コマ大戦が繋ぐ行政と中小製造業の地域活性化(1)

北名古屋市議会議員
Code for Nagoya 名誉代表
桂川将典

コマ大戦が繋ぐ行政と中小製造業の地域活性化
2020/5/11 「たかがコマ、されどコマ」、交流づくりが変化の鍵に
2020/5/13 コマ大戦のキーパーソンへのインタビュー
2020/5/15 「きっかけづくり」を支援し、地域にシビックプライドの醸成を図ること

「たかがコマ、されどコマ」、交流づくりが変化の鍵に

コマが官民双方にもたらした意識の変化と、シビックプライドの醸成

愛知県北名古屋市は、「全日本製造業コマ大戦(以下、コマ大戦)」という製造業を中心とした民間によるイベントを、住民参加型のイベントへと発展させました。その過程において、全く行政と付き合いのなかったBtoB(企業間取引)の中小製造業者と、行政職員の双方に意識の変化をもたらしました。インタビューを通じてシビックプライド(市民の市に対する誇り)の醸成に繋がったきっかけを探り、行政による地域活性化の支援の在り方について、一つの事例として紹介したいと思います。

全日本製造業コマ大戦とは

コマ大戦は、製造業を盛り上げようと株式会社ミナロ(横浜市)の緑川賢司社長が構想を固めて企画したイベントです。今では、全世界4,000組以上のチームが参加する大会に成長しました。基本的なルールは、2者が同時に直径20ミリ以下のコマを手で回し、土俵で闘わせて長く回っていた方の勝ち、という単純なものです。小さなコマ一つが出来上がるまでには、たくさんの試作を行いアイデアを出し、そして大きな情熱を込めています。精度が勝つか。アイデアが勝つか。それとも作り手、回し手の熱き魂が勝つのか。己の持つ全てを直径20ミリ以下のコマに込めた、熱きものづくりのバトル。これがコマ大戦です。

全日本製造業コマ大戦のウェブサイト

なお、2020年2月22日に横浜市大さん橋ホールで予定していた「世界コマ大戦2020」は新型コロナウイルスへの対応から、12月に延期して開催することとなりました。本稿では触れておりませんが、世界大会開催に際してはクラウドファンディングにも果敢に挑戦し、目標金額を達成するなど、中小企業の連携とフットワークの軽さ、組織運営には目を見張るものがあります。

コマ大戦と北名古屋市の出会い

緑川社長が中心となり、SNS(インターネット交流サイト)等で全国の製造業に参加を呼び掛け、2012年に第1回大会が開催されました。この大会に、北名古屋市に立地する金属加工業、株式会社クリタテクノの黒田正和製造部長が参加し、次の予選会を東海地区で開催しようと参加企業と仲間集めを始めたのが、東海地区でのコマ大戦実施のきっかけです。東海ブロック予選は、参加企業それぞれから応援に駆け付けた多くの観客で会場が埋まりました。小さなコマが回る小さな土俵の試合は、客席までもが息を殺して見詰める緊張感があります。そしてコマが倒れ勝敗が決した瞬間、会場中が大歓声に包まれ、予選は大成功に終わりました。

この東海ブロック予選を取材に来た地元テレビ局のディレクターは、大人が本気になっているこのイベントに食い付きました。今までテレビ取材とは全く無縁だった小さな工場にテレビカメラが入り、熱い思いを熱心に語る姿がお茶の間に伝わるとは、当初の参加者の誰一人として想像もしていませんでした。そしてもう一度、できれば地元の北名古屋市でコマ大戦をやろう、という声が当然のように湧き上がってきたのです。

そこで出てきた課題が、会場や運営費用です。参加企業の手弁当で開催を続けるには負担が大きいため、北名古屋市の市民協働事業に応募して行政の支援を得ようと試みました。ここから北名古屋市とコマ大戦の接点が生まれました。

(第2回に続く)


プロフィール
桂川将典(かつらがわ・まさのり)
北名古屋市議会議員・Code for Nagoya 名誉代表
立命館大学卒業後にシステムエンジニアとして民間企業で情報セキュリティの改善業務に従事。その頃に知り合った最年少京都市会議員の働きぶりをボランティアとして間近に見て「自ら行動しなければ社会は変わらない」と思い至り、平成の大合併を機に帰郷し立候補。27歳で初当選し現在4期目。行財政改革、IT活用、英語教育分野に注力。

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