアイデアは、地域住民との交流の中に多くのヒントが転がっています。地域と行政の風通しの良い協力的な関係性を築くこと、職員と住民の新たな交流を生み出すこと。これが地域活性化の最初の一歩だと思います。

クリエイティブ人材の発掘

この交流の目的は、地域にどっぷりと漬かって活動しながらも、視線は全国を向いているクリエーティブ人材を見つけることです。コマ大戦の企画も、小さな会社が起こして世界大会にまで育ちました。クリエーティブな人材は、注文してもやって来ません。地域活性化の施策のために行政が人と人の交流を支援することで、やがて熱量の高い人に巻き込まれて渦ができてきます。その渦にどんな人材がいるか、行政の得意な分析力を使ってよく見極め、行政との共同歩調を探る方が進めやすいのではないでしょうか。

(おわり)


プロフィール
桂川将典(かつらがわ・まさのり)
北名古屋市議会議員・Code for Nagoya 名誉代表
立命館大学卒業後にシステムエンジニアとして民間企業で情報セキュリティの改善業務に従事。その頃に知り合った最年少京都市会議員の働きぶりをボランティアとして間近に見て「自ら行動しなければ社会は変わらない」と思い至り、平成の大合併を機に帰郷し立候補。27歳で初当選し現在4期目。行財政改革、IT活用、英語教育分野に注力。

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