公民連携時代の指定管理者制度再考
パッケージ化ですべての公園を一括指定管理に
株式会社Public dots & Company PdC エバンジェリスト
SOWING WORKS 代表
元国土交通省 都市局 公園緑地・景観課長
町田 誠
2020/10/20 公民連携時代の指定管理者制度再考(1)
2020/10/22 公民連携時代の指定管理者制度再考(2)
2020/10/27 公民連携時代の指定管理者制度再考(3)
2020/10/29 公民連携時代の指定管理者制度再考(4)
2020/11/03 公民連携時代の指定管理者制度再考(5)
2020/11/05 公民連携時代の指定管理者制度再考(6)
公園で発生する収益の吸収を「その公園」だけで終わらせない発想
公園へのこれら民間施設の導入は、収益を上げることが前提となっているので、できるだけ良い立地・環境を備えた公園から進められていくことになる。当たり前の話で、税金を使いながら、おでんや甘酒やソフトクリームを売るわけではないから、事業として収益を上げる上でアドバンテージ(優位性)のある公園に導入される。ユーザーへのサービスは高まり、その収益を吸収する形で芝生広場や遊具がリニューアルされ、公園に掛かっていた税金原資の管理費用は低減されることになる。管理予算が厳しい中で、こうした公園が一つできるだけでも意味のあることだが、気の利いたサービスがあるというメリットは「その公園」の中に閉じ込められる。Park─PFIによって収益施設を置く公園を検討する際には、公園自体(施設内容や環境など)に魅力があって、立地も含めて利用者が多い公園から選択されていく。応募する事業者にとっても重要なことだが、こうしたPark─PFI制度の導入方法は、管理費用を抑えた自律的な管理の公園を一つずつ「卒業」させていくことに他ならない。一つの地方公共団体で頑張って3カ所の導入にこぎ着けたとしても、手元には条件の厳しい公園が100近く(地方公共団体当たり平均85公園)残ることになる。これらの公園は、これまでと同じ管理手法がとられ、特に小さい公園はほとんど手元に残ることから、このままでは「あまり行かない」「誰もいない」公園を改善するきっかけは生まれない。
Park-PFI制度の運用も、単純に飲食施設単体の導入ばかりをしているわけではない。制度化から時間がたって、さまざまな工夫がなされるようになってきている。管理許可のエリア(税金を充当しない管理エリア)をできる限り大きくとる工夫、管理費を渡して、民間事業者にできるだけ大部分を管理委託してしまう工夫など。任される事業者にとっては、裁量が大きく管理できるエリアが広くなればなるほど、経営資源が大きくなる。公園を美しく、居心地よく保つインセンティブも働く。限られた原資でもできる限り効率を上げ、効果の大きい管理をする。結果的にPark-PFI制度導入をきっかけとした、経営的公園管理エリアの拡大が図られる。
新たな収益施設の設置を認めることを前提とした、指定管理者選定の例が出てきている。関係者の中では有名であるが、大阪城公園(大阪市)は、天守閣への入場料が指定管理者の収入になるほか、公園区域内で新たな収益施設の設置を許可することを前提として、指定管理料ゼロ、さらに協定により、市へ毎年2億6000万円の納入を実現しているというものである。飲食や物販施設、有料の遊具の広場などがあり、一部、こうした公園の管理手法に批判の声を聞くが、ユーザーから選択されることにより、こうした構図が成立している事実を忘れてはならない。負担抜きの理想論を許す余裕は、公園管理の現実にはないことを、関係者であればあるほど認識すべきだ。
エリアの公園全体を指定管理+Park-PFI(設置管理許可)+地域での公園使いこなしのコーディネート
連載2回目(公民連携時代の指定管理者制度再考(2))で「指定管理者制度」をベースとして、その創造的な運用の普及によって経営的公園管理手法が実現すると予告し、連載4回目(公民連携時代の指定管理者制度再考(4))、地方公共団体における公園管理費が、大まかに「直営費」「業務委託費」「指定管理費」で構成され、どこにウエートを置くかがポイントであることを述べた。
