日本最大の政策コンテストである、「マニフェスト大賞」をご存知でしょうか。今年度の授賞式が11月13日に開催され、いま注目を浴びています。このコンテスト、一見すると、政治家がマニフェストの優劣で争うもの?と思いがちですが、実はまったく違います。議員のみならず、議会や首長、自治体職員、市民団体、NPO、学校、企業など、ほとんど誰でも応募が可能な政策コンテストです。各地の良い取り組みを「賞」として取り上げることで、一つの地域の素晴らしい活動が全国へ広がって、日本がより良くなるのではないか、という希望が込められています。そのコンテストを今年実行委員長として率いているのが、小金井市議会議員の白井亨さん。市政や議員活動について、365日ブログを更新し、活動レポートは毎月のように発行と、粘り強く市民への発信を続けています。なぜそこまで情報発信にこだわるのか、なぜ小金井市とは直接関係のない、多忙な実行委員長職を引き受けたのか、その理由を紐解くと、そこに白井さんの議員活動の根源となっているものが見えてきました。
(聞き手=PublicLab 編集長 小田理恵子)
*インタビューは、授賞式前の10月27日に実施
2020年のマニフェスト大賞には、過去最多の応募があったそうですね!
そうですね。過去最高の2,842件の応募が集まりました! 今年の授賞式はオンライン開催なのが少し残念ではありますが、これだけたくさんの応募があり、とても嬉しく思います。
マニフェスト大賞について簡単に教えてください。
今回で15回目を迎えた、日本最大の政策コンテストです。地方自治体の首長、地方議会、地方議員、自治体職員という政治や行政の方ばかりでなく、NPOや市民団体、学校、企業といった民間の方まで、誰でも応募できるコンテストとなっています。具体的な受賞例をいくつか挙げますと、去年グランプリを受賞されたのは、インクルーシブ公園を提唱・実現された龍円あいり議員(東京都議)。1期目の一議員がグランプリを受賞されたのはかなりのインパクトでした。去年は、震災の語り部間のネットワーク拡大に取り組んだ「南三陸ホテル観洋」が、一企業として優秀賞を受賞。今年優秀賞を受賞された中には、多胎児向けの支援をされている「多胎育児のサポートを考える会」という、NPOではない一般の任意団体も入りました。営利か非営利か、団体か個人かを問わず、その取り組みが地域貢献をしっかり考えて設計され、成果を上げていれば、コンテストの対象となります。毎年7~8月の2か月間応募を受け付け、9月末ごろにノミネート(今回からエリア選抜)を発表し、11月にグランプリなど各賞を発表しています。
マニフェスト大賞はどんなことを目的に実施しているのですか?
地方議会や地方議員って、報道されるのは不祥事ばかりなんですよね。良い活動をしていても、全然報道されないんですよ。なぜ報道されないかというと、それがあまりにもローカル過ぎる話題だからです。報道機関はなるべく広いエリアのニュースを報道するでしょうから、仕方ないところもあるんですけどね。良い取り組みを広く伝えるという意味では、議員や議会の広報が足りない部分もあるのかもしれませんが、そもそも外部から評価を受ける仕組みがないんです。そこを改善していきたいというのがまず1つ目の目的です。
このコンテストの発端としては、首長や議員を対象に開催したのが始まりなんですよね。首長や議員の取り組みを表彰することによって、全国にそれが報道されます。それだけでなく、色々なセミナーに講師として呼ばれます。地道で素晴らしい取り組みが、全国で真似されていくわけです。そうすると、日本全国が良くなっていくんじゃないでしょうか。地域のための活動をしている人たちにちゃんとスポットライトを当てて、地方から日本を良くしていく、好循環につなげていこうという試みなんです。これが2つ目の目的ですね。そういう意味で、良い取り組みを行っているのは、首長や議員だけではないことから、市民団体や企業などにも、コンテストの対象が広がっていったという経緯があります。
白井さんはどういう経緯で、実行委員長を務めることになったのですか?
コンテストの主催は「マニフェスト大賞実行委員会」で、その母体は「ローカル・マニフェスト推進連盟」という、超党派の地方議員の集まり(現在は地方議員以外も加入可能)です。ローカル・マニフェスト推進連盟では、政策や議会に関するセミナーやイベントを通年で開催しているんですが、1年で一番大きなイベントが、このマニフェスト大賞です。僕自身、このマニフェスト大賞に関しては、グランプリはおろか最優秀賞も獲っていなくて、優秀賞を2013年と2015年に受賞しています。そこからローカル・マニフェスト推進連盟が主催していたイベントに誘われて、実行委員として関わり始めたんです。去年、実行委員会の事務局長という役割を担い、コンテストの年間の流れや課題が分かってきました。コンテストを一般化するにはどうするか、もっと盛り上げるにはどうするかなど、色々考えていく流れの中で、今年実行委員長を務めることになりました。