ここに、普及を提案していく「経営的包括公園管理手法」のアウトラインを紹介する。
まず、公園の指定管理者制度導入の実態である。全体の導入率は箇所数ベースでわずか12%、そのうちイベント等の行為の許可権限が付与されている指定管理者は約57%、利用料金制(指定管理者の収入)の導入は約13%にとどまっている(国交省データ)。傾向として、制度導入は比較的大きな公園(街区公園以外)、有料施設・運動施設のある公園で幾分進んでいるが、街区公園に限ってみると、導入率は箇所数で9%、自治体数で7%程度と極端に少なく(同データ)、いわゆる「外郭団体」に出しているところが多い(図1)。制度の導入も運用も改善の余地があるということだ。
次に、公園管理費全体を分析してみると、人口規模が大きいほど平方㍍当たりの管理単価は高い傾向(人口3万〜30万人の都市の平均単価平方㍍当たり248円に対して、30万人以上の都市のそれは450円)がある(図2)。
また、管理費の内訳「直営費(人件費等)」「業務委託費(外注)」「指定管理費」の平均的な構成比は、都市規模にかかわらず31:36:33程度となっているが、都市ごとには大きな違いがある。そしてポイントとして、構成比のどこにウエートをかけるかによって、管理単価が大きく変動するであろうことがデータから読み取れる。端的に言えば、業務委託費(外注)にシフトしても直営費は下がらず平方㍍当たり単価は上昇してしまう一方で、指定管理にシフトすると直営費が減少して平方㍍当たり単価は下がる(業務委託費が40%以上の地方公共団体を集計すると平方㍍当たり単価は30円程度高くなり、指定管理費が40%以上の地方公共団体を集計すると平方㍍当たり単価は30円程度低くなる)。指定管理にシフトすると管理費が下がるから良いということを単純に言っているのではなく、指定管理にシフトした自治体は、現場に投下し得る追加的費用が潜在的に捻出できているということを言っている。その分充実した管理が可能になる。
結論的に言うと、指定管理者制度運用の要諦は、
1.直営管理や外郭団体等への委託が主流の街区公園も含めて、規模の大きな公園から小さな公園までパッケージして指定管理に付し、大きな公園等でのPark─PFIの導入による収益をエリアの公園全体で吸収させるなど、経営的な公園管理を広く行き渡らせ、利用者サービス、公園の効用発揮の向上を図ること
2.行為(イベント等)の許可などの公権力行使に係る権能を指定管理者へ移転し、利用料金制の導入を積極的に進めて、効率的でインセンティブの高い制度運用を図ること
──に要約できる。収益や経営という文字を並べると、公園の機能や役割は環境や防災などもあり、賑わいや使いこなし偏重思想であるという批判が出るが、改めてこの主張は、収益を広い範囲で吸収して、公園の環境や防災の機能も高めるものであるということを強調しておきたい。
そして最後の重要なポイントとして、小さな公園の自律的な使いこなしをエリアでコーディネートしていく能力を持つ者を指定管理者の構成員に入れる必要があることを挙げたい。地域のNPO法人や、地域活動に根差した民間企業なしには、公園の使いこなしは進まない。ステークホルダー(利害関係者)が限定される小さな公園であればあるほど、地域での自律的な公園の活用を進めるべきで、公権力によってすべてをコントロールする考えも、もう改める時期にきている。
こうした方法論を、緻密に構築し説得力のあるガイドラインとして多くの地方公共団体に提案していきたいと考えている。
(おわり)
プロフィール
町田 誠(まちだ・まこと)
1982年旧建設省。旧国土庁、国土交通省等勤務の他、国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、全国都市緑化フェアTOKYO GREEN 2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に従事。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。